氷の中で白く見えるものの正体は?
こたえ:
とても寒い冬の朝、池に氷がはっているのを見たことがありますか? かき氷屋さんで削られる前の、大きな氷はどうでしょう? どちらの氷もガラスのように透明ですね。ところが、家で製氷皿に水道水を入れて冷凍庫で氷をつくると、真ん中の辺りが白くくもった氷ができたりしますよね。透明な氷とくもった部分のある氷は、いったい何がちがうのでしょうか。
白く見えるものの正体をつきとめるために、氷ができる過程を追ってみましょう。水の入った製氷皿を冷凍庫に入れると、周り(上下と側面)からこおり始めます。水の中にはほんの少しの空気が溶けていますが、もともと空気は水に溶けにくい性質があり、温度が下がるとさらに溶けにくくなります。すると、先にこおった部分に溶けていた空気のうち、水に溶けこめる限度を超えた分は、まだこおっていない水へと移っていきます。その結果、水がこおるにつれて、中心部には通常より多くの空気が溶けた水が残ることになります。
その後、中心部がこおるときに、溶けこめる限度を超えた空気が気泡となって現れます。白く見えるものの正体は、この気泡※1。気泡に光が当たると、乱反射して白く見えるのです。
池の氷やかき氷用の氷が透明なのは、まず、家の冷凍庫に比べてゆっくりこおるためです※2。冷凍庫よりも高い温度の中でゆっくりとこおれば、はじめにこおった周りの部分から中心の方に移ってきた空気が外へ逃げやすく、中心部に気泡ができにくくなります。
加えて池の場合は、氷の下に水が残っている、氷の上の面が空気に接しているなどの理由で、こおった部分から追い出された空気が氷の外へ出ていけるので、氷が透明になります。製氷会社では、こおらせる途中で空気を多くふくんだ水を捨てて新しい水を入れたり、一定の方向でこおらせて空気の逃げ道をつくったりして、気泡の発生をおさえています。
では、家では透明な氷をつくれないのでしょうか? 確かに完全に透明な氷をつくるのは難しいのですが、いくつか工夫すれば白い部分をかなり減らせます。1つ目の工夫は、あらかじめ水を沸騰させて、空気を追い出しておくこと※3。2つ目の工夫は、タオルなどで製氷皿全体を包んで、こおる速度をゆっくりにすることです。
ふくまれる空気の量が少なく、透明度の高い氷には、空気の量が多い氷に比べて熱の伝わりやすさ(熱伝導率)が小さく、溶けにくいという特徴があります。冷たい飲み物を長く楽しみたいときは、透明度の高い氷をつくってみてはどうでしょう。
※1 水にふくまれるミネラルなどの不純物も、白く見える原因の1つだといわれています。
※2 冷凍庫内の温度は−20℃前後ですが、かき氷用の氷などをつくる製氷会社は、−10℃ほどの環境で氷をつくります1)。
※3 水を沸騰させると消毒のための塩素の量が減るため、冷蔵庫(冷凍庫)の機種によっては沸騰させた水の使用を勧めていない場合もあります。冷蔵庫の注意書き確認しましょう。
記事公開:2022年8月
参考資料
1)中央冷凍産業「純氷の作り方2.製氷」:https://chu-rei.co.jp/category-koriyajunpyou/pure-ice-process2/
監修者:大山光晴
1957年東京都生まれ。東京工業大学大学院修士課程修了。高等学校の物理教諭、千葉県教育委員会指導主事、千葉県立長生高等学校校長等を経て、現在、秀明大学学校教師学部教授として「理数探究」や「総合的な学習の時間」の指導方法について講義・演習を担当している。科学実験教室やテレビの実験番組等への出演も多数。千葉市科学館プロジェクト・アドバイザー、日本物理教育学会常務理事、日本科学教育学会及び日本理科教育学会会員、月刊『理科の教育』編集委員等も務める。