暑いとき、水辺で遊ぶのは気持ちいいですよね。しかし、みんなも水の事故のニュースを耳にすると思いますが、一つまちがえると、おぼれて命を落とすことも…。「泳げるから大丈夫!」などと思ってませんか? 流れがあって、足の届かない深さがある海や川は、プールで遊ぶのとは大きく違います。安全に、楽しく遊ぶため、海や川にひそむキケンなポイントを学びましょう。
流れのある水の中に入るなら「ひざ下」まで
まずは、流れる水の中で、どれくらい自由に動けるかという話です。
上のグラフは、おとなが洪水時に、歩いて流れる水の中を避難できるかどうか、水の深さと水の流れの速さとの関係を示したものです。これは、海や川など流れる水にさからって歩けるかということにもあてはめられます。
グラフの青い線より下は安全に歩けるときになります。そして赤い線より上は歩くのが難しいときで、水の力に負けて流されてしまいます。
例えば、水が、ひざよりも低いくらいの深さしかなくても、1秒間に2m以上を進む流れの速さがあれば、もう歩くことができないそうです。秒速2mは、地上ではジョギングくらいの速さで、水中では、オリンピックに出場する競泳選手が泳ぐ速さと同じくらいのレベルです。
おとなの場合で40cmの深さ、みんなの場合におきかえて考えると、例えば30cmくらいの深さでも歩けなくなると考えられます。
そして水が深くなればなるほど、水の流れがそこまで速くなくてもその危険性は増えます。反対に、浅くても水の流れが速ければ危険ということになります。
安全に遊ぶなら「水の中に入るのは、ひざの下くらいの深さまで」と意識しましょう。それ以上の深さがあるとキケンもあるので、十分に注意しましょう。
流れが遅くてもこわい海の「離岸流」
海水浴場など、海で遊ぶときに気をつけたいものに「離岸流」があります。離岸流は、岸に打ち寄せた波が、沖へ戻ろうとする流れのこと。特別なことではなく、どんな海水浴場でも、いつでも発生しています。
離岸流の幅や長さ、速さは、波がどれくらい高いかによって変わります。幅は広くて30m、長さは長くて200mともいわれています。
離岸流の速さは、時にはオリンピックの競泳選手並みの秒速2mにもなりますが、その流れにさからうことは、まず無理です。離岸流がこんなに速くなるときは、波の高さも2mほどで非常に高く、そもそも海遊び自体が危険な状態です。
実は離岸流の事故は、海水浴ができる波の高さが50cmくらいでも発生しています。このときの離岸流は秒速0.4mほどですが、このゆっくりとして遅い流れのときでも注意が必要です。最初に紹介したように、海などで全身が水の中にあると、ゆっくりとした流れにもさからうことが難しいからです。底をけってジャンプしたり、立ち泳ぎしたりしていると、その場にとどまっているつもりでも気づかないうちに沖へと移動し、足が届かなくなくなるところへと流されてしまうのです。
海遊びで気をつけたい「高い波」
海遊びしているときにやってくる波は、その高さが大きいものと小さいものと、ばらつきがあります。そして、その大きな方の波は、およそ5分間に1回程度やってきます。例えば、波の高さ1mの場合,その約2倍の2mの波がくることもあるそうです。それまで腰の下あたりだった波が、頭をこえてかぶってくることになります。岸辺や浅瀬で遊んでいるとき、一見すると波も小さく穏やかだったとしても、波の高さは一定ではないので、いつでも大きな波がくることを覚えておきましょう。
川遊びで気をつけたい川底の「落とし穴」
上の図は、水難事故があった川の底の形をグラフ化したものです。
左側の岸に近いところでは、ゆるやかな角度で深くなっていきます。川遊びをしているとき、水の透明度の問題で川底の様子があまりよく見えないと、このゆるやかな角度が続いていくと思い込んでしまいます。しかし、あるところで、まるで落とし穴のように、急にガクンと深くなっているのがわかります。右の写真のように、わずか2mほどの場所の違いで、股下までだった深さが、あごまでつかる深さに変わっています。ここで足がとどかない子どもだと、頭までずっぽりと沈んでしまうのです。
このような川底の形は、特別なものではなく、ほとんどの川でよくみられるものです。また深いところは水面がおだやかで、一見すると流れもゆっくりに見えるため、気をゆるめてしまいがちです。
遊ぶの禁止!「ため池」は落ちたら出られない
ため池とは、主に農業で使う水をためておく人工の池です。そのカベの角度はゆるやかなものが多く、周りから見ている分には大きなキケンを感じにくいです。ですが、カベはゴムシートでおおわれるなどしていて、そのゴムシートには泥やコケがびっしりついています。そのぬめりに足を取られると落ちてしまう上に、一度落ちてしまうと、カベをのぼって出ようとしても、ぬるぬるとすべってのぼれません。手をかけるところがないため、足がとどかない深さだった場合、浮かび続けることが難しく、おぼれてしまうキケンがあります。
もしものときは、あわてず「浮いて待て」
海や川など水辺で、思いがけないアクシデントにみまわれたときは、自分一人で解決しようとせず、あわてず落ち着いて対応することが大事です。特に、足の届かない水の中で、おぼれそうなときは「浮いて待て」をこころがけましょう。
「浮いて待て」のポイントは、
・仰向けで上を見て大の字に→力を抜いてバランスを取りやすくなる
・大きく息を吸う→吸った空気で体が浮かびやすくなる
・靴や服はぬがない→水に浮く靴や服にたまった空気で体が浮かびやすくなる
・「助けて」と叫ばない→空気をはきだすことになり体が沈む
・手をあげない→人が水に浮かぶとき体のどこか一部しか水上に出せず、手をあげると、代わりに顔が沈んでしまう
です。
例えば、海で離岸流に流されたとき、岸と並行に泳げば流れから抜け出すこともできますが、管理されている海水浴場であれば、すぐに助けがきてくれます。無理をせずに、浮いて、呼吸の確保に意識を集中させるとよいです。
キケンなポイントを知って、立ち入り禁止の場所・時期には行かないなどルールも守りながら、水辺での遊びを楽しみましょう。
監修:犬飼直之
長岡技術科学大学准教授。水難学会理事。