STEAM教育で、AI(人工知能)が発達した未来に貢献できる人材を育成/知っておきたい教育用語のトリセツ【第9回】
AI(人工知能)が発達すると、今後10年から20年で、日本でも労働人口の約49%は、AIやロボットにとってかわられることになると言われています。そこでいまSTEAM教育が注目されています。「知っておきたい教育用語のトリセツ」第9回目では、その背景と日本で行なわれている内容を解説します。
STEAMとはScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)のそれぞれの単語の頭文字をとったもので、科学と数学を土台として科学技術人材を育成するための総合的な理系教育のこと。STEAMはこれにArts(芸術)を加えたものです。
STEAMとはなにか
AI(人工知能)やロボット技術といった科学技術が急速に進化していく時代になって、それらを使いこなせる新たな人材を育てるための教育に力を入れようという動きがあります。それが、STEM教育です。
STEMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)のそれぞれの単語の頭文字をとった造語です。もともとはアメリカが国家戦略として打ち出したもので、科学技術分野の高度人材の育成に力を入れる動きが盛んになったことで注目されるようになってきました。従来型の教育とは異なり、プログラミングやデータサイエンスなどのハイテク分野に重点が置かれています。最近は技術だけではなくデザインの要素も重要視されるようになり、Arts(芸術)を加えたSTEAMという言葉が使われるようになってきています。
いま日本でSTEAM教育が注目されているわけ
いま日本でSTEAM教育が注目されている背景には、やはり、ICT、ロボット技術、AIなどテクノロジーの進化による急速な社会の変化があります。しかしそれらの開発を行なえるエンジニアや、人の感性に訴える芸術的素養を持つデザイナーは圧倒的に不足しています。
そこで、急激な時代の変化のうねりを前に、いまなんらかの対策をとっておかないと世界のなかでおいていかれるという危機感もあいまって、日本でもSTEAM教育に期待と注目が集まっているというわけです。
科学技術系分野に興味を持つ子どもを増やすための仕掛け
STEAM教育としていま注目されているのは、主にプログラミング教育です。2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されますが、これも前述の流れによるものです。しかし、プログラミング教育だけを行なえばいいというわけではありません。
STEAM教育という言い方はしていませんが、理系離れが言われるなかで、従来から科学技術系分野に興味を持つ子どもを増やすための取り組みはありました。
それが、次世代人材育成事業*1です。前回解説したスーパーサイエンスハイスクール(SSH)もその一つで、ほかにも、数学オリンピックをはじめ理系科目のコンテストを行なう国際科学技術コンテスト、チーム単位で複数の理系科目のコンテストを行なう科学の甲子園、大学が教育プログラムを提供するグローバルサイエンスキャンパス(GSC)、次世代科学者育成プログラム、中高生の科学研究実践活動推進プログラムといった数々の取り組みが行なわれてきました。いずれも、理系分野の裾野を広げ、将来科学技術分野で活躍し、イノベーションを創出する人材を育成することを目的としています。
AIに使われるだけの人間にならないためにSTEAM教育は必須
日本でも10年~20年後に、労働人口の約49%が人工知能やロボット等により代替できるようになる可能性が高いという研究結果もありますが、AIが発達すると、最終的にはそれを使える人間か、使われる人間かどちらかに分かれると言われています。AIに使われるだけの人間にならないためには、ある程度先端の科学技術を理解すると同時に、それらを活用して、変革とイノベーションを起こすために、発想力や自ら考え判断する力も不可欠です。
STEAM教育には、これからの時代を生き抜くための総合的な力をやしなう要素が盛り込まれることが期待されます。
STEAM教育のポイント
- STEAMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)Mathematics(数学)のそれぞれの単語の頭文字をとったもの。
- テクノロジーの進化で起きる社会の変化により、エンジニアやデザイナーの育成が急務。
- 中学生・高校生に向けて、科学技術に興味を持つように、さまざまなプログラムが用意されている。2020年からは小学校でのプログラミング教育が必修となる。
- STEAM教育には、これからの時代を生き抜くための力をやしなう要素が盛り込まれることが期待されている。
*1
国立研究開発法人 科学技術振興機構 次世代人材育成事業http://www.jst.go.jp/cpse/risushien/
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