国際刑事裁判所がピンチ 元裁判官にノーベル平和賞、米国が制裁

国際刑事裁判所がピンチ 元裁判官にノーベル平和賞、米国が制裁

赤根さんは2018年にICCの判事になり、24年から所長をつとめています=7月、大阪市 朝日新聞社

「法ほうの支し配はい」が いま危あぶない

米べいがIアイCシーCシー本ほん体たいまで「制せい裁さい」の対たい象しょうに

アメリカ(米べい国こく)のトランプ政せい権けんは10月9日、赤あか根ね智とも子こさんが所しょ長ちょうをつとめる国こく際さい刑けい事じ裁さい判ばん所しょ(IアイCシーCシー)に「制せい裁さい」を科かすと発はっ表ぴょうしました。制せい裁さいとは、相あい手てに対たいして不ふ利り益えきをあたえることです。8月には赤あか根ねさん個こ人じんも制せい裁さいの対たい象しょうにされています。IアイCシーCシーってどんな裁さい判ばん所しょ? 何なにが問もん題だいになっているの? 赤あか根ねさんの教おしえ子ごの弁べん護ご士したちに聞ききました。

イスラエル首しゅ相しょうへの逮たい捕ほ状じょうなどに反はん発ぱつ

ノーベル平へい和わ賞しょうはIアイCシーCシーの元もと裁さい判ばん官かんナビ・ピレイさんに

今こ年としのノーベル平へい和わ賞しょうをおくられることになったナビ・ピレイさんは、IアイCシーCシーの元もと裁さい判ばん官かんです。トランプ政せい権けんがIアイCシーCシーへの制せい裁さいについて明あきらかにしたのは、授じゅ賞しょうが発はっ表ぴょうされた数すう時じ間かん後ごのことでした。

オランダ・ハーグに本ほん部ぶがあるIアイCシーCシーは、国くにが捜そう査さなどをする能のう力りょくや意い思しがない場ば合あいに、その国くににかわって調しらべて裁さい判ばんをします。対たい象しょうとするのは、戦せん争そう犯はん罪ざいなど四つの罪つみで、それらの罪つみを犯おかした「個こ人じん」を裁さばきます。「たくさんの人ひとを傷きずつけても、権けん力りょく者しゃであれば罪つみに問とわれないのはおかしい。国こく際さい的てきなルールのもと、戦せん争そう犯はん罪ざいを裁さばくためにつくられたのがIアイCシーCシーです」。赤あか根ねさんの教おしえ子ごの弁べん護ご士し、社しゃ本もと洋よう典すけさんはそう話はなします。
IアイCシーCシーは、ウクライナに攻せめこんだロシアのプーチン大だい統とう領りょうに2023年、逮たい捕ほ状じょうを出だしました。ロシアは赤あか根ねさんを「指し名めい手て配はい」し、ロシアに引ひきわたすよう、オランダに求もとめています。さらに24年、中ちゅう東とうのパレスチナ自じ治ち区くガザでの攻こう撃げきが戦せん争そう犯はん罪ざいにあたるとして、米べい国こくと仲なかの良よい国くにイスラエルのネタニヤフ首しゅ相しょうに逮たい捕ほ状じょうを出だしました。また、過か去こにアフガニスタンで活かつ動どうした米べい国こくの政せい府ふ関かん係けい者しゃらを捜そう査さの対たい象しょうにしています。
現げん在ざい、125の国くにや地ち域いきがIアイCシーCシーに参さん加かしています。米べい国こくやロシア、イスラエル、中ちゅう国ごくは加くわわっていません。米べい国こくは「IアイCシーCシーは、IアイCシーCシーに入はいっていない国くにの個こ人じんを捜そう査さの対たい象しょうにし、権けん限げんを乱らん用ようしている」と非ひ難なん。赤あか根ねさんたち個こ人じんに加くわえて、IアイCシーCシー本ほん体たいまで制せい裁さいの対たい象しょうにしたのです。

ハーグ
朝日学生新聞社
国際刑事裁判所が扱ってきた主な事件
朝日新聞社

どんな人ひとも 法ほうの上うえには立たてない

不ふ参さん加かの国くにも捜そう査さ対たい象しょうになりえる

アメリカ(米べい国こく)は国こく際さい刑けい事じ裁さい判ばん所しょ(IアイCシーCシー)への制せい裁さいを始はじめるのを180日にち間かんは待まつとしています。制せい裁さいを受うけると、米べい国こくの銀ぎん行こうや米べい国こくの会かい社しゃとの取とり引ひきができなくなります。職しょく員いんの給きゅう料りょうが支し払はらえなくなり、捜そう査さや裁さい判ばんをするのが難むずかしくなるかもしれません。
赤あか根ねさんは8月に開ひらいた記き者しゃ会かい見けんで、国こく際さい条じょう約やく「ローマ規き程てい」に従したがい、中ちゅう立りつで公こう正せいに捜そう査さ、裁さい判ばんをしてきたと説せつ明めい。ローマ規き程ていは、日本をふくむ120か国こくが賛さん成せいして決きめたIアイCシーCシーの国こく際さいルールです。
ローマ規き程ていでは「IアイCシーCシーに参さん加かしている国くにで戦せん争そう犯はん罪ざいがおきれば、その犯はん罪ざいに関かかわった人ひとを捜そう査さ、訴そ追ついできる」としています。つまり、IアイCシーCシーに加くわわっていない国くにの人ひとも捜そう査さの対たい象しょうになりえるのです。しかし、米べい国こくのトランプ政せい権けんはこの点てんを「権けん限げんの乱らん用よう」とうったえ、「米べい国こく人じんの捜そう査さは許ゆるさない」としています。
赤あか根ねさんは「IアイCシーCシーのみの問もん題だいではなく『法ほうの支し配はい』の危き機きだ」とうったえます。法ほうの支し配はいは、権けん力りょく者しゃもそうでない人ひとも、すべての人ひとは法ほうに従したがわなければならないという考かんがえ。ノーベル平へい和わ賞しょうに選えらばれたナビ・ピレイさんも法ほうの支し配はいの大たい切せつさを呼よびかけます。

