夜空に大きく咲くカラフルな打ち上げ花火。夏の風物詩として日本各地で花火大会がおこなわれるなど、みんなを楽しませてくれます。花火は、その名前の通り、咲いた花のように火薬が燃えている火なのですが、火というと赤っぽい色のイメージがありませんか。あの鮮やかで、さまざまな色は、いったいどうやってつくられているのでしょう。花火の種類や、花火玉の中がどうなっているのかと合わせて紹介します。
花火の色は金属が燃えるときの炎色反応
花火が日本で楽しまれ始めたのは江戸時代です。その当時、花火の色は炭火色(橙色)の濃淡だけでした。これは花火の火薬が、戦国時代に鉄砲といっしょに伝来した、木炭などを使った黒色火薬しかなかったためです。
いま花火の火薬は、酸化剤、可燃剤、色火剤、発煙剤を混ぜ合わせてつくられます。酸化剤は「よく燃やす」役割、可燃剤は「燃える」役割、発煙剤は「煙を出す」役割のもので、色を付ける役割のものが「色火剤」です。明治時代にいろいろな薬剤が輸入されるようになって、それを色火剤として火薬に混ぜることで、花火はどんどんカラフルになっていきました。
花火の色は、金属が燃えるときに決まった色の炎が見える「炎色反応」という化学反応を利用しています。さまざまな色を出す炎色反応が知られていて、代表的なものは中学校や高校の化学の授業でも学びます。そのなかでも、火薬にするときの扱いやすさや安全性などから、現在の花火は、ストロンチウム(炭酸ストロンチウム)の赤色、バリウム(硝酸バリウム)の緑色、ナトリウム(シュウ酸ナトリウム)の黄色、銅(酸化銅)の青色という4色と、それらを混ぜ合わせて色合いをつくることが基本になっています。また強い白として、激しく光って燃えるアルミニウム、マグネシウムの化合物も使われます。
これらの色を出すための火薬は、粉の状態から水分を加えて練ったり乾燥したりして、「星」と呼ばれるボール状にして使われます。このとき、ひとつの星で出せる色はひとつとは限りません。異なる色を出す火薬を重ねて層にすることで、燃えるにつれて色が変わる星をつくることもできます。たとえば、中心から黄色になる火薬、赤くなる火薬、青くなる火薬の順で層になるようにつくったとしたら、星は外側から燃えていくので、花火としての見た目の色は青、赤、黄の順に変化することになります。
豆情報
花火は江戸時代に庶民の遊びとして流行しました。ただ花火を原因とした火災がたくさん発生し、幕府は毎年のように花火禁止令を出さなければならないほどでした。
花火玉の中に計算されて並ぶ「星」
花火玉の中で星はどのように入れられているのでしょうか。まん丸に開き、花火と聞いて真っ先にイメージされる「菊花型」を例にしてみてみましょう。
花火玉の中心には導火線と、それにつながる「割り薬」という火薬があります。割り薬は、そのすぐ外側を囲んでいる星を飛ばし広げる役割を持った火薬です。星の外側には、また割り薬、星の順番で交互に並んでいくことになります。たとえば、花火玉の中心部から黄色になる星、赤になる星、青になる星の順番に並んでいたら、空で開くときも中心部から黄色、赤、青の順番に三重に咲いた花火に見えます。
また、ハートマークや、笑顔マークなどが浮かび上がる花火は、意外に考え方は難しくなく、花火玉の中に、まさにそのマークの形に星が並べてあります。
花火玉をつくるときは、半分に切ったボール状に星を並べ、それを2つ合わせて、ひとつの花火玉にします。ひとつの花火玉に数百個の星と割り薬を入れます。火薬を扱うので、摩擦や衝撃などで火の気を起こさないよう、ほぼ手作業で行われているなど、細やかで気の抜けない制作です。
豆情報
日本の花火は大きく3つの種類に分けられます。
①星を360度に飛ばして、まん丸に開いたり、マークや土星の輪のようなものを見せたりする「割物」。
②上空でくす玉のように割れて、星などを放出する「ぽか物」。
③花火玉が上空の闇の中で開き、あとからたくさんの小さな花がいっせいに開く「半割物」。
「よい花火」の4つのポイント
花火の色や、花火玉の内部の仕組みが分かったところで、最後はどんな花火が「よい」とされているか、4つの鑑賞ポイントを紹介します。
①打ち上げられた花火玉がちょうど最高点で開いているか
②花火玉の大きさに見合った広がりの大きさで、まん丸く開いているか
③飛び散る星が花火の中心から真っすぐ飛んで円形に広がっているか
④開いた星の先端がいっせいに消えたか
いかがでしたか。普通に眺めても美しく、心に響く打ち上げ花火ですが、今回の記事を読んで、これまでとは少し違った見方で花火を楽しめるかもしれませんね。
豆情報
日本でいちばん大きい花火玉は40号(4尺玉)です。直径が約114cmで、重さは約420kg。開いた花火の直径は約750mあり、地上から約750mの高さに打ち上げなければなりません。なお、多くの花火大会でも目にすることができる10号(1尺玉)は、開いた花火の直径が約280mあり、地上約300mの高さに打ち上げられます。
監修者:河野晴行