冷たい北風が身に染みる季節。このころになると「木枯らし」という言葉を耳にすることもあると思いますが、木枯らしはこの時季ならではの冷たい北寄りの風のことを指します。
突然ですが、クイズです。
次の4つの図のうち、木枯らしが吹くのはどの天気図でしょう。
答えはC。
Cの天気図は西に高気圧が、東に低気圧がある「西高東低の冬型の気圧配置」と呼ばれ、晩秋から冬にかけてよくみられます。同じ気圧の地点を結んだ「等圧線」が縦じま模様になっているのが特徴です。
ちなみに、Aは太平洋高気圧が日本列島を覆う真夏の天気図、Bは移動性高気圧と温帯低気圧が西から東へと移動していく春や秋の天気図、そしてDは梅雨前線が日本列島付近に停滞する梅雨の天気図です。
木枯らしは、Cの「西高東低の気圧配置」のときに吹くのですが、どういった仕組みで吹くのでしょうか。
秋が深まり、日が短くなっていくと、ユーラシア大陸のシベリア付近がとても寒くなります。すると、冷たい地面の上にある空気も冷やされます。冷たい空気は密度が高く重いため、高気圧ができます。この高気圧が「シベリア高気圧」です。
その一方で、海は陸地とは違って熱しにくく冷めにくい性質があります。秋が深まっていっても陸地ほどは冷えません。すると、海の上の空気は陸地よりも温かくなり、こちらは低気圧ができます。
こうして、西の陸地に高気圧ができ、東の海に低気圧ができる「西高東低」の気圧配置となるのです。
高気圧からは、風が外に向かって吹き出しています。その風が向かう先は低気圧です。つまり、西高東低の気圧配置のときは西から東に向かって等圧線を横切るような形で風が吹くことになります。この、シベリア高気圧から吹き出す冷たく乾燥した風こそが、冬の季節風であり、「木枯らし」と呼ばれるものなのです。
なお、その年に初めて吹いた木枯らしのことを「木枯らし1号」と呼びます。木枯らし1号が吹くと、気象台から「本日、木枯らし1号が吹きました」と発表されます。ただし、発表されるのは東京地方と近畿地方だけで、それぞれの地方で発表される基準が違います。
東京地方の木枯らしの基準
期間 | 10月半ば~11月末の間 |
---|
気圧配置 | 西高東低の冬型の気圧配置で季節風が吹く |
---|
風向 | 東京の風向が西北西~北 |
---|
風速 | 東京の最大風速がおおむね8m/s以上 |
---|
近畿地方の木枯らしの基準
期間 | 霜降(10月23日ごろ)~冬至(12月22日ごろ) |
---|
気圧配置 | 西高東低の冬型の気圧配置 |
---|
風向 | 北寄りの風 |
---|
風速 | 最大風速が8m/s以上 |
---|
木枯らしは、天気図の等圧線の間隔が狭いほど強い風が吹き、身を切るような寒さとなります。もし、朝の天気予報で西高東低の冬型の気圧配置が登場したら、その日は風から体をしっかりと守ってくれる上着を着ていくことをおすすめします。