冬の始まりが湿疹を招く/秋 -季節の変わり目‐ になぜ湿疹が悪化するのか
8月の猛暑中にあった秋の日の直後、一気に乾燥肌の患者さんが皮膚科にやってきました。湿疹です。患者さんの湿疹が増える理由には、汗や温度ではなく湿度が関係しています。
秋の湿疹のお話/冬の始まりが湿疹を招く
今回は秋の湿疹のお話です。さて、ここ数カ月の日本の気象を表すとどうなるでしょうか? 皮膚科の立場で言えば、「慌ただしかった」とのひと言です。
梅雨は非常に短く、その後一気に熱波が到来しました。お盆前後には台風が日本を何度も襲い、そのあとは8月なのにもう秋の天気がやってきましたね。その後また少し暑さが戻ってきたようですが、そんなかけ足の季節に足下をすくわれ、秋から冬にかけての湿疹の発生も例年よりもはるかに早い印象を受けます。
夏のさなかに、一瞬だけ秋がやってきた
先程、8月なのに秋の天気と書きました。ほんの数日のできごとですが、8月の暑い時期に秋が来ていたのです。気がついていました? 気象庁のデータをのぞいてみると・・・ありました。8月中旬のお盆を過ぎてからの数日間、湿度は最低29%、気温もだいぶ下がった日が何日かあります。その日だけは、「秋」だったんですね。
なぜ皮膚科医がそんなお話をするかというと、その直後に一気に乾燥肌の患者さんがやってきたからなんです。
前回お話をしたように夏の湿疹は汗で悪化します。つまり、温度が関係してくるのですが、乾燥肌の患者さんがやってきたのは気温があまり上がらず、汗も比較的かくことのない「秋の季節」の直後です。となると、こうした患者さんの湿疹が増える背景には、汗や温度ではなく湿度が関係しているのではないかという話になるのです。
湿度と湿疹の切っても切れない関係
もともと秋は湿疹、特に乾燥性湿疹やアトピー性皮膚炎が悪化してくる季節として認識されてきました。その悪化状況をくわしく見ていくと、だいたいの傾向がわかってきます。
それは日中の湿度が50%を切ってくると、乾燥からくる湿疹が一気に出現し、悪化してくるということです。
当然といえば当然のことですが、空気の乾燥具合に皮膚の乾燥状況は影響を受けます。したがって湿度の低下は湿疹の拡大・悪化を招くということは容易に想像がつくのではないでしょうか。ちょうどその境目が湿度50%くらいということのようです。完全に実証はされていませんが、少なくとも東京ではそのような傾向が見られます。
対策は水分補給?
ではどのようにすれば良いのでしょうか? 加湿器・・・を準備するにはまだ暑いですね。シャワーで皮膚に水分を補給してもすぐに乾燥してしまいますからあまり意味はありません。対策として最も現実的なものは保湿剤の使用だといえます。
その保湿剤ですが、環境の変化に合わせて少しずつ変えていく必要があります。夏のあせもには保湿力よりも塗りやすさを重視した乳液や化粧水といったサラサラした製品をおすすめしていましたが、乾燥する季節となるとそうもいきません。クリームのような少しベッタリとした、保湿力が高めの保湿剤に切り替えることで皮膚の表面を保水し、皮膚からの水分の蒸発を抑える必要があるのです。とくに、少しカサついている、少し粉を吹いているというレベルの乾燥肌には保湿剤で十分に効果が期待できます。塗り心地はよいとはいえませんが、そこは少しがまんしてもらいましょう。
子どもの皮膚の乾燥が気になる方は、まず保湿剤の種類を切り替えてみても良いかもしれませんね。
小春日和に要注意
前回と今回のお話をまとめてみましょう。秋に湿疹が悪くなる原因は、汗からの刺激により湿疹ができてしまうこと、乾燥により皮膚が乾いてしまい湿疹ができることという2つが挙げられます。そしてその2つの要因はそれぞれ、温度、湿度が関係します。
もう1つ秋の湿疹が悪くなる要因があります。それは秋の天候は1日単位で変わりやすく、しかもその変化の幅が大きいということ。昨日大汗をかいたかと思えば今日は皮膚の乾燥があるというような極端な変化が秋には見られるため、皮膚の環境も日々変化にさらされてしまうのです。
したがって、秋のスキンケアで最も重要なことは情報収集だったりするんですね。今日の気温はどうなのか、湿度はどう変化するのか、その後の天候の移り変わりはどうか、今後の行動予定は何か。そういった情報を総合して、シャワーなどのスキンケアをどうするか、どのようなタイプの保湿剤を使用するのか、何を着て出かけるのかといった選定をしなければいけません。そしてそれを間違えると、一気に湿疹が広がってしまう。こんな綱渡りをしながら皮膚をケアしていかなければいけないのです。
だから、秋のお肌のケアって、難しいのです・・・。