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2020年の大学入試制度改革、小中学校にも大影響/知っておきたい教育用語のトリセツ【第1回】

2020年の大学入試制度改革、小中学校にも大影響/知っておきたい教育用語のトリセツ【第1回】

子どもたちはいま学校で、新しい教育のしくみに日々直面しています。

このコーナー『知っておきたい教育用語のトリセツ』では親世代が体験してこなかった新しいしくみや用語の「トリセツ」をわかりやすく解説していきます。

大学入試制度改革とは
教育改革の一環として、2020年度から、従来のセンター入試に代わり、新テスト「大学入学希望者学力評価テスト(仮)」が導入されることにともなう改革。この影響は高校にとどまらず、小学校・中学校の教育も大きく変わろうとしており、戦後最大の教育改革といわれています。

 

2020年度から実施、センター試験は廃止に

今大きく日本の教育が変わろうとしていることを知っていますか? その中でも注目を集めているのが、大学入試制度改革です。具体的には、2019年に従来の大学入試センター試験が廃止され、2020年から「大学入学希望者学力評価テスト(仮)」が導入されることが決まっています

内容はまだ確定していませんが、従来の1点刻みのマークシート方式から、記述式を組み合わせたものに変わるとされています。

国の試験は「思考力・判断力・表現力」を評価する試験へ

これまで、「知識をどれだけ身につけているか」を測るテスト一本やりであったのに対して、今後は、自分で課題を見つけ、自ら学び、主体的に判断・行動し、よりよく問題を解決する「課題設定・解決型の学力」=新しい学力を測るテストに変えようとしているのです。

2015年12月に文科省は、記述問題の例を公開しました。国語はグラフや新聞記事などを読んで内容を理解した上で解答を書いたり、理由を説明したりする問題。また、選択肢に複数の正解の組み合わせがある問題も示されました。他の教科も同様に、与えられた情報からデータを集めたり傾向を把握したりする能力や、仮説を立てて検証する能力を評価するねらいがあるといわれています。

それに加えて、調査書(内申書)や小論文、グループディスカッションや面接などによる多角的な評価の導入。英語では、「話す」「書く」「聞く」「読む」の4技能を重視する方針で、外部検定の活用も検討されています。

どうして大学入試制度を変えるの?

なぜそのような改革が行なわれようとしているのでしょうか?

背景にあるのが、今後の社会で求められる能力の変化と、それに合わせた世界的な教育改革の流れです。

これまでの社会では、どれだけ知識を持っているかが重視されてきました。しかし、知識をたくわえる役割はコンピュータに任せられるようになりました。しかも、生産年齢人口の急減、グローバル化人工知能の発達など世の中の変化は予想以上に速くなっています。

そのような変化に対応していくためには、自ら課題を見つけ、知識を使って考え、周囲と協力して解決していく能力が求められています。しかし、現在の学校教育では、そうした変化に対応できる能力を育成できているとはいえません。

その大きな要因として、大学入試があげられています。つまり、たとえ高校で新しい時代に対応できるよう、ものごとを多角的に考える力や周囲と協力して課題を解決する力をつけるような教育を行なおうとしても、大学入試がどれだけ知識を習得したかを測るものである限り、高校はそれに対応した学習をしなければならないからです。

そこで、新しい時代にふさわしい教育の実現のために「大学教育・高等教育・大学入試制度」を一体的に改革しようという流れになっているのです(これを高大接続といいます)。

小学校・中学校への影響は?

大学入試というと、小さいお子さんをお持ちの保護者の方には、まだピンとこないかもしれません。2020年の「大学入学希望者学力評価テスト(仮)」を最初に受けるのはいまの中学2年生(2016年10月現在)ですので、少し遠いことのように感じるのも無理のないことです。

けれど、関係ないといってもいられません。というのも、すでに小中高の教育現場では新しい学力の育成に向けた模索が始まっているからです。

タブレット型端末を使って自主的に調べた結果を持ちよったり、一つのテーマについていろいろな立場で意見をだしあう授業も増えています。また、一部の私立中高の入試では、決まった正解のある問題ではなく、テーマや情報だけをもとに自分なりの答えを導き出す思考力入試を実施するところもでてきました。

大学入試制度が変われば高校が変わり(もちろん受け入れる側の大学も変わります)、高校が変われば中学校も小学校も変わります。つまり大学入試制度改革は、中2以下の子どもたちみんなに影響があるのです。

お子さんの学校で生徒が主役になるような授業が増えていたら、それは教育が変わり始めたサインです。

大学入試制度改革のポイント

  • 「自分で課題を見つけ、自ら学び、主体的に判断・行動し、よりよく問題を解決する能力」が求められる。
  • 知識の有無を問うマークシート方式から、記述式を組み合わせたものに変更。
  • 「大学教育・高等教育・大学入試制度」の一体的な改革を行ない、新しい時代にふさわしい教育を実現する。その影響は、小学校・中学校にも及ぶ。

 

関連

高大接続・大学入試制度改革についての文部科学省報告
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/033/toushin/1369233.htm
文部科学省 高大接続システム改革会議「最終報告」の公表について

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中曽根陽子

中曽根陽子

中曽根陽子

教育ジャーナリスト

教育雑誌から経済誌、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。子育て中のママたちの絶大な人気を誇るロングセラー『あそび場シリーズ』の仕掛人でもある。 “お母さんと子ども達の笑顔のために”をコンセプトに数多くの本をプロデュース。近著に『1歩先行く中学受験成功したいなら「失敗力」を育てなさい』『後悔しない中学受験』(共に晶文社)『子どもがバケる学校を探せ』(ダイヤモンド社)などがある。教育現場への豊富な取材や海外の教育視察を元に、講演活動やワークショップもおこなっており、母親自身が新しい時代をデザ インする力を育てる学びの場「Mother Quest 」も主宰している。公式サイトhttp://www.waiwainet.com/

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