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SSH(スーパーサイエンスハイスクール)/知っておきたい教育用語のトリセツ【第8回】

SSH(スーパーサイエンスハイスクール)/知っておきたい教育用語のトリセツ【第8回】

人工知能やロボットなど科学技術が急速に進化するなか、日本の発展のためには次世代をになう科学技術系人材の育成は欠かせません。そこで「知っておきたい教育用語のトリセツ」第8回目では、先進的な理数教育を行なうSSH(スーパーサイエンスハイスクール)について解説します。

SSH(スーパーサイエンスハイスクール)とは
文部科学省が将来の国際的な科学技術関係人材を育成するために、先進的な理科・数学教育を重点的に行なう高校を指定する制度のこと。

将来の国際的に活躍する科学技術関係人材を育成

SSH(スーパーサイエンスハイスクール)の制度は、将来の国際的な科学技術関係人材を育成するために、平成14年度に開始されました。

SSHに指定される期間は5年間で、支援額は年間で900万円から1600万円。平成27年度では203校が指定されています。*1
(なお、平成29年度 SSH新規指定校として77校、科学技術人材育成重点枠として8校が内定しました。)

大学や企業とも連携して高度な教育を実施

SSH指定校では、先進的な理数教育を実施するとともに、大学との共同研究や、国際性をはぐくむためのさまざまな取り組みが行なわれています。

主な特徴は次のとおりです。

  • 学習指導要領の枠を超え、理数を重視した教育課程が編成できる。
  • 主体的・協働的な学び(いわゆるアクティブ・ラーニング)を重視する。
  • 研究者の講義、フィールドワークなどを行なって、理系科目へ興味関心を高める。
  • 国際的な活動(海外生徒との交流、国際学会での発表等)を重視する。
  • 大学や企業と連携することで、高度な教育を実施する。

生徒の科学技術への興味や関心は向上

この取り組みで指定校の生徒たちはどのように変化したのでしょうか。

先にSSHの指定を受けた学校を対象に行なった意識調査では、科学技術に関する興味・関心・意欲が向上したと回答した生徒は 66%。未知の事がらへの興味が向上したと回答した生徒は 72%。自分から取り組む姿勢が向上したと回答した生徒は62%。真実を探って明らかにしたい気持ちが向上したと回答した生徒は64%ということで、生徒の科学技術への興味・関心や取り組む姿勢は高まっているという結果がでています。*2

また、SSH卒業生の8割近くが大学では理系の学部を専攻。また、大学院への進学率は、大学生全体の約4倍、理系の大学生の約2倍と、進路に対する効果も出ています。

海外でも入賞するなど成果を出す

では、具体的にはどのような取り組みが行なわれているのでしょうか。

たとえば、神奈川県の横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校では、「サイエンスリテラシー」という教科を設定し、次の4つのステップで研究を実施しています。

■STEP1―研究基礎(1年次必修) 科学的なものの見方、実験の基礎を学ぶ
■STEP2―先端科学実験(1年次必修) 大学や企業の科学技術顧問の指導による先端科学5分野の実験
■STEP3―課題研究ゼミ(2年次必修) 各自が設定した先端科学のテーマに関して、大学研究室と連携を取りながら研究
■STEP4―研究発表(2年次必修 3年次選択) ポスターセッション・校内研究発表会・優秀研究発表会を行なうなど、さらに高いレベルでの研究サイクルの実践のほか、大学等との連携による、探究活動を実施

この学校は、英語での科学プレゼンテーション力の向上にも力を入れていて、平成24年度にはアルゼンチンで行なわれた「国際地学オリンピック」で金メダルを受賞、シンガポール国際数学チャレンジでは代表チームが入賞するなど、個人やグループで優秀な成績をおさめています。

全国の科学技術人材育成・理系教育の拠点に

また各校が、生徒が科学に関する課題を設定し、観察・実験などを通して研究を行なう「課題研究」を、大学・企業などの支援を受けながら行なっていて、その成果は毎年「生徒研究発表大会」で発表されます。*3

このように、SSHの制度は一定の成果があがっていて、全国の科学技術人材育成の拠点、理科・数学への関心を喚起する拠点として今後も引き続き充実が図られるようです。

SSHのポイント

  • 将来の国際的な科学技術関係人材を育成するために、平成14年度に開始された制度。
  • 先進的な理数教育を実施するとともに、大学との共同研究や、国際性をはぐくむためのさまざまな取り組みが行なわれている。
  • 指定を受けた学校では、科学技術に関する興味・関心・意欲が向上。卒業生の8割近くが大学では理系の学部を専攻。大学院への進学率は、大学生全体の約4倍、理系の大学生の約2倍と一定の成果がでている。

SSH についての詳細については、国立研究開発法人科学技術振興機構のサイトをご覧ください。
*1
SSH指定校の一覧
*2
【平成25年度SSH意識調査】[国立研究開発法人科学技術振興機構]
*3
SSH成果と事例

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中曽根陽子

中曽根陽子

中曽根陽子

教育ジャーナリスト

教育雑誌から経済誌、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。子育て中のママたちの絶大な人気を誇るロングセラー『あそび場シリーズ』の仕掛人でもある。 “お母さんと子ども達の笑顔のために”をコンセプトに数多くの本をプロデュース。近著に『1歩先行く中学受験成功したいなら「失敗力」を育てなさい』『後悔しない中学受験』(共に晶文社)『子どもがバケる学校を探せ』(ダイヤモンド社)などがある。教育現場への豊富な取材や海外の教育視察を元に、講演活動やワークショップもおこなっており、母親自身が新しい時代をデザ インする力を育てる学びの場「Mother Quest 」も主宰している。公式サイトhttp://www.waiwainet.com/

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