みなさんは雪が降ったらどんな雪遊びをしますか? 雪だるまづくりに雪合戦など、やってみたいことは盛りだくさん。なかには雪でできた「かまくら」と呼ばれる部屋づくりに挑戦する人もいるかもしれませんね。しかし、雪でできた部屋の中にいて、凍えることはないのか、不思議ですよね。実は、かまくらの中は意外と暖かいのです。
積もった雪には断熱効果がある
かまくらとは、もともとは秋田県で小正月(1月15日前後)に水神様を祭る行事のこと。かまくらの中の正面にまつられた水神様に家内安全・商売繁盛・五穀豊穣を祈り、中で甘酒を飲んだりお餅を食べたりしながらゆったりと過ごします。特に秋田県横手市のものが有名で、夜にずらりと並んだかまくらから明かりが漏れる様子は、とても幻想的です。
では、雪の部屋でも暖かい理由をみてみましょう。
まず、雪の壁は外の冷たい風を遮ります。かまくらは入り口を小さく作っており、しかもその入り口はなるべく風が入らない方向にするため、冷たい風が入りにくいのです。
そして、意外に思うかもしれませんが、雪には断熱効果があります。雪は積もるときに空気を間に挟みます。空気には熱を伝えにくい効果があるため、外の冷気が中に伝わりにくいのです。冬に重ね着をすると、服と体の間の空気が、外の冷気を体に伝えにくくするため、暖かいのと同じ仕組みです。
さらに、中でお餅などを焼くために火を焚けば、その空気は温かくなります。暖かい空気は軽いので上昇し、かまくらの天井にぶつかって下降していきます。下降した空気はさらに火で暖められて上昇し、暖かい空気がかまくらの中をぐるぐるとめぐります。そしてその暖かい空気は、雪の断熱効果で冷えにくいうえ、狭い出入り口のために外にも逃げにくいので、かまくらの中は暖かくなるのです。
しかしもうひとつ疑問に思うことが出てきます。雪の中で火をたいて、雪はとけないのでしょうか。
実をいうと、やっぱり少しずつ雪はとけています。ただ、中で1日中、火をたきつづけるわけではないですし、そもそもかまくらの外はとても寒いので、多少とけたとしても突然天井や壁が崩れ落ちるようなことにはならないだけなのでしょう。
雪の山をくりぬいたり、雪のレンガを積み上げたり
では、かまくらはどうやって作るのでしょう。横手市観光協会では、雪山をくりぬいて作る方法を指導しています。まず地面に直径3.5mの円を描き、その円の中に雪をしっかりと踏み固めながら積み上げていきます。そして高さ3mほどまで積みあがったら、今度は中をくりぬいていくのです。このような方法のほか、雪をレンガのような形に固めて、積み上げていく方法もあります。
これだけのかまくらを作るのに、雪の量はいったいどれだけ必要なのでしょうか。具体的に何kgあれば作れるのかという数字までははっきりとはわからないのですが、秋田県横手市の1月の積雪量の平年値は100cmなので、1mほど積雪していれば、直径3.5m×高さ3mのかまくらは作れることになるはずです。太平洋側の大都市では、交通機関が麻痺するような大雪といってもそこまで積もることはほとんどないので、雪でかまくらを作るのはなかなか難しいかもしれませんね。
なぜ、この雪の部屋を「かまくら」と呼ぶのかについては、さまざまな説があります。たとえば、▽「かまど」の形に似ているから▽神様のいる場所である「神座(かみくら)」が語源となっているから▽そして豊作を祈る正月行事で歌われる鳥追い歌に「鎌倉殿」という歌詞があるから…などです。東北地方の風物詩なのに、鎌倉幕府の「鎌倉」ともまったく無関係というわけではなさそうなのも興味深いものです。