新学期の「自己紹介」はそこまで重要じゃない。自己アピールで大事なことは【伊沢式スクールライフ】
新学期といえば、進級や進学ではじめましてのお友だちや先生との出会いや、「自己紹介」をするシーンが多い季節ですよね。
特に学年が変わり、クラスも変わるこの時期には緊張してドキドキする、わくわくする……など、子どもたちによってそのとらえ方や感じ方はさまざまかもしれません。
この連載では「学校生活」をテーマに、QuizKnockの伊沢さんに、子どもの頃の思い出とともに、いまの子どもたちや保護者に伝えたいメッセージをうかがっていきます。
第1回目は、新学期の通過儀礼とも言える「自己紹介」について。伊沢さんはどのように向き合ってきたのでしょうか。
「自己紹介」は限られた一瞬の場。それだけで君のすべては分からない
じつは自己紹介の記憶が全くありません(笑)。人前でしゃべるのに、そんなに物怖じしないタイプだったので、記憶に残っていないだけかもしれないですね。
学校だとクラスの人数が多いので、名前と好きなものくらいしか話せないじゃないですか。新学期のスタートに行われる『自己紹介』の時間なんて、これから始まる1年間のうちのほんの一瞬でしかない。
『すごく限られた少ない情報の中で、君のことが分かるはずなかろう?』と思うんです。
口調や声から『堂々と話す子だな』『おとなしそうな子だな』といった、その人の空気感や印象くらいは伝わりますけど、分かるのはせいぜいその程度。
『どういう人間なんだろう』『どんな性格なんだろう』という、人間関係を築くうえでもっとも重要なことは自己紹介の時間だけでは分かりませんよね。
それこそ、これからの学校生活でのコミュニケーションを通してだんだんと分かり合っていくものではないでしょうか。
学校生活って、毎日が自己紹介の場なんです。たとえそのときはうまく話せなくても、自分をアピールできる場はいくらでもあとでもたくさんあります。

だからこそ、子どもたちには「あまり気にしなくていいよ」って言いたいですね。名前が言えて、好きなことでも足せたら十分。好きなものに共通点があれば、友だちが声をかけやすくなるかも、ラッキーくらいでいいのです。
失敗してもいい!聞き手のプロになる、笑いを取りに行くチャレンジも楽しもう
そうは言っても、人前に立つだけで緊張してドキドキしてしまうという子もいるかもしれません。
その場合は、自分が何を話すかよりも、お友だちの話をいっぱい聞く時間だ、と思うと、ちょっと楽になるんじゃないかな。自分が喋るのはおまけ、うまくやる必要はないのです。

たとえば、友だちの発表を笑顔でうなずきながら聞いたり、発表が終わったあとに温かい拍手をしたり。
相手のしゃべりやすい空気感をつくることが、自分のしゃべりやすさにつながる。他人に集中したら、あんまり自分のことを考えなくても済みますしね。
逆に、人前で自己表現を楽しめる子は、笑いを取るというチャレンジをするのもいいですよね。ちなみに僕はこのタイプ。小学生の頃はたくさんスベりもしました(笑)。いいんです、どうせたくさんの中のひとり。すぐ忘れられます。
やっぱり、30代になって地方講演などを通じてたくさんの舞台に上がっていても、短い時間で観客をひきつけることは難しい。だから、ウケなくてもいいんです。楽しいことが好きそうだ、と伝わればOK。自己紹介なんですから。

上手くいかなくても、チャレンジした自分をほめる。人間のおもしろみは何種類もあって、短い時間で伝わるものばかりではありません。
ぜひ、時間をかけて自分を知ってもらうことや、相手を知ることを楽しんでください。
取材・文/森下真理 編集/石橋沙織(学研キッズネット) 写真/鈴木謙介 デザイン/曽矢裕子