こたえ:大気中の水蒸気が、上空で小さな水てきや氷のつぶになって雲ができます。
空にはさまざまな大きさ・形・色の雲がうかんでいて、1つとして同じものはありません。けれども、その正体はどれも同じ。どれも、地球上の水が姿を変えたものなのです。水が気体(水蒸気)・液体(水)・固体(氷)の3つの状態に変化することで、雲はつくられます1)。
雲がどのようにできるか、地球の表面(地表面)から上空まで、水の動きを追いかけてみましょう2)。
まず、太陽の光(太陽光)で地表面が温められると、海や川では水が蒸発して水蒸気になります。このとき、太陽光によって地表面のすぐ上の空気も温められています。空気の温度が上がると、1m3当たりにふくむことができる水蒸気の量(飽和水蒸気量)が増えるため、地表面近くには水蒸気の量が多い空気のかたまりがつくられることになります。
空気は、温度が上がると軽くなる性質があります。そのため、地表面の近くで温められた空気のかたまりは、軽くなって上へ向かいます。この空気の流れを「上昇気流」とよびます。上空は気圧が低いため、上昇気流に乗ってのぼっていった空気は膨張します。そのときに空気はエネルギーを使い、温度が下がります。高いところほど空気の温度は低くなります。
空気の温度が下がると、こんどは飽和水蒸気量が減ります。すると、飽和水蒸気量をこえた分の水蒸気は空気中のちり(エアロゾル)にくっついて凝結し、半径が0.01mmほどの小さな水てきができます。この水てきを「雲つぶ」とよびます。
雲つぶがさらに上昇し、気温が-20℃くらいまで下がると、雲つぶは凝固(凍結)して氷のつぶ「氷晶」へ変わります。雲の材料のもう1つが、この氷晶。雲は、雲つぶと氷晶からできているのです。
ただし、氷晶ができるほど温度が下がらず、雲つぶだけで雲をつくることもあります。雲つぶだけでできた雲を「水雲」、雲つぶと氷晶からできた雲を「混相雲」、氷晶だけでできた雲を「氷雲」と分類します。また、水雲を「暖かい雲」、混相雲と氷雲を「冷たい雲」とよんで区別する場合もあります。
記事公開:2022年3月
参考資料
1)荒木健太郎/監修『雲と雨の大研究 空のしくみとふしぎをさぐろう!』.2021年.PHP研究所
2)武田康男/監修『学研の図鑑 LIVE eco 異常気象 天気のしくみ』.2018年.学研プラス
監修者:大山光晴
1957年東京都生まれ。東京工業大学大学院修士課程修了。高等学校の物理教諭、千葉県教育委員会指導主事、千葉県立長生高等学校校長等を経て、現在、秀明大学学校教師学部教授として「理数探究」や「総合的な学習の時間」の指導方法について講義・演習を担当している。科学実験教室やテレビの実験番組等への出演も多数。千葉市科学館プロジェクト・アドバイザー、日本物理教育学会常務理事、日本科学教育学会及び日本理科教育学会会員、月刊『理科の教育』編集委員等も務める。