毎年2月ごろになると、そろそろスギ花粉が飛び始める季節がやってきます。みんなの中には、花粉症で鼻がムズムズしたり、くしゃみが止まらなくなったり、目がかゆくなったりする人もいるかもしれませんね。花粉症に悩んでいる人は、毎日テレビやインターネットなどの天気予報で花粉が飛ぶ量の予想をチェックしているのではないでしょうか。でも、よく考えてみると、天気予報として花粉の飛ぶ量の予想が発表されているのは不思議だと思いませんか?
晴れて暖かくて風があったら花粉に注意
花粉を飛ばす代表的なものはスギです。スギは植物なので、天気の影響を大いに受けています。だから、天気を調べれば花粉の飛ぶ量がわかるのです。
花粉が飛ぶ量の予報には大きく2種類あります。一つ目は、花粉症シーズンに先立って、気象会社から発表される「今シーズンに飛ぶ花粉の量が多いかどうか」という長期予報です。長期予報は、前の年の10月ごろから発表されていきます。そしてもうひとつは、実際に花粉が飛び始めた後に、毎日発表される「今日は花粉がよく飛ぶかどうか」という短期予報です。
一つ目の長期予報は、花粉を飛ばすスギの雄花がどれくらい作られそうかを予想します。まず、スギの花は年によってとても多く花をつける「当たり年」と、花が少ない「ハズレ年」があり、当たり年とハズレ年はほぼ交互にやってきます。ですから今年のスギの花は当たり年かどうかだけでも花粉の多さが予想できるものです。それに加えて、花粉の雄花がしっかり成長しているかどうかもポイントです。スギの雄花は、前の年の夏に作られます。前の年の夏に晴れの日が多いと、それだけ光合成が盛んになって、たくさんの花が作られるようになります。当たり年で、なおかつ前の年の夏に晴れが多いと、その年は花粉がたくさん飛びそうだとわかるのです。
そして、いよいよ花粉が飛び始めると、天気予報ではその日の花粉の飛ぶ量の予想を発表します。花粉がよく飛ぶ日には特徴があって、具体的には次のような日です。
・よく晴れていて湿度が低く気温が高い日
・風の強い日
・雨の日の翌日
スギは風によって花粉を遠くに飛ばし、その花粉は遠くの雌花のめしべにくっついて新しい子孫を残します。雨が降っていては花粉は雨で地面に落ちてしまうので、花粉を飛ばすだけ無駄です。ですから、晴れた日の風の強い日が花粉を遠くへ飛ばすチャンスなのです。さらに、雨の日の翌日に晴れると、雨の日に飛ばせなかった分もあわせた量を飛ばすので、花粉の飛ぶ量が増えるのです。
とはいえ、たとえ花粉がたくさん飛んでいたとしても、場所によって多くの花粉が空気中を漂っているところと、そうでないところがあります。花粉は風に乗って運ばれるので、風上よりは風下の方が花粉の量が増えますし、何かにさえぎられたら花粉の届く量は少なくなります。ですから、花粉の予報には風向きの予報も欠かせません。このように、晴れか雨かや風向・風速、気温など、天気のさまざまな要素が絡み合って花粉が空気中に漂う量が決まるのです。
花粉を飛ばさないスギを開発
もはや国民病となった花粉症。その原因となる花粉を飛ばしているスギをすぐに伐採して、なくすことはできません。スギは木材として使うために山に植えられているからです。そこで、近年では花粉が少ないスギの品種が開発されています。具体的には雄花をほとんどつけないスギや、雄花から全く花粉を出さないスギなどです。そしてこれらの花粉の少ない品種に植え替える活動も進められています。ただ、今あるスギの木を切った後でこれらの品種に植え替えていくため、まだしばらくは花粉症と戦う必要がありそうです。