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​​生活習慣の自立の前に。学校生活​​で困らないための子どものスキル【親野先生が解説】​

​​生活習慣の自立の前に。学校生活​​で困らないための子どものスキル【親野先生が解説】​

​​新学期が始まると、毎日学校に行く準備に食事のマナー、整理整頓など、子どもの生活習慣に頭を悩ませる保護者は少なくありません。​

ですが、「その前に、子どもが自立する上で大切な力をまず身につけてほしい」と話すのは親野智可等先生。学校生活だけでなく、大人になっても必要不可欠な”自立するために必要なスキル”について教えてもらいました。

生活習慣の定着よりも大切!? 学校生活で必須のスキルとは

​​朝の準備や身支度、宿題に明日の準備など、進んでやってほしいと保護者が願う一方で、親野先生は、学校生活で困らないという視点で見ると、意外に見落としがちなスキルがあると語ります。​

​​「いちばん大切なのは、困ったとき、誰かに『助けて』『手伝って』と言えることです。誰だって、予期せぬトラブルで困ってしまうことは必ずあるもの。学校だったら、『忘れ物をした』『次の授業の教室がわからない』とかね。​

​​ところが実際には、『先生や友達に迷惑をかけてしまう』『恥ずかしいから言えない』という子が多いんですよ。特に、『自分のことは自分で。人に迷惑をかけてはいけない』と言われ続けてきた子は、困っていてもヘルプを出してはいけないと思ってしまっているんです。​

​​これは大人の仕事にも当てはまることですが、『助けて』と言えずに一人で問題を抱えてしまうのはすごく苦しいですよね」(親野先生)​

教室のイメージ

​​保護者の関わりとしてありがちな、“子どもをあえて助けない”という方針は、自己肯定感や自立を育てるのにマイナスの影響があるのだとか。​

​​「じつは、『手伝うと子どもは自立できない』は迷信で、発達心理学によると『手伝ってあげたほうが自立する』ことがわかっています。​

​​幼稚園で行われたある研究では、子どもができないことを先生が手伝ったりやってあげたりしているクラスは、子どもと先生の人間関係と、子どもの自己肯定感が高くなり、その結果子どもの自立度合いが上がりました。

一方、手伝ったりやってあげたりしないで子どもをよく叱る先生のクラスは、子どもの自立度合いが上がりませんでした。

また、『助ける=その子のためにならない』という考えの大人を見て育った子は、友だちに対しても「その子のためにならないから助けない」と考えるようになる可能性があります。そうではなく、誰かが困っていたら助ける子になってほしいですよね。

​​だから、家庭でも、大人子ども関係なく、誰かを頼ったり、助け合ったりすることが大切。『困ったら誰かを頼ってもいいんだ』『助けてあげたらいいんだ』ということを大人の背中を通して伝えましょう。

真の自立は何でも自分でやるということではありません。助けたり助けられたりが自然にできる状態と考えるほうがいいと思います」(親野先生)​

幼児期に身につけたい生活習慣「やってみたい」を育てるコツは?

「嫌だ」「やめて」自分の気持ちを伝えることも必要に

​​また、嫌なことをハッキリ嫌と言えるなど、自分の気持ちを相手に伝える力も重要だと語る親野先生。​

​​「学校でよく起こるトラブルでも、お互いの気持ちがしっかり伝わっていないことがよくあります。たとえば、子ども同士のケンカなんかもそう。意外と意思表示をしっかりすることで、解決できることはたくさんあるんです​​。​

​​慣れないうちは、少しハードルを感じることもあるかもしれませんが、自分の気持ちを相手に伝えることは悪いことではありません。家族間でもハッキリ意思表示が互いにできる環境作りを心がけましょう。​

​​嫌なことをされたときは『やめて』とハッキリ言えるかどうかが大事なのです」(親野先生)​

親子のコミュニケーション

自立に向けて必要なサポートは「目の前の子どもを」見ること​

​​ヘルプを出せる、嫌だと言えるスキルを大前提としたうえで、やはり日々の生活習慣をできるだけ早いうちから身につけさせたいと思うのが親心。ですが、視点を変えて子どもと関わってほしいと、親野先生は続けます。​

​​「ひらがなは小学校入学前までに、九九はいつまでに、しつけは……と先にゴールを決めてしまうと、『まだできていない』と焦ったり、必要以上に叱る回数が増えたりして、親子で苦しむ原因になります。子どもの自己肯定感も下がってしまう。そうではなく、子どもの現状を見ることからスタートしてみてください。​

​​私たちは一人ひとり、性格も成長スピードも違います。生まれながらの特性も関係してくるので、苦手なことがあったとしても、子ども自身のせいでもなければ親のしつけのせいでもありません。​

成長のイメージ

​​挨拶、身支度、トイレ、食事など、すべて現状からスタートし、そこからできることを増やしていきましょう。親が勝手に作ったゴールを気にしすぎたり、ほかの子どもと比べたりしていると、どうしてもできていないところに目がいってしまいがち。

​​本人の時間軸で比べて、子どもがどう成長したのかに目を向け、ひとつでもできるようになったら、思いきり褒めてあげてくださいね」(親野先生)​

子どもの自立は良好な親子関係の先にある​

​​親野先生のお話を聞いていると、やはり子どもの自立には自己肯定感が大きく関わっていることがわかります。​

​​「基本的な生活習慣やマナーは、親子が一緒に生活している中で自然とできるようになるんですよ。子どもに身につけてほしいことがあれば、言葉で注意するよりも、親が行動で示すことが一番の近道。​

​​でもそれには、親子関係が良好であることが大前提です。良い関係が築けていれば、子どもは進んで親を模倣して、たくさんのことを吸収していきます。​

​​まずは、否定的な言葉かけをできるだけ避けること。子どもの気持ちに共感すること。そして、親子で触れ合う時間を作ること。これらを意識していれば、子どもは親に愛されていると実感でき、自己肯定感が上がり、自立に向けて一歩ずつ歩んでいけるでしょう」(親野先生)​

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取材・文/水谷映美 編集/石橋沙織​

親野智可等(おやの ちから)さん

親野智可等(おやの ちから)さん

親野智可等(おやの ちから)さん

長年の教師経験をもとに、子育て、親子関係、しつけ、勉強法、家庭教育について具体的に提案。著書多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。Instagram、Twitter、Voicy、Blog、メルマガ、各種メディアの連載などで発信中。『「叱らない」しつけ』などベストセラー多数。オンライン講演を含む全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。

Webサイト
http://www.oyaryoku.jp/

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