赤あか根ねさんが教おしえ子ごたちに伝つたえた思おもい

国こく際さい社しゃ会かいにおける「法ほうの支し配はい」を守まもり、IアイCシーCシーを支ささえたい――。そんな思おもいから、赤あか根ねさんの教おしえ子ごの弁べん護ご士したちが2025年に立たち上あげたのが「Japanジャパン Internationalインターナショナル Ruleルール ofオブ Lawロー networkネットワーク」、通つう称しょうJIRoLジロルです。Ruleルール ofオブ lawローは英えい語ごで法ほうの支し配はいという意い味みです。
検けん察さつ官かんだった赤あか根ねさんは2005~08年、愛あい知ち県けんの法ほう科か大だい学がく院いんで教きょう員いんとして学がく生せいたちに教おしえていました。

赤根智子さん(中央)と、上松健太郎さん(右から2番目)や教え子たち=5月、フランス 上松さん提供
赤根智子さん(中央)と、上松健太郎さん(右から2番目)や教え子たち=5月、フランス 上松さん提供

当とう時じの赤あか根ねさんについて、「とても熱ねっ心しんに指し導どうしてくれて、まちがえている箇か所しょをていねいに教おしえてくれました。いつも目めの前まえのことに一いっ生しょう懸けん命めい取とり組くむ先せん生せいでした」とJIRoLジロルのメンバーでもある社しゃ本もと洋よう典すけさんは話はなします。

JIRoLジロルは、学がく生せい向むけに赤あか根ねさんのオンライン講こう演えん会かいを開ひらいたり、中ちゅう学がっ校こうで模も擬ぎ裁さい判ばんの授じゅ業ぎょうをしたり、若わかい世せ代だいにもIアイCシーCシーや法ほうの支し配はいを考かんがえる機き会かいを作つくっています。
なぜ法ほうの支し配はいが大たい切せつなのでしょうか。「赤あか根ねさんは『法ほうの支し配はい』について話はなす時とき、Noノー oneワン isイズ aboveアバブ theザ lawロー.(どんな人ひとも法ほうの上うえに立たつことはできない)という表ひょう現げんを用もちいていました」と、JIRoLジロルのメンバーで弁べん護ご士しの上うえ松まつ健けん太た郎ろうさん。「立たち場ばが上うえであろうと、下したであろうと、みんなに共きょう通つうするルール(法ほう)に基もとづいて、人ひとは生いきている。法ほうが機き能のうする社しゃ会かいでは、多おおくの人ひとの意い見けんだけでなく、『一人』の声こえにも耳みみをかたむけ、物もの事ごとが決きめられる。だからこそ法ほうの支し配はいは大たい切せつなのです」

赤根さん(左)と社本洋典さん=オランダ・ハーグ 社本さん提供
赤根さん(左)と社本洋典さん=オランダ・ハーグ 社本さん提供

世せ界かいで広ひろまる「力ちからの支し配はい」

この数すう年ねん、法ほうの支し配はいをおびやかす事じ態たいがあいついでいます。2022年のロシアによるウクライナ侵しん攻こうや、26年の米べい国こくのベネズエラ攻こう撃げきなどです。大たい国こくの権けん力りょく者しゃが国こく際さいルールを無む視しし、軍ぐん事じ力りょくや経けい済ざい力りょくを用もちいて行こう動どうする「力ちからの支し配はい」が広ひろがっています。
「圧あつ力りょくを受うけている今いまのIアイCシーCシーの状じょう況きょうを、私わたしは危き機きとだけとらえていません。IアイCシーCシーや法ほうの支し配はいに関かん心しんを示しめす人ひとが増ふえているのも事じ実じつ。子こどもたちにも、『法ほうの支し配はい』がある世せ界かいを守まもるため、どう向むき合あっていけばいいか、考かんがえてもらえるとうれしいです」と上うえ松まつさんは話はなします。

国際刑事裁判所
朝日学生新聞社
よく似にた名な前まえの組そ織しきに、国こく際さい司し法ほう裁さい判ばん所しょ(Internationalインターナショナル Courtコート ofオブ Justiceジャスティス、IアイCシーJジェー)があります。設せつ立りつは1945年、本ほん部ぶはオランダ・ハーグ。IアイCシーCシーは「個こ人じん」を裁さばきますが、IアイCシーJジェーは「国こっ家か間かんの紛ふん争そう」をあつかいます。国こく際さい連れん合ごうの機き関かんで、すべての国こく連れん加か盟めい国こくが参さん加か。国こっ境きょうの主しゅ張ちょうのちがいなどを平へい和わ的てきに解かい決けつする役やく割わりをにないます。

取材・文/重政美穂(朝日小学生新聞)
(朝日小学生新聞2026年10月14日付)

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