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“自分にとってのお得な買い物”が食品ロスや格差を生む!? 身近な買い物で子どもと学ぶ「SDGs」

“自分にとってのお得な買い物”が食品ロスや格差を生む!? 身近な買い物で子どもと学ぶ「SDGs」

地球の未来のことを考えると、避けては通れないのがSDGs(エスディージーズ)です。とはいえ、なかなか親子で自分事として取り組むことは難しいもの。

開発社会学者でありSDGsに詳しいさとかん先生こと佐藤寛さんは、「最初の小さな一歩は、私たちにとって当たり前の生活習慣を少しだけ変えることで踏み出せるのです」と話します。

今回は、身近な「買い物」でできるSDGsについて教えてもらいました。

常識は変えられる。私たちの小さな一歩が地球を救う

SDGsを自分事化するために必要なのは、「小さな行動の積み重ねが、常識をも変えられると知ること」だとさとかん先生は語ります。

「いまやマイバッグを持って買い物に行くことは当たり前になりましたよね。でも、ほんの数年前までは、ほとんどの人がマイバッグなんて持ち歩いていなかった。お店でもらうレジ袋を使うことが常識でした。

マイバッグで買い物をする親子のイメージ

プラスチックのストローもどんどん紙ストローに変わってきていますし、コンビニのスプーンや箸を断る人も増えています。これらは、企業の動きも大きいですが、一人ひとりが実行に移した結果。常識だと思っていたことは、私たちの行動ひとつですぐに変えられるのです。

エアコンの温度を1度上げる、食べ残しをしないなど、個人ができることは小さくても、積み重ねていけば世の中も地球も変わっていくんですよ。

ですが、このままSDGsの目標が達成できなければ、20年後30年後もいまと同じ暮らしを送ることは非常に難しいでしょう。たとえ私たちが生きている間は維持できたとしても、子どもたちが大人になったときはどうでしょうか。

今なにもしなければ、気候変動はさらに激しくなり、貧困や紛争、格差、ゴミ問題などの課題は深刻化……大人になった彼らはとても苦しい思いをすることになります」(さとかん先生)

食品を買うときの工夫で廃棄が減る!今日からできるSDGs①

実際に私たちの生活の中ですぐに実行できるSDGsの取り組みとして、一番身近で、誰もが取り組みやすいシーンは「買い物」なのだそう。

「たとえば、コンビニでおにぎりを買うとき。すぐに食べるのに、なんとなく賞味期限が長いものを選んではいませんか?

コンビニやスーパーでは、食品ロスを防ぐために賞味期限順に商品が並んでいて、期限が切れたものは当然廃棄されます。

その日のうちに飲んだり食べたりするのであれば、一番手前のものを取れば問題ありませんので手前の商品から購入する。たったこれだけで、売れ残って廃棄される食品を減らすことに貢献できるんですよ。

それに前から順番に取ることは、次に買いに来る人に対する親切でもありますね」(さとかん先生)

出典:『まんがとクイズでよくわかる!なるほど「SDGs」』(ワン・パブリッシング刊)
出典:『まんがとクイズでよくわかる!なるほど「SDGs」』(ワン・パブリッシング刊)

また、食品ロスは、コンビニやスーパーだけではなく、家庭でも起こりうる問題です。

「食材を使いきれずに腐らせてしまい、結局廃棄してしまったという経験は、誰でも一度はあるのではないでしょうか?

ですが、買う量を調整したり、冷凍保存をしたり、野菜の皮や茎など食べられる部分は捨てずに料理に使ったりと、工夫次第で、家庭での食品ロスを防ぐことができます。

どうしても捨てなくてはいけない場合でも、『次からはどうしたらいいかな?』と工夫しようと思うことが大切です。子どもといっしょに、どのような方法があるか考えてみることが、SDGsの一歩になるのですから」(さとかん先生)

商品を買うときは生産者のことまで想像する!今日からできるSDGs②

「買い物をするときに、お子さんともう一歩進んでぜひ意識してほしいのが、目の前の商品は誰の手を経てここまで来たのかを想像することです。

たとえば、肌にやさしいとされている天然素材コットン。じつは、農薬や化学肥料がたくさん使われている場合が少なくありません。途上国では、小さな子どもたちが学校に通えず、農薬を体中に浴びながら綿花を育てたり、綿摘み作業をしていることも多いのです。

また、お金の節約のために、できるだけ安いものを買いたい!と思うこともあるかもしれません。ですが、その安さの背景をたどっていくと、自分の子どもと同じくらいの年齢の子どもが、安い賃金で働かされて作っているということも十分あり得るのです。

デザインがかわいい、品質が良い、価格が安いなど、さまざまな理由で商品を選ぶと思いますが、生産者の環境にまで想いを馳せて買い物をすることも、SDGsの目標達成のために必要です」(さとかん先生)

出典:『まんがとクイズでよくわかる!なるほど「SDGs」』(ワン・パブリッシング刊)
出典:『まんがとクイズでよくわかる!なるほど「SDGs」』(ワン・パブリッシング刊)

その際にひとつの目安となるのは、様々な認証マークで、その代表的なものが、生産者に配慮していることを示す『フェアトレード・ラベル』です。これはSDGsに取り組む時に頼りになるものだと言います。

フェアトレードマークとしくみの解説

「フェアトレード・ラベルは、生産者に正当な対価が支払われるといった公平・公正な取引を守っている製品の証です。

一般的な商品よりも値段が高めなので、少しためらってしまうかもしれませんが、フェアトレード商品は、生産者に適正な対価を払っているので、このラベル商品をを購入することで、生産者や労働者の生活が向上します。

たとえば、同じコーヒーを買うにしても、フェアトレードのラベルがついたコーヒーを選ぶというのも、立派なSDGsなんですよ」(さとかん先生)

 

フェアトレードとは? 国際フェアトレード認証のしくみについて/フェアトレード・ラベル・ジャパン

自分にできることをひとつずつ。その一歩が子どもたちの未来を変える

買い物ひとつとってみても、私たちにできることはたくさんあるはず。ですが、あまり無理をすると苦しくなったり、結局続かなくなってしまう、とさとかん先生は続けます。

「まずは、なにかひとつ実行してみませんか。なにをするかは、ぜひ親子で会話をしながら考えてみてください。

たとえば、おやつで食べるチョコレートだけはフェアトレード商品を買おう。お友達へのプレゼントに環境や生産者にやさしいモノやサービスを選ぶ。必要ない包装を断ることもよいですね。

フェアトレードの商品例

自分にできそうなジャンルの中でひとつだけでもいい。その一歩が、大切な子どもたちの未来を変える大きな変化となります。

じつは、日本ほどSDGsのことを子どもたちが知っている国は世界でも珍しいんですよ。学校の授業でも取り入れられていますし、自治体主催のSDGsイベントが各地で開催されています。

ぜひ子どもに教えてもらいながら、親子でSDGsに興味を持ち、取り組んでいきましょう!」(さとかん先生)

 

取材・文/水谷映美 編集/石橋沙織

佐藤 寛(さとう かん)さん

佐藤 寛(さとう かん)さん

佐藤 寛(さとう かん)さん

1981年東京大学文学部卒業。40年以上に渡り開発社会学者としてアジアやアフリカ、ラテンアメリカ、中東諸国を尋ね歩き、研究を続けている。SDGsの伝道師こと、さとかん先生として、学研キッズネットで連載中の『地球防衛隊SDGs』『まんがとクイズでよくわかる!なるほど「SDGs」』(ワン・パブリッシング・刊)の監修にも携わっている。

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