サウジアラビアと日本、どんな結びつきがある?
アラビア
主な産業は石油です。1日当たりの原油生産量は1228万7000バレル(2018年)*で、これはアメリカ合衆国に次ぐ世界第2位の規模です。その始まりは1933年。サウジアラビアは、国内の砂漠で石油を探す権利をアメリカの石油会社にあたえました3)。その後、アメリカ企業によって油田が発見され、1938年には石油の生産が始まります。第二次世界大戦後に原油の生産量が増え、1958年には1年を通した原油生産量が1日当たり100万バレルを超えます。1980年になると、サウジアラビア政府はこの会社を国有化し、原油の輸出によるばく大な収入を基に、国づくりを進めてきました。
日本がサウジアラビアと国交をスタートさせたのは、1955年。1960年には、日本の石油会社がペルシャ湾で石油の採掘を始めました。現在、サウジアラビアから日本への輸出額は約3兆7329億円(2018年)で、そのほとんどを石油と石油製品が占めます。一方、日本からの輸入額は約4541億円で、主な品目は自動車をはじめとする機械類です。日本にとってサウジアラビアは最大の原油供給国であり、圧倒的に日本が輸入する金額の方が多い状況です。けれども、サウジアラビアでさまざまな産業が発展していけば、この関係性も変わってくる可能性があります。
というのも、石油産業で成長してきたサウジアラビアですが、近年はそれ以外の分野にも力を入れているのです。2016年、新たな国づくりを目指す計画「ビジョン2030」を発表。現在、映画館をオープンさせたり、コンサートを開催したり、女性による自動車の運転を許可したりと、特に文化の改革が進んでいます。
日本もこの動きを支援していて、2017年には「日・サウジ・ビジョン2030」を、2019年には「日・サウジ・ビジョン2030 2.0」を発表しました4)5)。これに基づき、エネルギーや医療、農業、インフラ(道路や通信など、生活のきばんとなる施設)などの分野で日本企業の活躍の機会が増えるかもしれません。たとえば、日本のメーカーがサウジアラビアに工場を建設して製品を造る、共同で電気自動車の走行実験を行う、日本のテレビ番組のサウジアラビア版を制作する、といった事業が進んでいます。
そうした取り組みの1つに、海水の淡水化事業があります。大手化学企業の東洋紡がサウジアラビアの海水淡水化公団と共同で、効率的に海水から淡水(塩分をふくまない水)を造る実験をしています。これまで淡水化プラントから捨てられていた海水をうすめて再利用できる上、以前の技術に比べて使うエネルギー量を減らせるそうです。
2019年には、日本のアニメを紹介するイベントをサウジアラビアで開催。日本では、サウジアラビアのプロダクションと東映アニメーションが共同制作したアニメ『きこりと宝物』が2018年に、『アサティール 未来の昔ばなし』シリーズが2020年に放映されるなどしています。
*バレル(bbl):体積を表す単位で、樽(barrel)の容積に由来します。原油や石油製品の計量に使うとき、アメリカの基準では1バレル=約159Lなので、1228万7000バレルは約195万kLです6)。ただし、イギリスの基準はアメリカとちがい、1バレル=約163Lとされています。
参考 資料
1)外務省.「サウジアラビア王国(Kingdom of Saudi Arabia)基礎データ」:https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/saudi/data.html#section1
2)日本貿易進行機構(JETRO).「サウジアラビア概況・基本統計」:https://www.jetro.go.jp/world/middle_east/sa/basic_01.html
3)アラムコ・ジャパン.「サウジアラムコの沿革 探究心がつないだ歴史」:https://japan.aramco.com/ja-jp/who-we-are/saudi-aramco-overview/history-of-sa
4)JETRO.「地域・分析レポート 変わりゆく産油国サウジアラビア 日・サウジ協力も新たな時代に」:https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2019/c06487c5d5f7ae16.html
5)経済産業省「日・サウジ・ビジョン2030 2.0公表版」:https://www.meti.go.jp/press/2019/06/20190618007/20190618007_01.pdf
6)石油連盟「統計情報 換算係数一覧」:https://www.paj.gr.jp/statis/kansan/
監修者 :大山 光晴
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