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「非認知能力は“一生学ぶ力”に」キーワードは子どもの知的好奇心! 脳科学者が解説

「非認知能力は“一生学ぶ力”に」キーワードは子どもの知的好奇心! 脳科学者が解説

画像は「SewCream/shutterstock.com」より

学校のテストでは測れない「非認知能力」。近年、非認知能力を伸ばすことは、学力の向上や将来のキャリアにも影響すると注目が集まっています。

わたしたちは、子どもの非認知能力をどのように伸ばしていくとよいのでしょうか? 脳科学者の瀧靖之先生に話を聞きました。

「やればやるほど伸びる」変化する脳のしくみ

IQや学力のように数値化できる力とは異なり、目に見える形で表すのが難しい非認知能力。

瀧先生によると、非認知能力とは「『知的好奇心』や『クリエイティビティ(創造性)』、『自己肯定感』『やり抜く力』『コミュニケーション能力』『実行機能』(何かをしたいと思ったときに、ルールを理解し、段取りをして、時には我慢をしながらやり遂げる力のこと)など、具体的にはさまざまな力を指す」そうです。

「いずれも社会で生き抜くのに大切な力ですが、保護者の働きかけによって十分伸ばすことができると考えられています。なぜなら私たちの脳には可塑性といって、外部からの刺激に対して変化する力があることがわかっているから。

それはつまり、よく話すことでコミュニケーション能力が伸びるといったように、意識して取り組むことで、その力を伸ばすことができるということです」(瀧先生)

でも、なぜ、やればやるほどその能力を獲得しやすくなるのでしょう。その裏には、私たちの脳が持つしくみが関係していました。

「人間の脳は、神経細胞同士がつながって複雑なネットワークを構築しています。このネットワークを“道路”にたとえるなら、子どもの頃にたくさんの道を作ったあと、あまり使わない道は壊し、よく使う道を太く強固にするといったような発達をすると言われています。

高速道路のイメージ
画像は「D.Kvasnetskyy/Shutterstock.com」より

よく使う道は一般道から高速道路のようになり、より快適に使えるように発達していく。だから『やればやるほど、その力が伸びる』のです。

逆転の発想で考えると『うちの子は〇〇するのが苦手』と思い込んでいることも、実は苦手なのではなく、他の子に比べてこれまで取り組む機会が少なかった、と前向きに捉えることができると思います」(瀧先生)

楽しく取り組むと記憶力アップ!カギになるのは子どもの“知的好奇心”

非認知能力を伸ばすことは、学力の向上にも大きく影響すると瀧先生。

「たとえばルールに従って思考や感情、行動を調整する『実行機能』を高めることは、テストや受験に向けて『いつまでに、どう勉強するか』を考えたり、必要な我慢をしたりすることに役立つでしょう。

ほかにも『コミュニケーションスキル』のひとつと言われる共感性を高めることで、国語の『主人公の気持ちを理解する』力につながるなど、実はダイレクトに学力や成績にもつながってくると考えられます。

実際に、成績が高い人や、社会で活躍している人は、知的好奇心旺盛な人が多い傾向があるように思います。このように、非認知能力は複合的な意味合いで、生涯にわたって学ぶことや働くことにも関わってくるようです」(瀧先生)

非認知能力の中でも、「知的好奇心」は、特に脳の発達において大切な力だと教えてくれました。

「たとえば何かを覚えるにしても、イヤイヤ取り組むより、知的好奇心を持ってポジティブに熱中して取り組むほうが、苦なく覚えられると言われています。

脳内の思考のイメージ
画像は「Radachynskyi Serhii/Shutterstock.com」より

実は、脳には『扁桃体』という好き・嫌いを判断する領域があり、この扁桃体と、記憶力に関係する『海馬』が密接に関係しているんですよ。

ですから、運動でも勉強でも趣味でも、『知的好奇心』を持って楽しく取り組める力があれば、脳にもプラスに働くと考えられます」(瀧先生)

子どもの「非認知能力」を伸ばす遊びとは?

子どもは親の「気持ち」も模倣している!

とはいえ、子どものためと思って、親が『ああしなさい』『こうしなさい』と言うのは、本末転倒だといいます。

「子どもたちは、模倣(まね)によって、さまざまな能力を獲得します。保護者は、子どもにとっていちばん身近な模倣の相手となりますから、影響力が非常に強い存在といえるでしょう。

しかも子どもは、物理的な体の動きや行動だけではなく、心のありようも模倣すると言われています。

つまり、知的好奇心を伸ばしたいと思ったら、何より『親が楽しそうに熱中している』姿を見せること。すると子どもも『熱中することが楽しい』といった心のありようを感じ、いろいろなことに興味を持つ力が伸びていくのです」(瀧先生)

親子で取り組みたい「アウトドア」と「読書」体験

まずは親子でいろいろなことを体験してみたり、親自身が夢中になっていることに子どもを連れ出したりしてみるのもいい、と瀧先生。

なかでも特に「知的好奇心」を伸ばすのに最適な体験を2つ挙げてくれました。

「ひとつは、『アウトドア体験』です。アウトドアといっても、そこまで本格的なものにこだわらなくて良いと思います。ちょっとした山歩きや釣り、昆虫採集などを、お子さんと一緒に取り組んでみるのもいいですね。

親子で川遊びをするイメージ
画像は「DisobeyArt/Shutterstock.com」より

自然は、同じ場所でも時間や季節や天気が少し違うだけで、異なる景色を見ることができますし、その奥深さが、知的好奇心を刺激してくれる。ぼくも、子どもと魚釣りによく行くのですが、自分の学びにもつながっていますから。

そして、もうひとつは、『読書』です。ただ、小学生にもなると、既に「本嫌い」という子や、『本を読みなさい』と言っても、嫌だと言われてしまうこともあるかもしれません。

そこでおすすめなのは、1日の中で『家族みんなで、それぞれ本を読む時間』をつくること。たとえば寝る前の15分~30分を読書の時間にしてしまうという風に、本を読むことが生活の一部になっていくのが理想です。

もちろん、日々忙しい中で『親子一緒に取り組む』ことが難しいときもあるので、できる範囲で、親自身も楽しめることの中から、一緒にチャレンジできるといいですね」(瀧先生)

 

取材・文/塚田智恵美 編集/石橋沙織

瀧 靖之(たき やすゆき)さん

瀧 靖之(たき やすゆき)さん

瀧 靖之(たき やすゆき)さん

東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター 副センター長・加齢医学研究所 教授。医師。医学博士。著書に「16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える『賢い子』に育てる究極のコツ」(文響社)「脳医学の先生、頭がよくなる科学的な方法を教えて下さい」(日経BP)などがある。一児の父。

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