「地球防衛隊SDGs」第69話解説編「外国人技能実習制度」
ちょっとむずかしそうだけど、
「
「国際貢献」からずれた「安い労働力」としての悪用例が多発
ねえ、スモール。外国人技能実習生って制度があることも知らなかったけど、ニュースになるくらい失踪が問題になっているの? 行方不明になるってことだよね?
そうだね。まずは失踪者の数をみる前に、「技能実習生が何人いるか」をみてみよう。出入国在留管理庁の資料によると、技能実習生の人数は、令和5年時点で50万9373人だよ(※)。
※出入国在留管理庁 技能実習生の失踪者の状況(推移)
50万人以上!? そんなにいるんだ!
うん。世界的に新型コロナウイルス感染症が流行したときに一時期、減ってしまったけど、また回復してきて、全体としては増えている傾向にあるよ。
たくさん利用されている制度なんだね。でも、大地が言っていたように失踪者も多いの?
技能実習生のうち、実習期間中に行方が分からなくなって失踪した人数は、同じ令和5年で9753人。全体のおよそ1.9%で、毎年、2%程度の失踪者がでている。
すぐにどこにいるか分かって実習に戻ったり、自分の国へ帰ったりしている人も多いよ。一方で、令和元年からの5年間の合計で、およそ1万人の失踪者が今も行方が分かっていないんだ。
失踪の原因は、低賃金や長時間労働、パワハラ、言葉が分からないストレスとかだってね。
特に賃金や労働時間の問題は、受け入れ企業の一部が、国際貢献という制度の本来の目的とはずれて、実習生を「期間限定の安い労働力」とみなして悪用していることが背景にあるよ。
実習生たちは、もともと貧しい地域の出身だったり、日本に来るために借金をしたりしている人も多い。せっかく日本に来たのなら少しでもお金を稼ぎたいと思うのは当然で、企業側とは意識の差もあるんだ。
制度はこのままでいいのかな?
実は、技能実習制度は2025年から段階的に廃止されて「育成就労制度」へ移行予定なんだ。実習生が労働力としてみられている現状があるから、制度の目的自体を「知識や技術の移転による国際貢献」から、「日本のための外国人人材の育成・確保」へと大きく変更するよ。
失踪する人はいなくなりそう?
技能実習制度よりは外国人の人権に配慮した制度を目指しているよ。賃金や労働環境に不満や不利益があれば、別の企業への転籍が認められるようになるんだ。
失踪して逃げ出さなくても、ルールの中で別企業へ移ればよくなるんだね。ほかにも気になることがある?
そうだね。労働環境面は改善されそう。ただ、出身国と日本との文化や言葉の違いによるコミュニケーションの難しさは、なくなるわけではないからね。そこを解消していく努力はこれからも必要になるよ。
次回も「
イラスト/奈良裕己
監修/佐藤寛