「地球防衛隊SDGs」第60話解説編②「SDGsのジレンマ、どう考える?」
ちょっとむずかしそうだけど、
「本当のSDGsのためにすべきこと」をテーマにしたまんが第60話はコチラ!
ある視点 では「SDGsのため」。別 の視点 では「SDGsじゃない」?
ねえ、スモール。前回のパーム油の話で、ある面では「SDGsの達成につながっている」ように見えるのに、別の面から見ると「SDGsに反している」と言われることがあるんだって衝撃を受けたよ。そんなことがほかでも起きるのかな?
実は、これはよく起こる問題なんだ。
SDGsには17のゴールが設定されていたよね。
あるゴールを達成するための取り組みが、別のゴールの視点では「SDGsにつながっていない」となることがあるんだよ。
たとえば、世界の途上国の中には、生理用品が行き届いていないがために、生理中の女性が働けなかったり、生理が原因で学校に行けなかったりする問題があるんだ。女性の生き方や働き方が制限されてしまう、これは大きなジェンダー問題でもあるよね。
そこで空たちが「途上国に生理用品を届ける取り組みをしよう!」と考えたとしたら……。
ゴール5の「ジェンダー平等を実現しよう」につながる、すごく良い取り組みだと思う!
ちょっと待って。そう判断する前に、少し考えてみてほしいんだ。
生理中に使用する使い捨てナプキンの大半は、プラスチックを使用しているんだよ。
リサイクルする仕組みや技術がないところに、プラスチックでできたものをたくさん送ったら……。
その分プラスチックごみが増える……。そのごみの一部がもし海に行き着いたら、プラスチックを魚が食べてしまうかも。これってゴール14の「海の豊かさを守ろう」の視点から見ると、問題な気がする……。
そうだよね。このように、1つのゴールのことだけを考えて取り組んでいると、ほかのゴールの視点から見て「環境に良くない」「SDGsにつながっていない」となることがあるんだよ。
ええ~。難しい。それでも生理が原因で働けない女性への支援は必要だと思うし……でもリサイクルする環境が整っていないところにプラスチック製のものを送ったらごみの問題が……。うーん、だったら、洗って何度も使用できる布製のものを届けるのはどうかな?
そんなふうに、ほかのゴールの視点も持ちながら自分たちの取り組みを見直し、「本当にSDGsにつながるかな? もっと良い方法はないかな?」と考えてみることが大事だね!
ほかにも、環境にやさしいと言われている電気自動車も、エネルギー源である「電気」をどのようにつくるか、と考えてみると違った見方をすることができるよ。
電気自動車は排気ガスを減らせるから環境にやさしい。だけど、クルマを動かすための電気を火力発電にばかり頼っていると、発電の段階で二酸化炭素(CO2)をたくさん排出してしまうかも……。
火力発電で排出するCO2を減らす工夫をしたり、太陽光発電などの再生可能エネルギーに切り替えたりして、電気をつくるところから見直していかないと真のSDGsにはならないんだね。
そのとおりだよ!
「SDGsの目標達成につながる」と思って活動していても、違うゴールの視点から見ると「それはSDGsじゃない」と言われてしまうことがある。指摘を受けたらショックを受けるかもしれないけど、大事なのは、自分にはなかった視点や、見逃していた視点についてよく学んで、いろいろな人の話を聞き、「もっと良い方法はないかな?」と考えていくこと。
1つのゴールのことだけを考えるんじゃなくて、17のゴールそれぞれの視点から取り組みを見直してみるのも大事だね。難しい問題だけど、指摘を受けることを怖がりすぎず、そのたびに学んでいこう!
イラスト/奈良裕己
塚田智恵美
ライター/編集者。1988年、神奈川県横須賀生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、ベネッセコーポレーションに入社。『進研ゼミ中学講座』の編集を経て、2016年に独立。教養・学問・ビジネス・教育コンテンツの分野で、雑誌・Web記事、書籍のライティングを行う。「ワクワクする」「素人でもわかる」「知らないことをまなびたくなる」言葉や図解、マンガ、物語、シナリオなどで表現するのが得意。文京区在住。お酒と料理が好き。