メニュー閉じる

イベントや実験教室で、もっと科学にふれる/シリーズ 専門家にきく! 体験が科学する心をはぐくむ 板橋区立教育科学館にきく科学館の楽しみかた【第3回】(全4回)

イベントや実験教室で、もっと科学にふれる/シリーズ 専門家にきく! 体験が科学する心をはぐくむ 板橋区立教育科学館にきく科学館の楽しみかた【第3回】(全4回)

動物、植物、星空などの自然、エネルギー、通信などのテクノロジー。子どもは目のまえのことに「どうして?」と疑問をもちます。ネット動画やテレビ番組で得られる情報だけではものたりない……そんな子どもたちの気持ちにこたえてくれるのが科学館です。

実際に見てさわって、体で感じながら科学を体験できる科学館の魅力、そして親子で楽しむためのコツなどを、東京都にある板橋区立教育科学館の持永雅之館長にお聞きした「シリーズ 専門家にきく!体験が科学する心をはぐくむ 板橋区立教育科学館にきく科学館の楽しみかた」の第3回です。(全4回)

■第3回 イベントや実験教室で、もっと科学にふれる

渡邉:板橋区立教育科学館のイベントでは、どんなものに人気がありますか?

持永館長:展示や体験、イベントと、さまざまなバリエーションがありますが、プラネタリウムは人気がありますね。

また、さまざまなテーマで科学教室を行なっていますが、カブトムシが自然のなかにいるような標本づくりをする、ジオラマづくりの体験教室は大人気です。

ロボットプログラミング教室も非常に人気があります。小学校4年生から参加できるので、4月の募集では4年生になった子が一気に応募してくれて、定員の10倍以上の応募がありました。

ロボットプログラミング教室ではレゴ®マインドストームを使い、
作成したプログラムでロボットを動かす

昨年のワークショップでは「スライムを作ろう」が人気でした。
そのワークショップでも、ちょっと工夫をしまして。

スライムは洗濯のりとホウ砂で作るんですね。洗濯のりにホウ砂水溶液(もしくはホウ砂を溶かした液)を容器から3回プッシュして入れるとスライムができるように、量や濃度などを調整しておいたのですが、そのホウ砂水溶液(もしくはホウ砂を溶かした液)を、色ちがいで3色用意したんです。
そうすると、3つの色の組み合わせによってさまざまな色のスライムができるので、子どもたちが山のように来てくれました(笑)

さまざまな色のスライム

渡邉物質の変化と色の変化、両方を体験できるんですね。それはおもしろそうです。
科学教室のカリキュラムを作るまでにはどんな工程があるのでしょうか。

持永:まず、なにをテーマに教室をやるのかを検討するところから始まります。
板橋区立教育科学館にはさまざまな科学的知識をもった科学指導員が集まっているので、いろいろな案を出していきます。
そして、テーマが固まったら、そこにある科学的な要素をどういうふうに子どもに伝えればいいのかを考えます。

渡邉:たとえばカブトムシのジオラマを作る教室であれば、どんな科学的要素があるのですか?

国産カブトムシのジオラマ標本

持永館長:そうですね、体の構造とか、オスとメスのちがいとか、どういう生態なのかとか、木のところでなにをしているのか。オスとオスの組み合わせだと闘いの場面になるけれど、オスとメスを配置するのであればまた違う場面になる。そういったことを反映してプログラムを作っていきます。ただ標本を作るだけだと、工作教室になってしまうんです。

そして、そういった科学的要素が子どもたちにどうすればよりよく伝わるのかを考えて、カリキュラムを組んでいきます。

渡邉:それはトークで入れたり、説明書をつけたりして伝えるのですか?

持永館長:そうです。授業のような型式になるので、どういう画像や映像を見せるか、どういう話をどのタイミングですると子どもたちが興味をもつのか、そこにはかなり工夫を凝らしています。

たとえば、事前準備に鍋で煮る工程があれば、科学指導員に魔女のかっこうをさせて写真をとったりとか(笑)、子どもたちが「えっ」って思うような要素を入れたりもします。そんなふうに、まじめな要素とちょっと楽しめる要素を入れながら作り込んでいきます。

渡邉:伝えるところにも、さまざまな工夫が込められているんですね。

持永館長科学指導員の仕事のメインは「伝える」という部分ですからね。

科学指導員の仕事のメインは「伝える」ことだと話す持永館長

持永館長かっこよさも大事な要素です。以前、「レアメタルの結晶を作ろう」というプログラムで、ビスマスという物質の結晶を作ったんです。これがものすごい人気でした。どうしてこんな結晶ができるのかを考えていくとけっこう難しい内容なのですが、まずは見た目がきれいでかっこいいということで興味を引くんですね。見た目から入っても、それで興味をもってくれればいいと思うんです。見た目がきっかけで「おっ」と思ってもらえれば、こちらのもくろみが成功したということなんですよね。

さまざまな色に輝くビスマスの結晶

渡邉:ほかに大切にしている要素はありますか?

持永館長楽しさですね。たとえば「ティラノサウルスのひみつをさぐろう」という教室では歯の化石のレプリカを作るんですが、当館では、科学教室で作ったものをなるべく持ち帰れるようにしています。この場所で実験や製作を体験して終わりではなくて、体験したものを持って帰れば楽しいですし、子どもが「あのとき、これを作った」と覚えていてくれるので。

渡邉:成果物があれば、作ったときのプロセスも思い出しやすくなるので、家族で体験したことを共有できますし、会話もできますね。
 

科学的要素を盛り込んで、子どもたちに適した方法で伝え、楽しさと成果物をおみやげとしてもち帰ってもらう。教室やワークショップには、科学館ならではの取り組みがたくさん盛り込まれていました。最終回となる次回は、親子で科学館をめいっぱい楽しむためのコツを聞きます。※紹介されている各教室の募集は終了しました。

関連記事

第1回 科学館ってどんなところ?
第2回 科学館展示の舞台裏
第4回 親子で科学館を120%楽しむ方法とは

板橋区立教育科学館

科学に関する知識の普及・啓発を推進し青少年の健やかな成長をはかること、科学情報・教育情報を集めて学校教育・社会教育の充実に貢献することを目的に設立された東京都板橋区立の科学館。株式会社学研プラスが指定管理者となり運営している。2018年9月に開館30周年を迎えました。

「板橋区立教育科学館」Webサイトへ

渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

株式会社コドモット代表取締役社長。
NTT在籍時代の2001年、子ども向けポータルサイト「キッズgoo」を立ち上げ、同サイトでデジタルコンテンツグランプリ・エデュテイメント賞受賞。独立後は小学生向けのコンテンツを中心に、企業の子ども向けWebサイトや公共団体の子ども向けツールなどの企画制作を数多く手がける。一男一女の母。

PAGETOP