「地球防衛隊SDGs」第50話解説編「SDGs達成度、日本は19位!?」
ちょっとむずかしそうだけど、
さとかん先生が登場するまんが第50話はコチラ!
答えてくれるのは… 佐藤寛先生(さとかん先生)
1981年東京大学文学部卒業。1981年アジア経済研究所入所以来、イエメンの研究をはじめとした開発社会学者として40年間にわたり活躍中。
順位 に一喜一憂 しない!ランキングの見方
さとかん先生、さっそく聞きたいんですけど…。
SDGsの達成度ランキングで日本が19位って聞いて、ちょっとショックでした。意外と低くない?って。
この順位、さとかん先生はどう思いましたか?
答える前に、まずこれがどんな調査から生まれたランキングか説明するね。
このランキングは、国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」が、SDGsのそれぞれの目標に対して、どれくらい達成されているかを調べて、独自に評価したものなんだ。
17のゴールに対してそれぞれ設定されている「ターゲット」と呼ばれる指標について調べ、達成できているか、課題があるか、などと評価しているんだね。
1 | フィンランド |
---|---|
2 | デンマーク |
3 | スウェーデン |
4 | ノルウェー |
5 | オーストリア |
ーーーーー | ーーーーー |
19 |
(出典)SDSN「Sustainable Development Report 2022」を基に作成
ただ、こうしたランキングは調べている団体によっても結果が変わることがあるんだよ。
え?? そうなの?
たしかに一般的な調査でも、調査する項目を変えたり、どの状態を「達成している」と見なすかの基準を変えたりしたら、ランキングの結果が変わることはあるよね。
さすがスモール! 世の中にはいろんなランキングがあるけれど、ひょっとしたら、ある国が自分の国の評価を上位に押し上げるために、自分たちに有利な調査項目を採用してつくったランキングも、あるかもしれないよね。
え〜〜〜〜! それってズルじゃん!
だから、こうした順位にあまり踊らされすぎることなく、どんな団体がどんなふうに調査をしているか、順位だけでなくどのような傾向が読み取れるか、注意深く結果を読み解くのがポイントだよ。
そっかあ。順位を見るだけじゃなくて、調査結果の内容を読み解く必要があるんですね!
さとかん先生は、この調査結果をどのように読み解いているんですか?
SDGsの1~17の目標に対して、日本がどれだけ達成できているかをそれぞれ評価しているんだけど、中でも最低評価「深刻な課題がある」となったのが、この6つの項目。
これらの評価を下げている指標としては、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」では国会議員の女性比率が低いことや、男女で賃金の格差があること。目標12「つくる責任 つかう責任」では電子機器の廃棄量や、プラスチックゴミの輸出量が多いことなどが挙げられている。
じゃあ、そこで挙げられた指標を重点的に、対策していけばいいってことですよね?
そう。だけど、日本ではなかなかこれらの課題は重く受け止められていないんじゃないかな。
たとえば、議員や会社の管理職などの女性の割合をあらかじめ一定数に定めて、積極的に起用するクオータ制などを採用している国もあるけれど、日本ではなかなか議論が進んでいないんだ。
そうだね。このように、いま日本が他の国と比べてなかなか達成できていない項目に対して、なんとかしなきゃ!という動きがあまり起きていないのは、問題だと思っている。
一方で、日本は学校でSDGsについて学ぶ機会が多く、さまざまな人がSDGsという言葉を知っているよね。「世界でもっとも小学生がSDGsを知っている国」と言ってもいいかもしれない。こうしたところは日本の強みだと思うよ。
はい、空たちもSDGsについてこれからも学んでいきます!
……さとかん先生、もう1つ質問です。SDGsは2030年までに目標を達成することを目指していますよね?
でも、自然災害がたびたび起きたり、新型コロナウイルス感染症が広がったり、戦争が起きたりしていて、目標達成は遠のいているのかな…なんて思ってしまうんです。
そうだね。2030年までにすべての目標を完ぺきに達成するのは、現実的に難しいかもしれないね。
が、がーーん…。やっぱりそうなんだ…。
でもね、2030年までにできる限りのことを頑張ろう!って目標を定めて、みんなで取り組むというプロセスが大切だと、ぼくは思うよ。
まず「SDGs」という言葉で、みんなが同じ課題を共有できたということが、すばらしいこと。達成できなかったら負け、ということじゃなくて、どれだけ前に進めたかが大事なんじゃないかな。
なるほど…!ちょっと元気が出てきました。
さとかん先生、地球防衛隊SDGsの活動は無意味なんかじゃないですよね?
それはね…
(次回に続く!)
構成・文/塚田智恵美
イラスト/奈良裕己