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【知らないとマズイ!自転車の心得③】自転車事故で高額賠償!? 子どもの「加害リスク」に備える保険の必要性

【知らないとマズイ!自転車の心得③】自転車事故で高額賠償!? 子どもの「加害リスク」に備える保険の必要性

「保護者としては自分の子どもを事故から守るという意識が先に立ちますが、自転車保険の加入で意識したいのは、どちらかというと加害者になるリスクです」


そう語るのは、自転車の安全利用促進委員会の遠藤まさ子さん。子どもの自転車保険加入が必要な理由とは? 前回に続き、お話を伺いました。

mapo_japan/Shutterstock


「知らないとマズイ自転車の心得②」はこちら 

自転車保険に入る意義は「加害リスク」への保障

「2013年に、自転車事故の裁判で、9,521万円の賠償命令が出ました。加害者は小学校5年生。マウンテンバイクで坂道を下るときに、スピードを出している状態で62歳の女性にぶつかり、相手が意識不明の寝たきり状態になってしまったのです。 

 

当時、賠償金は監督保護責任者である保護者が支払うという判決が出たため、大きなニュースになりましたが、ほかにも5,000万円や3,000万円といった非常に高額な賠償命令が出ています。これらは決して珍しいことではありません」(遠藤さん) 

Anton27/Shutterstock

最近は、自転車事故の判例も積み上がり、クルマと自転車がぶつかったときの過失割合についても変化が。 クルマではなく、自転車が第1当事者(※)、いわゆる加害者に判定されるケースも少なくないといいます。 

 

※最初に交通事故に関与した車両等の運転者又は歩行者のうち、当該交通事故における過失が重い者をいい、また過失が同程度の場合には人身損傷程度が軽い者を指す 

 

「たとえばクルマが右折しようとしたときに、信号無視の自転車が突っ込んできたという事例では、過失割合が自転車75%、クルマ25%という判決も出ています。 

 

相手がケガをしてしまった場合は、自分の治療費や自転車の修理代以外に、治療費などの負担も増えますよね。加えてクルマの修理費も必要となると、びっくりするような金額になってしまうこともあります。 

 

お住いの自治体で義務化になっているかどうかに関わらず、自転車保険は加入しておいた方が安心できると思います」 (遠藤さん) 

自転車事故で「過失割合」が多いのは中高生

国土交通省の「自転車事故の損害賠償に係る現状について」の資料によると、自転車事故の第1当事者(過失の割合が重い者)の比率は、16~19歳が最も多く、19歳以下が約38%を占めているのがわかります。 

 

「学年でいうと中高生に当たる時期に事故が多いのは、自ら運転する交通手段が自転車しかないという背景があります。中高生になると、自転車に乗る頻度が高いのもそうですが、小学校のときよりも行動範囲がぐっと広がりますし、走る距離も長くなります。 

 

いつもと違う道を通ったりする機会も増えてくるのに、交通ルールの勉強が万全でない状態で自転車を運転する。そう考えるとリスクが高まるのは当然のこと。実際に、一時停止などの標識や、信号機の下についている、右折の矢印信号の意味がわからない子どもたちって意外と多いんですよ。 

最近は直進車と右折車との事故を減らす目的で、「青信号」の無い矢印式の信号が増えている。

教わる機会がないからわからないのはもちろん、大人自身も、クルマを運転するときであれば一時停止を守るのに、自転車だと守らないという方もいます。そのような姿を見て子どもたちは育っているわけですから、自転車事故は子どもたちだけの問題ではないという点も、改めて考える必要があると思います」(遠藤さん) 

賠償金だけじゃない「トラブル」に対応する保険サービスも

自転車保険は、単に加入しておけばいいというわけではありません。事故が起きたときに警察が作成する「実況見分調書」がない場合は、保険金がおりないケースもあるので注意が必要です。 

 

「私有地での物損事故の場合、実況見分調書は作成されませんが、警察に連絡したという記録が残ります。 お子さんには、もし自転車事故を起こしてしまったら、安全を確保したうえで、110番通報する必要があることを伝えておきましょう」(遠藤さん) 

CrispyPork/Shutterstock

軽い事故の場合、そのほどんどは不起訴になることから、刑事裁判が行われず示談によって相手と交渉をするケースが多いと遠藤さん。一般的に、自転車事故の過失割合については、過去の判例をもとに保険会社が決めますが、なかには裁判によって争われるケースもあると指摘します。 

 

「少しかすり傷を負っただけでも口論やトラブルに発展し、民事裁判を起こされる可能性もあるのが怖いところ。実際に、事故の後遺症が原因で、仕事を辞めたという理由から、その分の生涯賃金を加味した賠償金を請求されてしまうケースも。 

 

今どのような保険が必要ですかと聞かれたら、示談サービスか、あるいは専門家や弁護士などを紹介してくれるサービス。賠償責任の交渉は、素人だとなかなか難しいもの。言いがかりをつけられて、高額な賠償金を請求されるなど、最悪のトラブルを防ぐために、その道のプロにつながることはとても大切です」(遠藤さん) 

加入中の保険で“まかなえない部分”に目を向けよう

遠藤さんによると、自転車保険の基本的な選び方のポイントは、主に2つ。ひとつは、加害事故を想定して保障金額を考えること。もうひとつは、今加入している保険でまかなえない部分を押さえておくことだと続けます。 

 

「皆さん掛け捨ても含めて、何かしら自分の病気やケガに対する保険には加入されている方がほとんどではないでしょうか。いわゆる医療保険には、自転車事故等の相手に対する保障をまかなう『個人賠償責任保険』というものは含まれていません。だからこそ、自転車事故の加害者になったケースの保障が必要になってくるのです。 

 

Toa55/Shutterstock

ちなみに、自動車保険や火災保険に加入している場合は、特約として、自転車保険と同じ内容をカバーする保障をつけることが可能なケースもあるんですよ。学校の保険に含まれているケースもあるので、まずは、今加入している保険の内容を見直してみる。加入中の保険で“たりない部分を補う”という視点で選ぶのがポイントです」(遠藤さん) 

 

自転車事故は、誰がいつ起こすか、いつ事故にあってしまうかわかりません。交通ルールを守るのはもちろん、万が一の備えとしても、子どもや家族が安心できる自転車保険の加入を検討したいですね。 

 

 

取材・文/石橋沙織 

【知らないとマズイ自転車の心得①】はこちら

【知らないとマズイ自転車の心得②】はこちら

遠藤まさ子さん

遠藤まさ子さん

遠藤まさ子さん

自転車ジャーナリスト。自転車業界新聞の記者や自転車専門誌の編集などを経てフリーランスへ転向。自転車の中でも子ども乗せ自転車、幼児車、電動アシスト自転車が得意。各種メディアで活躍するほか、自転車事故防止を啓発する講演会なども精力的に行っている。 

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