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【児童文学作家が教える】親が話を聞くだけでどんどん書ける!読書感想文・読書推薦文の書き方のコツ

【児童文学作家が教える】親が話を聞くだけでどんどん書ける!読書感想文・読書推薦文の書き方のコツ

「言葉」をテーマにした壮大な物語『言葉屋』シリーズや、インターネットの世界に溢れる「嘘」をめぐる冒険を描いた『嘘吹き』シリーズなどを手がける児童文学作家の久米絵美里さん。

子どもが作文と向き合う機会が増える夏休みに向けて、文章を楽しく書くために保護者ができるサポートを聞くと、「あるがままのその子の気持ちを受け入れてほしい」と語ります。一体どういうことなのでしょうか? お話を聞きました。

誰かとおしゃべりをするように自由に書く

「文章を書くにあたって大切なのは、どういう人が読んでどういう気持ちになるか、読み手のことを想像すること。上手に書こうと思うと負担になってしまうこともあるので、まずはそこから考えてみるといいかもしれません」(久米さん)

文章を書く仕事に就いて、改めて小さい頃の自分の作文への向き合い方を振り返ると、読み手へのまなざしが不足していた、と久米さんは語ります。

「もともと自分が言いたいことや、自分の頭の中を好きなだけアウトプットすることは好きだったのですが、そこを意識できていれば、もっと素敵な文章が書けたんじゃないかなと、小さい頃の自分の文章を見ると、つい後悔してしまいます。

ただ逆に、書くこと自体に苦手意識を持っているお子さんの場合は一度、作文の書き方や読書感想文の書き方のマニュアルから離れて、自由に書いてみるといいかもしれません。

人に伝わる文章にするために、文法を正しく使ったり起承転結を意識したりすることはもちろん大事だと思いますが、本を読んで楽しいなとか、本を読んでこう思ってこう伝えたいという想いをまずは大事にしてみると、自然と言葉があふれてくるかもしれないです。

普段のおしゃべりとして出てくる言葉も、フォーマットに入れなきゃって思うと出す場所がなくなって消えてしまうかもしれないと思うと、作文も、お友だちに話すように、もっと自由なかたちでよくて、本を読むことで生まれた自分の世界を、自分なりの方法で表現するおもしろさを知ってもらえたらうれしいです」(久米さん)

「楽しく書く」の土台になる、その子自身を受け入れる気持ち

久米さんの場合は、中学高校の両方でお世話になった国語の先生との出会いによって、楽しく書き続けることができたと振り返ります。

「私の作家になりたいという夢も応援してくださった先生で、今でも連絡を取り合ってことあるごとに感謝をお伝えしています。

今思い返すと独りよがりな考えを書いてしまっていた文章でも、『あなたらしさが効いてますね』と肯定してくださる方で。

文章を書くことに対してネガティブな気持ちにならずに今までこられたのは、先生がそう受け止めてくださった影響がとても大きいです」(久米さん)

さまざまな思い出の中でも、とくに高校生のときに書いた読書感想文のことが印象深いと語る久米さん。なんと、10枚ほどの原稿用紙に文章を書いたのだとか。

「今でもそのときの衝撃を鮮明に覚えているのですが、中学生のときに『アルジャーノンに花束を』を読み終えたあと、頭の中がわーっと散らかった感覚があって。

映像として表現すると、自分の頭の中に灰色の部屋があってその部屋中に紙がバーっと舞い、文字がバラバラに広がったイメージでした。それを高校生のときに改めて書こうと思ったところ、原稿用紙何枚もの分量になってしまったのですが(笑)。

その作文を読んでくださった先生は、『私の頭の中はこうです』と作文へのコメントとして、赤ペンでご自分の中の風景を書いてくださったんです。それが、自分の気持ちを肯定していただけたように感じられて、とても安心してありがたくて……。

もしお子さんが文章を書く前に、本の感想を話してみることが難しいようでしたら、まずは親の方から自分の感想を話して、同じ目線でおしゃべりをはじめると、お子さんも安心して言葉をかたちにできるようになるかもしれません」(久米さん)

「読書」から広がる子どもの自由な世界とは

自分が誰かに話したくなるような本に出会ってほしい

また、お友だちにその本の内容や感想を思わず話したくなるようなお気に入りの本に出会うことも大切だと久米さん。

久米さんのお気に入りの本たち
久米さんのお気に入りの本たち

「読書をすることで、『自分の中に世界を作る遊び』ができるようになると思うんです。1冊で得られる感覚ではないかもしれないので、なるべくいろんな本に触れるとよいのではないかと思います。

最近は表紙や挿絵がかわいい、楽しい本も増えていると思うので、そういうところをきっかけに本選びをしてもいいと思っていて。

名著や文字の多い本など、親視点で子どもに読んで欲しい本にとらわれず、まずは子どもが何となく興味を持った本・手に取った本を否定せずに受け入れることが、読書の楽しさに気づくきっかけになるかもしれません。

同級生のお友だちにおすすめの本を聞いてみるのもいいですよね。私も大好きな友人を通して、自分だったら選べなかったであろうすてきな作品にめぐりあったことがたくさんあります」(久米さん)

本との出会いは、さまざまなところにあると語る久米さん。子どもたちにも、読書で得られる楽しさを思う存分感じてほしいと続けます。

「自分が心から楽しめる本に会えたら、もうこっちのもの。気づいた時には読書の楽しさにどっぷり浸かることができるのではないでしょうか。

本の世界に浸る時間は、自分のためだけの自由時間。言い換えれば自分の心を守る時間だと思っていて。私の感覚だと、まるで脳の一部がじんわりと“楽しいお風呂”につかっているような、あたたかいイメージです。

読書は、先生のためや親のためじゃなく、自分の心にとっていいことなんだっていうことを、たくさんの子どもたちに知ってほしいと思います。

そして、読んだ時の自分の頭の中をアウトプットしてみたいと思えるような作品に出会えたら、ぜひ誰かにおしゃべりするような気持ちで感想を書いてみてもらえたらうれしいです」(久米さん)

今の自分を支える“子ども時代”の読書体験

取材・文/諸橋久美子 編集/石橋沙織 撮影/鈴木謙介

久米絵美里(くめえみり)さん

久米絵美里(くめえみり)さん

久米絵美里(くめえみり)さん

児童文学作家。『言葉屋』で第5回朝日学生新聞社児童文学賞、『嘘吹きネットワーク』(PHP研究所)で第38回うつのみやこども賞を受賞。そのほかの著書に『君型迷宮図』(朝日学生新聞社)、『忘れもの遊園地』(アリス館)など。2児の母。好きな食べものはクレソン。また、頭の中のイメージをじっくりアウトプットしていく作業が小説執筆に似ていると感じる編み物や刺繡をするのもお気に入り。

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