夏から秋にかけて、台風が日本にやってきます。台風は、天気予報やニュースでみなさんも知っているとおり、台風1号、台風2号などと番号で呼ばれていますね。でもこれは日本国内だけでの呼び方。実はそれぞれの台風は国際的な報道などで呼ばれる、もうひとつの名前があることを知っていますか? 台風の名前はどんなもので、どのように名付けられているのかについて解説していきます。
「台風」は太平洋北西部の熱帯低気圧
まずは台風とはどんなものかということから説明します。
台風というのは、赤道付近で発生した熱帯低気圧と呼ばれる種類の低気圧のうち、太平洋北西部(おもに東南アジアや東アジア)にやってきて、中心付近の最大風速(10分間の平均)が約17m/s以上になったもののことを指します。「m/s」は1秒間に何m進むかという秒速を表しています。そして風速が大きくなるに従って「強い台風(33m/s以上44m/s未満)」「非常に強い台風(44m/s以上54 m/s未満)」「猛烈な台風(54m/s以上)」とランク付けされます。
ちなみに国際的には、中心付近の最大風速(1分間の平均)が約33m/s以上になったものがタイフーンと呼ばれますが、風速の基準が違うので「台風=タイフーン」とは限りません。またアメリカの気象機関の基準では、特に最大風速(1分間の平均)が約67m/s以上のものを「スーパー台風」と呼んでいます。
台風と同じような熱帯低気圧でも、世界のどこにあるかで「ハリケーン」や「サイクロン」というように呼び方が変わります。ハリケーンは大西洋北部・太平洋北東部・太平洋北中部(おもに北アメリカ大陸周辺)、サイクロンはインド洋や太平洋南部に来るもののうち、どちらも中心付近の最大風速(1分間の平均)が約33m/s以上のものを指す呼び方です。
台風の名前はアジア14か国がつくったリスト順に名付けられる
それでは台風それぞれの名前はどうやって決まるのでしょう。
台風○号という番号は、その年の最初に発生したものを1号とし、それから順に2号、3号と番号が振られていって、次の年になったらまた1号に戻ります。これは日本国内で、気象庁の発表や新聞・ニュースの報道などで使われています。
そして国際的な報道や学術論文などで使われる名前は現在、アジアを中心とした14か国で構成される台風委員会が、各国10個ずつ名前を出し合った計140個の名前をリストにして、発生した台風に順番に名付けています。140番目の名前が付けられたあとは、1番目に戻って、また繰り返して名付けられていきます。これはアジア名とも言われます。
台風のアジア名と意味の一覧(気象庁ホームページ)
1999年以前は、日本でもアメリカのハリケーンと同じ方式で、台風に英語圏の人名が付けられていました。これは、第二次世界大戦後の日本がアメリカの占領下にあったためです(1978年までは女性の名前、1979年以降は男女の名前)。例えば、かつて日本に大きな被害をもたらした「カスリーン台風(1947年)」や「キティ台風(1949年)」は、どちらも英語圏の女性の名前が付けられています。
ただやはり、台風はアジアに大きな影響をあたえる大気現象であることなどから、英語名ではなく、アジアにちなんだ名前を付けようと2000年に方式が変わりました。世界中の人々にアジア各国で決めた名前を一緒に使ってもらうことでアジア各国の文化を知ってもらえたり、アジアの人々にはなじみのある名前が付くことで特に防災面において台風への意識を高めるたりすることが期待されています。
日本は「星座」から名前を提案
台風のアジア名として、日本から出している名前のリストは表のとおりです。
これらの共通点は何だと思いますか?
答えは「星座の名前」です。星座の名前を台風の名前にした理由は、気象庁ホームページにこう書かれています。
・特定の個人・法人の名称や商標、地名、天気現象名でない「中立的な」名称であること
・「自然」の事物であって比較的利害関係が生じにくいこと
・大気現象である台風とイメージ上の関連がある天空にあり、かつ、人々に親しまれていること
・文字数が多過ぎないこと(アルファベット9文字以内)
・音節が多くなくて発音しやすいこと
・他の加盟国・地域の言語で感情を害するような意味を持たないこと
例えば、コンパスのように、すぐに日本が名付けたものだとは分からないような名前があるのも、このような事情を知れば納得がいくのではないでしょうか。
さて、これらのアジア名ですが、大きな災害をもたらした台風の名前は引退し、代わりの名前がリストに加わります。例えば、2019年に東日本で多くの犠牲者を出した台風19号の「ハギビス(フィリピンが命名、「すばやい」の意味)」も引退しました。確かに、今後「〇月〇日に台風○号(ハギビス)が発生しました」というニュースがあったら「あの大災害がまた起こるのか?」とドキッとしてしまいますからね。
これからは台風が発生したときは、ぜひアジア名も調べてみるなど、台風情報に関心を持って防災に取り組んでみてくださいね。