【特集】STOP 小学生の視力低下② タブレット・スマホとの上手なつきあい方
小中学生に一人一台コンピューターが配布され、またコロナ禍でオンライン授業が増えたことにより、パソコンやタブレット、スマートフォンの画面を見る機会が増えました。
勉強はしてほしい、でも視力低下は防ぎたい。そんな保護者の不安を解消するため、タブレットやスマートフォンを使用する際の注意点をみさき眼科クリニックの石岡みさき先生に教えてもらいました。
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コロナ禍で子どもの近視が進んでいる!?
「コロナになって以来、子どもの近視が進んでいると感じます。未就学児でメガネの処方をするケースが非常に増えているんです」と語る石岡先生。その理由には、近くのものを見る機会が増えたこと、そして外で遊ぶ機会が減ったことが挙げられるそうです。
「近視が進む原因として、
・近くを見る時間が長い
・太陽光を浴びない
この2点が大きいと言われています。コロナ禍で、オンライン授業をする学校が増え、画面だけを長時間見続けるようになったこと、そして感染予防のために、以前よりも外に出なくなったことが、子どもたちの近視が進んだ要因だと考えられます」(石岡先生)
確かに、学校の教室であれば、黒板と手元のノートやタブレットを交互に見たり、発表する友達に視線を合わせたりと、見る対象の距離が変わります。ですが、自宅で学習をしている場合は、ずっと手元を見続けているため、近視進行につながるのですね。
視力を低下させないタブレット・スマホの使い方
とはいえ、タブレット学習は勉強を進めるうえで欠かせません。できるだけ視力を低下させないような使用方法を教えてください。
「1日の推奨使用時間というのは、残念ながらデータもでていませんし、使用用途も違うでしょうから、ハッキリとお伝えすることが難しいです。ただ、30分程度画面を見続けたら、少し視線を外して目を休ませる。このことが視力低下を防ぐために有効です。
ずっと同じ距離の対象を見ていると、目が疲れます。子どもはピントを合わせる能力がすごく強いので、大人のような眼精疲労はあまりないのですが、近視の進行を防ぐという意味では、定期的に違う距離のものを見る、つまり遠くを見ることは大切です」(石岡先生)
では、画面との距離や姿勢などはどうでしょうか?
「目と画面との距離は、30cmを目安としてください。これは、学童でも指導されている距離です。よく、寝転がったりうつ伏せで画面を見たり、横向きに画面を見たりする人がいますが、左右の目と画面の距離に偏りが出ると、片目だけ近視になる原因になります。画面との距離も近くなりがちですので、やはり椅子に座って正しい姿勢で画面を見ることをおすすめします」(石岡先生)
部屋は明るいほうが良いでしょうか?
「手元が見えないほど暗いのも問題ですが、あまり明るすぎても目が疲れやすくなります。一般的には200ルクス以上あれば大丈夫などと言われていますが、そこまで明るさに神経質にならなくても良いでしょう。
ただし、部屋の明るさと画面の明るさに差がありすぎると目が疲れるので、その点は少し意識してみてください」(石岡先生)
タブレットやスマホが悪ではない。上手に付き合うことで視力低下は防げる
よく「ゲームばかりしていると、目が悪くなるよ」などと子どもに言ってしまいがちですが、問題は距離であって内容ではないと石岡先生。
「そもそも、タブレットやスマートフォンだけが悪ではありません。もちろん、ブルーライトの問題などはありますが、近視の進行の原因は、対象物との距離です。教科書を読んでいても、読書をしていても、ゲームをしていても、画面との距離が近すぎては、近視が進んでしまいます。
ただし、『近くを見ないようにしましょう』と言ってしまうと、勉強をしなくてもいいと捉えるお子さんもいると思うので、『余分な近くを見る作業はやめようね』と伝えてみてください。必要な作業は仕方がないので、距離に気をつける。必要ではない作業は少し控える。いずれの場合も、目と対象物の距離を30cm保つことは、必ず意識してくださいね」(石岡先生)
近視進行の原因を知り、使い方に気をつければ視力低下も怖くなさそうです。適度に視線を外すこと、画面との距離を30cm以上保つことを意識して、タブレットやスマートフォンと上手に付き合っていきましょう。
(取材・文 水谷映美)