お風呂に入ると指がしわしわになるのは、なぜ?
こたえ:「ぬれた
プールで遊んだりお風呂でのんびりしたりして長い時間、水にふれていると、手や足の指先が白くしわしわになりますね。腕や足、おなかは何の変化もないのに、なぜ、指先だけがしわしわになるのでしょうか。
この現象は、皮ふの表面にある「角質層」(角層)に含まれるケラチンというたんぱく質が、水分を吸収しやすいために起きるといわれています。角質層がその下の層にしっかり付いている部分は溝になり、そうでない部分は水分を吸収してふくらむ結果、しわしわになります。指先だけがしわしわになる理由については、いくつかの説があります。
1つ目の説は、手のひらや足の裏の角質層がほかの部分より厚く、水分をたくさん吸収するからというもの。2つ目は、指先の皮ふの外側部分には血管や神経が通っていないため、水を吸い込みやすく、ふやけて伸びてしまう、というものです。けれども不思議なことに、けがなどで指の神経が切れてしまった人は指先がしわしわにならないそうです。
そのため近年の研究では、しわしわになるのは神経の働きではないかと考えられています。これまでに、お湯につかると自律神経の働きで指先の血管がちぢまり、表面と体積に差ができてしわしわになる、という3つ目の説などが生まれています1)。
そんな中、2013年に新しい説が発表されて注目を集めました。その説とは、指先だけがしわしわになるのは「水面下の物体をしっかりとつかみ取りやすくするため」というもの2)。イギリスのニューカッスル大学の研究チームが実験からみちびき出しました。
実験では、複数の人に指をぬるま湯にひたして指先をしわしわにしてもらった後、ぬれた状態で容器に入っているガラス玉と魚つり用のおもりを、親指と人さし指だけを使って別の容器に移しかえてもらいました。指先がしわしわになっていない人のグループにも同じことをしてもらいます。その結果、指先がしわしわのグループは、そうでないグループに比べてはるかに速く作業できたというのです。
この仕組みは、自動車のタイヤに似ています。ぬれた路面で自動車がすべらずに走れるのは、溝が路面の水をかき出し、しっかりと路面をつかむから3)。指先でも、水をしわの間から逃がすことで、物をしっかりとつかめます。
研究チームは、指先がしわしわになるのは進化の過程で人間が獲得した利点だと言っています。確かに、しめった草木や川から食料を取るのに役立ったかもしれませんし、はき物のない時代にはしめった場所で走るときもすべりにくくなったでしょう。現代のわたしたちも、食器を洗うときにはすべりにくい方が安心です。
ただ、しわしわの指でかわいた物体をつかむ実験では、指先がしわしわでもかわいていても差がなかったことから、こんどは「なぜ、人間の指先はいつもしわしわではないのか?」という疑問も出てきました。これについて研究者は、指先がしわしわだと感度がにぶるなどの影響がある、と話しています。
参考 資料
1)「なぜ風呂で指がシワシワに?」『朝日新聞』,2013年3月23日:https://www.asahi.com/shimbun/nie/tamate/kiji/20130325.html
2)『水中で指がシワシワになる現象は「進化上の利点」、英研究』『AFPBB News』,2013年1月9日:
https://www.afpbb.com/articles/-/2919831?cx_part=search
3)ブリヂストン.「タイヤの溝とウェットグリップ」:
監修者 :大山 光晴
1957