日本には、野山はもちろん、住宅地などでも、あちこちにたくさんの緑が見られるね。でも、地球全体を見ると、森林が失われていることが問題になっている。木や森林の役割について調べてみよう。
木と草は、どうちがう
植物は、木、草、竹、こけ類などに分けられる。中でも身近なのは、木と草だけど、木と草は、どうちがうか、知っているかな。
まず、生きる年数。草は、ほとんどが1~2年でかれてしまうけれど、木は数十年、中には数千年も生きるものもある。また、生長のしかたにもちがいがある。草は、生長するスピードが速いけれど、種をまいてから1~2年でかれるので、根やくきは生長しても木のように高く大きくならない。一方、木は、草より生長するスピードがおそく、少しずつしか生長しないけれど、草よりも長生きなので太く、高く生長する。木の切り株を見ると、年輪という、輪のもようが見える。これは、1年のうちで、よく生長する時期とあまり生長しない時期があるためにできるもようだ。年輪の数で、木の年齢がわかるよ。
さまざまな樹木が見られる日本
日本は、国土のおよそ3分の2が森林の、緑豊かな国だ。世界には、20万種以上の木があるけど、日本ではおよそ700種類の木が見られる。
木は、葉の形によって、広葉樹と針葉樹に分けることができる。広葉樹は、平たく、はばが広い葉をつける仲間、針葉樹は、針のような細い葉をつける仲間だ。また、木は、秋になると葉をすべて落とし、春に新しい葉をつける落葉樹と、新しい葉が出ると古い葉を落とし、1年中緑色の葉をつけている常緑樹に分けることもできる。
日本では、落葉する広葉樹ではブナやミズナラなど、落葉しない広葉樹ではタブノキ、スダジイなどが見られる。また、落葉する針葉樹はカラマツなど、落葉しない針葉樹ではスギやヒノキ、エゾマツ、カラマツなどが見られる。
日本は南北に長く、気候のちがいによって、森林をつくっている木の種類も地域によってちがう。北海道東部では、寒い地方や山地に多いエゾマツなどの常緑針葉樹林が、北海道西部から甲信越地方の山地にかけては、コナラ、クヌギなどの落葉広葉樹林が見られる。甲信越地方より西の中部地方から九州地方の低い山地にかけては、常緑広葉樹のうち、厚く光沢がある葉を持つシイやカシなどの木の、照葉樹林という森林が広がっている。さらに、鹿児島県や沖縄県では、メヒルギやヤエヤマヒルギなどの海水でも生きていける木の集まり、マングローブと呼ばれる林が見られる。
生き物の活動を支える森林
木や森林には、さまざまな役割がある。
まず、多くの動物のすみかとしての役割。森林は、サルやリスなどのほ乳類をはじめ、ヘビ、トカゲなどのは虫類、カエルなどの両生類、鳥類、こん虫類など、たくさんの生き物がくらす大切な場所だ。南アメリカ大陸のアマゾン川流域や、東南アジアなどに広がる熱帯雨林には、地球上の生物の半分以上がくらしていると考えられているよ。
緑色の葉をもつ植物は、空気中の二酸化炭素(CO2)を取り入れ、太陽の光のエネルギーを利用して栄養分をつくるはたらきをしている。このとき、植物の葉からは、酸素が出ている。酸素は、人間などの動物が生きていくうえで欠かせない気体だ。動物が呼吸をすると、CO2が出るけれど、植物は、CO2を吸収して、空気中のCO2の割合を保ってくれているんだ。
また、森林には、こう水や土砂くずれを防ぐはたらきもある。台風や大雨のために、こう水や土砂くずれが起こることがあるが、木がたくさん生えた森林があると、雨水を木が根元でたくわえて、こう水を防ぐ。また、地中で根がしっかりとはっていると、地面が安定するので土砂くずれも起こりにくい。
そして、木は、木材として、家を建てたり、家具をつくったりするときにも使われる。木材の性質は、木の種類によってちがう。キリは、軽くて燃えにくく、湿気を通しにくいので、たんすなどの家具の材料として使われる。ヒノキは、曲がったり折れたりしにくく、水にも強いので、家などの建築材として使われる。奈良県にある法隆寺は、今から1300~1400年前に建てられた世界で最も古い木造建築だが、ヒノキを使って建てられているよ。
人よりもずっと長生きの木
世界には、びっくりするほど長生きの木がある。現在、世界で最も長生きの木と考えられているのは、スウェーデン西部で発見されたヨーロッパトウヒというマツの仲間で、8000年も生きているといわれる。
日本の鹿児島県屋久島には、樹齢2000~7600年以上と考えられている縄文スギがある。木の高さは25.3m、地上から1.2mの高さの幹の太さは16.4mで、スギの中では、世界で最も古いといわれている。屋久島には、ほかにも、樹齢1000年をこえるスギが見られるよ。
広がる森林保護活動
人間にとっても、多くの生き物にとっても大切な森林だが、今、世界各地で、森林が失われている。
森林を切り開いて畑や牧場にしたり、木材として利用するために木を切りたおしたりするために、毎年約12.6万平方キロメートル(日本の国土の3分の1)の森林が失われているといわれる。森林がなくなると、そこでくらしていた生き物が生きていけなくなってしまう。自然保護活動を行う国際自然保護連合(IUCN)の調べによると、森林はかいが主な原因で、チンパンジーやオランウータンなどのサルの仲間634種のうち、300種に絶滅のおそれがあることがわかっている。
また、CO2を吸収してくれる森林が減ると、空気中のCO2が増え、地球温暖化につながってしまう心配もある。
そこで、木を植えて、森林を増やす活動も行われるようになっている。日本の企業や団体も、国内や海外で植樹を行っている。最近は、植樹のための募金活動が行われているほか、植樹のための寄付金がふくまれている商品も出てきている。
木が生長するまでには、長い年月がかかり、一度失われた森林をもと通りにすることはできない。緑豊かな地球を守るために、森林の大切さと、森林を守るためにできることを考えてみよう。