恐竜好きのまんが家も大興奮!特別展「恐竜博2023」の見どころ
国立科学博物館で、人気を博している特別展「恐竜博2023」。恐竜の日の4月17日には、展示されている恐竜の中から、“みんなの推し恐竜”をランキング形式で紹介。ほかにも、音声ナビゲーターを務める賀来賢人さんのインタビューや、本展の監修を務めた真鍋真・国立科学博物館 副館長による子ども向けの見どころ解説なども話題になっています。
今回は、そんな「恐竜博2023」について、真鍋副館長に見どころを取材。恐竜飼育まんが『ディノサン』(新潮社)の作者で恐竜好きである木下いたるさんの「描き下ろしまんが」とともにご紹介します。
トゲトゲの解像度がすごい!主役の鎧竜「ズール」と「ゴルゴザウルス」の攻防とは
今回の展示の主役である「ズール」は、頭骨から尾のこん棒までが一体分発見された貴重な恐竜。カナダのロイヤル・オンタリオ博物館からやってきたのだそう。
ちなみに、名前の由来は、映画『ゴーストバスターズ』に登場する門の神「ズール」に似ているところからきている、と真鍋副館長。
肉食恐竜から身を守るためのトゲトゲの装甲には“皮膚”が、肉食恐竜の脛(すね)を破壊するほど強力な尾のこん棒には“腱などの軟組織”が化石として残っているのを、見ることができると言います。
「ズール」が守りに特化した恐竜なら、それに対抗するのは、歯や爪などの武器に特化したゴルゴサウルス。
2体の恐竜の攻防による「恐竜対決」は、目を見張る緊張感があるだけでなく、“攻守”を通して、進化してきたそれぞれの強みを知ることができる展示に。そんな視点で楽しめるのも、今回の「恐竜博2023」の魅力です。
世界初展示「タイソン」の全身骨格も!迫力ある2体のティラノサウルス
そして、今回もうひとつの見どころになっている、2体のティラノサウルス・レックス。とくに「タイソン」は、全身の59%にあたる177個の骨が見つかっている貴重な標本です。
今回実物化石を一部含む「全身組み立て骨格」が見られるのは、なんと世界初!その迫力や臨場感とともに、白亜紀最末期の北半球における獣脚類の進化も目が離せません。
十二指腸のひだ構造が残っている!?軟組織を残した「スキピオ二クス」の化石
また、最前線の研究では、軟組織の化石からもさまざまなことがわかっているそう。骨だけではなく、気管や肝臓、胃、腸、血液などの内蔵も化石として残っているというから驚きです。
実際に、今回展示されている「スキピオニクス」の化石には、通常化石として残らない角質の爪そのものが残っている、と教えてくれました。
時空を超えた恐竜たちからのメッセージ!さまざまな視点で眺めてみよう
ほかにも、南半球における新種のメガラプトル類の「マイプ」の進化や、最前線の研究など、盛りだくさん!最後に、真鍋副館長に親子向けの見どころや楽しみ方について聞きました。
「『恐竜博2023』は恐竜の攻守の研究の最前線を見ながら展示室を巡っていただくものですが、攻守は肉食vs草食だけではありません。たとえば、ズールの棍棒はズール同士の縄張り争いに使われていたらしいという研究が昨年発表されました。
また、ティラノサウルスの「タイソン」の腕には、後ろから自分より小さなティラノサウルスに咬まれたらしい傷跡が残っていました。食物連鎖の頂点にいたティラノサウルスでさえ、その地位は安泰なものではなかったようです。
恐竜の化石は自分からは何も話してくれないかもしれませんが、私たちがいろいろな見方をすると、新しい発見があるはずです。
お子さんと大人では目線の高さが違うので、それぞれ気がつくことが違うかもしれません。ぜひ、大好きな絵本や図鑑を片手に、言葉のキャッチボールをしながら、恐竜たちを見てあげてくださいね」(真鍋副館長)
時空を超えた恐竜に出会える特別展「恐竜博2023」。「化石」を通して、どんな学びや気づきが得られるのか、ぜひ親子で体感してみてはいかがでしょうか。
取材・文/石橋沙織 画像提供/特別展「恐竜博2023」
特別展「恐竜博2023」
期間/3月14日(火)~ 6月18日(日)まで
会場/国立科学博物館(東京上野公園)
開館時間/午前9時~午後5時。入場は閉館の30分前まで。月曜休館(ただし、5月1日、6月12日は開館)。ただし、毎週土曜日、日曜日は19時まで延長(入場は18時30分まで)。常設展示は17時閉館(入場は16時30分まで)
入場料/一般・大学生2200円、小・中・高校生600円 オンラインによる日時指定予約が必要
問い合わせ先/ハローダイヤル050-5541-8600
https://dino2023.exhibit.jp/
※巡回は7月7日(金)~9月24日(日)大阪市立自然史博物館
※大阪会場の展示物は東京会場と一部異なります
プロフィール
真鍋 真(まなべ まこと)さん
国立科学博物館・副館長、研究調整役、標本資料センターと分子生物多様性研究資料センター長。1959年東京都生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、米イェール大学大学院理学研究科修士課程修了、英ブリストル大学大学院理学研究科PhD課程修了。博士(理学)。1994年から国立科学博物館に勤務。恐竜など中生代の爬虫類や鳥類の進化を化石から読み解きたいと、化石と心の中で会話する日々をおくっている。日本古生物学会・学術賞受賞。2020年より群馬県立自然史博物館・特別館長を兼務。図鑑などの書籍の監修、展覧会などの監修など多数。
木下いたる(きのしたいたる)さん
漫画家。『ギガントを撃て』(講談社)でデビュー。現在、「月刊コミックバンチ」にて恐竜飼育漫画『ディノサン』(新潮社)を連載中。イチオシの恐竜はギガノトサウルス。