こたえ:1本の電線にしかさわっていないからです。
電線に鳥たちがとずらっと並んでいるのは、多くの人になじみのある光景。スズメの仲間などがお行儀よく並んでいるのはかわいいものです。けれども同時に、鳥たちが感電しないのか心配にもなりますね。
ひとくちに「電線」といっても、家庭用の100Vの電気が流れる電線から、発電所から変電所へ6000Vの電気を運ぶものまで、いくつか種類があり、たとえ100Vの電気でも体の中を流れればとても危険です。それなのに、鳥たちは高い電圧の電気が流れるにも平気でとまっています。これは、なぜでしょうか。
まず、こうした電線にとまっている鳥の様子を思いうかべてみましょう。鳥の脚は、どこにさわっていますか? 脚は2本とも、同じ電線をつかんでいるのではないでしょうか。ここに、鳥が感電しない理由があります。
次に、電池を使って豆電球を光らせるときのことを思い出してみてください。乾電池のプラス極から出た導線が豆電球につながり、さらに電池のマイナス極までつながって通り道(回路)ができていなければ、豆電球は点灯しません。回路がつながったとき、乾電池の電圧が高い方から低い方へ電気が流れて、回路のと中にある豆電球が点灯します。
鳥が両脚を1本の電線の上に置いていた場合、右脚と左脚の場所ではほとんど電圧が変わりません。ですから、電気は鳥の脚に流れません。
また、電気には、少しでも抵抗の少ないところを流れようとする性質があります。鳥の体と電線を比べると、鳥の体は抵抗が大きく、電線の中の方がずっと流れやすいので、電気は鳥の体の中には入ることなく通りすぎてしまいます。そのため、鳥は感電せずにすむというわけです。
ところが、鳥も感電してしまう場合があります。たとえば、羽を広げてうっかり隣の電線にさわってしまったときや、右脚と左脚でちがう電線にさわったとき。一方の脚は電線に、もう一方の脚は地面や地面とつながった針金などにさわったときも同じです。こうした場合は、2本の電線の間に回路ができますから、電気は鳥の体を通って流れ、鳥は感電して死んでしまうことになります。
記事公開:2022年2月
監修者:大山光晴
1957年東京都生まれ。東京工業大学大学院修士課程修了。高等学校の物理教諭、千葉県教育委員会指導主事、千葉県立長生高等学校校長等を経て、現在、秀明大学学校教師学部教授として「理数探究」や「総合的な学習の時間」の指導方法について講義・演習を担当している。科学実験教室やテレビの実験番組等への出演も多数。千葉市科学館プロジェクト・アドバイザー、日本物理教育学会常務理事、日本科学教育学会及び日本理科教育学会会員、月刊『理科の教育』編集委員等も務める。