こたえ:高い場所ほど、その上にある空気の量が少ないからです。
「空気がうすい」とは、大気圧が下がって空気の密度が低くなったことを指します。つまり、同じ体積の中にある空気の量を、標高の高い所と低い所で比べると、標高の高い場所の方が気圧が低く、空気の量が少ないのです。空気にふくまれる酸素の割合は一定なので、空気の密度が低ければ酸素の量も少なく、その場所にいる人は息苦しく感じるというわけです。
山登りのときは標高の低いふもとから頂上へゆっくり登っていくので、わたしたちにかかる大気圧もじょじょに下がっていきます。そのため、大気圧の変化を感じるのはむずかしいかもしれません。そこで、大気圧が低いことが一目で分かる例をしょうかいしましょう。
「山登りに持って行ったおかしを頂上で取り出したら、袋がぱんぱんにふくらんでいた」という体験をしたり、映像や写真で見たりしたことがあるのではないでしょうか。あのふくらんだ袋が、標高の高い所は低い所より大気圧が低いという証拠。袋をふくらませているのは、空気です。袋の口は閉じられていますから、袋の中の空気の量は、ふもとでも頂上でも変わりません。それなのに袋がふくらむのは、袋を外から押す力、つまり大気圧が小さくなったからです。
大気圧は緯度によって少しずつ変わりますが、標高0mでは約1013hPa(1気圧)だとされています。それが、10m高くなるごとに約1hPaずつ下がっていきます。富士山の高さは3776mで、頂上の大気圧は約630hPa。エベレストの高さは8850mで、頂上の大気圧は約300hPaまで下がります。
では、標高の高い所ではなぜ、大気圧が低くなるのでしょうか。それは、上に積み重なっている空気の量が少ないからです。大気圧は、その上にのっている空気の重さを受けてはたらく力ですから、空気の量が少なければ、圧力も低くなります。
このことは、水圧におきかえて考えるとイメージしやすいでしょう。水中の物に水がおよぼす力。10mもぐるごとに水圧が約 1気圧ずつ上がっていき、水深が1万m以上のマリアナ海溝の底では水面の1000倍に達します。深い所ほど水圧が高いのは、その上にある水の量が多いためです。
記事公開:2021年12月
監修者:大山光晴
1957年東京都生まれ。東京工業大学大学院修士課程修了。高等学校の物理教諭、千葉県教育委員会指導主事、千葉県立長生高等学校校長等を経て、現在、秀明大学学校教師学部教授として「理数探究」や「総合的な学習の時間」の指導方法について講義・演習を担当している。科学実験教室やテレビの実験番組等への出演も多数。千葉市科学館プロジェクト・アドバイザー、日本物理教育学会常務理事、日本科学教育学会及び日本理科教育学会会員、月刊『理科の教育』編集委員等も務める。