自ら学ぶ力を育てるアクティブ・ラーニング/知っておきたい教育用語のトリセツ【第3回】
いま教育現場で話題になっているのが、アクティブ・ラーニング。前回とり上げた21世紀型能力をはぐくむために、学校現場でとり入れられている学習方法のひとつです。「知っておきたい教育用語のトリセツ」の第3回目では、その内容について解説します。
自ら学ぶ力を育てるアクティブ・ラーニング
これまでは、授業は黙って聞くもの
これまで日本の学校では、四角い教室に黒板があり、黒板に向かって机が整然と並べられ、机の上には教科書とノートと筆記用具。先生が黒板の前に立って教科書に書いてある内容を説明し、生徒は先生の話を聞きながら黙ってノートをとるというのが定番のスタイルでした。先生に指されれば発言するけれど、授業中は静かに先生の話を聞くものだと言うのは、半ば常識でした。
つまり、受け身の学習だったのです。
これまで日本の社会では、どちらかというと、上司の指示を正確に理解し、正確にこなす能力が求められてきたので、そのような受け身の学習方法でよかったのですが、時代の変化とともに、求められる能力も変わってきました。
グローバル時代を生き残るために必要な力を育てるには
とくにグローバル化やICT化が進んだことで、文化や価値観の違う外国人と接したり、メールや国際電話会議システムなどを使っていっしょに働いたりする機会も増えています。
そうなると、話し合いを前に進めるためには、価値観の違いを認め合いながら互いの考えを出し合い調整していくことが重要になります。
このような人材を育てなくてはという機運が高まり、日本でも教育改革が進められることになりました。そこで、いま教育現場で注目されている教育の手法が、アクティブ・ラーニング。つまり、能動的学習です。
2020年の大学入試改革に対応して小中高でも注目が集まる
アクティブ・ラーニングは、もともと大学の授業で使われている用語ですが、2020年の大学入試改革が決まったことで、小中高でも急速に広がっています。
アクティブ・ラーニングには1つの決まった型があるわけではありません。
実際に社会で起きている問題に対して、生徒たちがグループで協力して解決策を考えて発表するというように、数時間かけて1つの課題に取り組む「問題解決学習」を行う場合もあれば、教科学習のなかで、一部分2人組や3人組をつくって意見交換をする時間をつくるなど、それぞれの先生が工夫します。
小学校・中学校で以前から行われている総合的な学習の時間は、まさにアクティブ・ラーニングの授業です。また理科や社会の授業などでも、たとえば校庭の植物を観察したあと図書室で調べ学習をしたり、近所のスーパーなどを訪問してお店の人に聞いた内容をまとめて発表したりという体験型の授業は多くの学校でやっています。今後はそのような授業が他の教科にも広がっていくということです。
いずれにしても、受け身ではなく積極的に授業に参加することが求められます。
これからは、授業中にどれだけしゃべったかが評価される
そうなれば、授業中は黙って聞いているだけではだめで、いかに意見を言ったかが評価されるようになるかもしれません。
なぜなら、先に書いたように、グローバル化や、ICT技術の急速な進化の影響に加え、少子高齢化や、異常気象による災害の多発など、これまでにない変化が起きているからです。そのような時代に求められるのは、ただ受け身で知識をたくさん詰め込むのではなく、その知識を使って新たな問題を発見し、それを解決する力。また、これまで世の中になかったような新しい価値を創造する力だからです。
アクティブ・ラーニングはそのような力を育てるために、能動的に学ぶ姿勢を育てるための学習方法だといえるでしょう。
アクティブ・ラーニングのポイント
- 先生が一方的に教えるのではなく、生徒自身が能動的に学ぶ学習方法
- 教育改革の一環として、学校教育のなかで急速に取り入れられ始めている。
- これからの時代に必要な課題の発見と解決に向けて、自ら考え、周囲の人と協力しながら新たな価値をつくる能力の育成を目指している。
参照:
関連リンク/知っておきたい教育用語のトリセツ
【第1回】2020年の大学入試制度改革、小中学校にも大影響
【第2回】21世紀型能力は、これからの時代を生き抜くための必須アイテム!?
【第4回】これからは授業を受けるのが宿題になる!?