冬の風景といえば、真っ白な雪景色を思い浮かべる人も多いでしょう。その輝く様子は「銀世界」とも表現されます。しかし、冬は、雪のほかにもたくさんの美しい自然現象があります。中にはさまざまな気象条件が重ならないと見ることができない珍しいものも。ここでは、六角形の結晶の形を由来とする雪の別名「六花」にちなんで、まるで芸術のような美しい冬の自然現象を6種類紹介します。
霜柱
足元でザクザク、踏むのが楽しい
地面から氷の細い柱がたくさん生えてきたように見えるのが霜柱。見つけると、ついつい踏んづけてしまいたくなりますよね。その時の、ザクザクとした音や感触がたまりません。霜柱は、最低気温が氷点下(0度以下)になり、なおかつ雪が積もっていないときにできます。土の表面が凍ると毛管現象という現象によって、地中の水分が表面に向かって移動し、地表の凍った部分を押し上げながら凍っていきます。これが氷の柱となるのです。
霜柱ができるためには、最低気温が氷点下になるような気象条件が必要ですが、土の粒の大きさによってはできないこともあります。火山灰由来の細かい粒子でできた土だとできやすい傾向にあるようです。寒い地方でも霜柱ができにくかったり、暖かい地方でも冷え込んだ朝には霜柱ができたりするなど、霜柱のできる場所には地域性があるようなので、みなさんの住んでいる地域で霜柱ができるかどうか調べてみると楽しいかもしれませんね。
みんなで霜柱発見マップをつくろう!
みなさんの街では、霜柱が見られますか? 霜柱を見つけたら写真を撮って下のリンクボタンから送ってください。みんなからの写真を、撮影した地域に合わせて日本地図上に並べた「霜柱発見マップ」をつくれたらいいな。
霜柱を見つけたら写真を撮って送ってね
ダイヤモンドダスト
空気がキラキラ、目の前で水蒸気が氷に
ダイヤモンドダストは、太陽の光に照らされて、空気中の小さな氷の粒が、まるでダイヤモンドのようにキラキラと輝く現象です。この氷の粒は、空気中の水蒸気が冷やされて、水蒸気から直接氷の粒に変化したものです。これを昇華といいます。ダイヤモンドダストが発生する条件は、晴れて風がなく、気温が−10度以下で、湿度の高いときです。日本では北海道の内陸部で、1~2月に見ることができます。
樹氷
スキー場などに出現、モコモコモンスター?
木の周りに白い雪や霜がモコモコとついて、「スノーモンスター」や「雪の坊」などとも呼ばれるのが樹氷です。特に山形県の蔵王スキー場のものが有名ですが、ほかにも、東北地方の八甲田山、八幡平、森吉山、吾妻山などの山でも見ることができます。
樹氷は、氷点下になるような寒い日に霧が木の枝について凍ったり、空気中の水蒸気が直接凍って木の枝に霜がついたりしてできたあと、同じ場所に雪も付着することでモコモコとした真っ白な姿に成長していきます。特に東北地方は、霜のつきやすい針葉樹のアオモリトドマツが山に自生しており、そこにシベリア高気圧からの冷たい季節風が吹きつけることで樹氷ができやすくなります。さらに、木が埋まって見えなくなるほどの積雪量ではないため、樹氷がよく見られるのです。
アイスバブル
水中の「凍った泡」、まるで時間が止まったよう
池や湖の全体が凍ったとき、その凍った水中に空気の泡が閉じ込められてできるのがアイスバブル。泡の正体は火山性のガスや、湖の底に積もった枯葉などをバクテリアが分解するときに出るガスです。まず泡は、底から浮かび上がる途中で、凍った水面など氷の層にぶつかって、そこにたまります。しばらくすると泡の下側の水も凍ってしまうので、その場所に閉じ込められるという仕組みです。凍った池や湖の中で、クラゲのような泡が止まって見える様子は、まさに時間が止まったかのようです。
アイスバブルは池や湖全体が凍るほど寒く、なおかつその水が透き通っている場所でしか見ることができません。さらに、湖面に雪が積もってしまうと見られないため、楽しめる時期が非常に限られます。日本では、おもに北海道の道東地方で見られ、特に上士幌町にある糠平湖が有名です。また、もう少し南の場所でも標高の高い場所だと見られることがあります。
ジュエリーアイス
浜辺で輝くクリスタルのような氷の塊
北海道の豊頃町大津にある十勝川河口付近の砂浜では、「ジュエリーアイス」という透き通った氷の塊を見ることができます。これは十勝川が凍ってできた氷が、太平洋に流れ出て、海岸に打ち上げられたもの。流氷とは違って、波にもまれるうちに角がとれて丸みを帯びた形をしていて、色も透明なのが特徴です。太陽の光を受けて、朝、昼、夕と観察する時間によってさまざまな色合いに輝きます。1月中旬~2月下旬頃に見ることができます。
フロストフラワー
息を吹きかけても消える、はかない霜の花
水面全体が凍った湖や川に氷の花が咲いたかのような「フロストフラワー」という現象があります。凍った湖面に霜がつき、そのひとつの霜を中心として空気中の水蒸気が氷となって次々とついて、花のように大きくなるものです。見られる気象条件は、気温が−15度以下で、ほぼ無風、そして湖面に雪が積もっていない状態の早朝です。人が息を吹きかけるだけで消えてしまうほどで、風が強いとフロストフラワーは吹き飛ばされてしまいますし、日が昇ると太陽の熱で消えてしまうので、実にはかない霜の花です。
フロストフラワーは、北海道の屈斜路湖や天然記念物の「マリモ」でも知られる阿寒湖などでみられます。屈斜路湖や阿寒湖は火山活動でできたカルデラ湖で、まわりを囲む山によって湖面近くの冷気が逃げにくいという特徴があります。さらに湖の底から温泉が湧きだしており、ところどころで湖面が溶けて、そこから水蒸気が発生するので、フロストフラワーができやすいのです。
今回紹介した、特に霜柱以外の現象は、北海道や東北など、とても寒い場所でしか見られない現象です。なかには気象条件が限られる現象もあり、見ようと狙って行ってもなかなか見られません。それだけに、もし目にすることができたら、一生の思い出になることでしょう。