進化する図鑑を親子で楽しむために/シリーズ 専門家にきく!「知識への扉をひらく 図鑑のひみつ」図鑑編集室インタビュー【最終回】(全4回)
子どもたちが大好きな恐竜や虫、宇宙などについて総合的に学べる「子ども向け図鑑」はどうやってつくられているのでしょうか。写真やイラストで本物をリアルに伝える工夫や、最新情報の反映、映像やARとの連携など、進化する子ども向け図鑑の編さんについて、「学研の図鑑LIVE 恐竜」を担当した、株式会社学研プラス 小中学生事業部 図鑑・辞典編集室の松下清シニア・プロデューサーにお話をうかがったインタビューの最終回(全4回)です。
インタビュアー 梅本真由美(サイエンスライター)
第4回 進化する図鑑を親子で楽しむために
―わが子にあった図鑑を選ぶための具体的なポイントを教えてください。
親子でいっしょに本屋さんへ行って、お子さんが気に入った図鑑を選ぶのがいいと思います。とくにお母さんは、図鑑は同じシリーズでそろえたい願望があるんですよ。棚にきれいに並べたいんですよね。でもそれは大人の都合です。子どもの本ですから、子どもが気に入って「欲しい」という図鑑を買ってあげてください。同じシリーズが棚に並ばなくてもいいということは、ぜひお伝えしたいです。
―植物と動物とでちがう種類の図鑑でも、恐竜の図鑑が棚に1冊だけでなく何冊並んでいてもいいんですね。
そうです。子どもはなにを好きになるかわからない。わたしも子どものころ、家に百科事典セットが置いてあったので、ひまなときにパラパラ見て、生き物を好きになったり、植物に興味をもったりして世界が広がっていったように思います。
―近ごろは百科事典セットを置いている家が少なくなりましたが、子どもが興味や知識を広げていくために保護者はどうすればいいでしょうか。
子どもは親の背中を見て育ちますから、保護者の行動が子どもの興味や知識のきっかけになります。保護者が本を読めば子どもも本を読む。そこでなにかを好きになったり興味をもったりして世界が広がっていくと思います。図鑑の場合も同様です。
―なるほど。保護者が図鑑を読むというのがポイントなのですね。
はい、保護者にぜひ図鑑を読んでいただきたいです。生物の進化系統図などを見ると、保護者が子どものころとちがっていておもしろいですよ。たとえば、鳥はいま恐竜の一部ということになっています。ちなみに恐竜は、は虫類かつ脚が真下に伸びるというのが定義です。各社の図鑑とも系統図や定義をきちんと記載していますので、テレビの近くに図鑑をおいて、興味をもったらその場で調べてみてください。それだけでも家庭のなかでかなり活用していただけると思います。
―保護者にとっても勉強になりますね。さて、いまはネットにさまざまな情報があふれています。ネットで情報を検索することと、図鑑で調べることのちがいを教えてください。
ネットと図鑑ではそもそもの用途にちがいがあります。ネット検索では、電子辞書のようにピンポイントで知りたいものが調べられます。恐竜のセントロサウルスのことを知りたければ、ネットで「セントロサウルス」と検索すれば情報が出てきます。
ただ、子ども向け図鑑の読者は、一覧性を求めて図鑑を手にすることが圧倒的に多い。とくに図鑑をはじめて見るお子さんは、絵本のように見て、こんなのがいるんだ、これかっこいいとパラパラ見ること自体が楽しいんです。まずは図鑑で興味をもち、そこから調べるという順番で興味や知識を深めていけばいいと思います。興味をもてば文を読みます。漢字にはすべてふりがながあるので図鑑で漢字をおぼえるお子さんも多くいます。
―図鑑とICTを連動させた新しいスタイルがあればご紹介ください。
学研の図鑑LIVEシリーズには、生き物たちが生きる姿を伝える映像を収めたDVDがついています。また、無料アプリを利用すると、スマホやタブレットを図鑑にかざすだけで動物や昆虫の動くようすや、恐竜などの3DAR※が見られます。とくに恐竜は、生きている個体を見ることができませんから、実際の体験のかわりとして3DARを観察できるメリットがあります。
―おもしろいですね。AR、VR(バーチャルリアリティ、仮想現実)などの最新技術を導入できるようになって、これから図鑑はどう変わっていくのでしょうか。
図鑑そのものはあまり変わらないと思っています。子どもたちは好きなものが、たくさん、くわしく見られるという図鑑の本質が好きなので、今後、AR、VRなどの技術を導入することになったとしても、あくまで「オマケ」の部分ではないでしょうか。
子どものお楽しみにこたえるため、新しくて正しい情報、子どもが喜ぶ素材を取り入れた、「おいしくて楽しいお菓子」として、これからも図鑑はつくり続けられていくだろうと思っています。
―とても刺激になるお話でした。子どものころ図鑑にはまって知ったことや楽しんだことは、きっとなにかの形で子どものなかに残るのだろうと感じました。松下さん、どうもありがとうございました。
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