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探究学習のプロ、エイスクール・いわたく代表に聞く『子どもが熱中する自由研究のテーマ』の決め方

探究学習のプロ、エイスクール・いわたく代表に聞く『子どもが熱中する自由研究のテーマ』の決め方

子どもたちにとって待ちに待った楽しい「夏休み」とともにやってくる「自由研究のテーマ」を何にするか問題——。子どもに主体的に取り組んでもらいたい一方で、保護者にとって関わり方への悩みはつきません。

そこで、お呼びしたのは「自由研究を1年中行っている」という探究学習塾・エイスクールの岩田拓真代表と、学研キッズネット編集部を率いる坂田チーフプロデューサー。親子で悩める「自由研究のテーマ選び」に加えて、楽しく取り組むうえで大切なことを聞きました。

登場人物

岩田拓真:探究学習塾エイスクールの“いわたく代表”。独自開発した小学生向け探究学習プログラム「なりきりラボ®」「おしごと算数®」は2019年にグッドデザイン賞を受賞。全国にパートナー校があるほか、オンライン授業も提供する。
坂田邦雄:学研キッズネットを率いるチーフプロデューサー(CP)。毎年、新しい自由研究レシピづくりに一意専心!ワクワク、ドキドキの学びを届けるべく、日々子ども目線で楽しいコンテンツをつくることに情熱を注いでいる。

「自由 × 研究」という言葉の罠

坂田CP:毎年、学研キッズネットの「自由研究なぜなに相談室」に多く寄せられるのは、自由研究のテーマを何にしようかという悩みです。

そもそも、「自由」に「研究」するという言葉自体が、なんだか難しそうというネガティブな印象を増幅させているように思います。

 

いわたく代表:そうですね。私たち「エイスクール」の塾ではカリキュラムとして、1年中自由研究を行っているようなものですが、もしかしたら「研究」という言葉がハードルを高めているのかもしれません。

坂田CP:たしかに、自由研究に限らず、私たちがニュースや新聞で目にするのは、世界中で活躍する研究者たちのすばらしい「考察や結果」がほとんどです。

だからこそ、自由研究について考える際に、きちんとしたものを出さなければ!という思いが強まってしまうのかもしれません。

 

いわたく代表:それでいうと、エイスクールでは「研究者」の仕事について学ぶプログラムがあります。実は、研究者が毎日行っているのって「問いを立てる→実験する→結果を考察する」のサイクルを数えきれないくらいまわすこと。

私たちが目にする「考察や結果」はその一部にすぎません。

画像提供:エイスクール

坂田CP:結果よりも、試行錯誤をぐるぐるまわしていく過程がいちばん大切なんだということに気づくだけでも、ずいぶんハードルが下がりそうな気がしますよね。

実はどの家庭にも存在していた? 「研究のサイクル」の正体は普段の試行錯誤だった!!

いわたく代表:少なくとも学校に提出する「自由研究」は、ある程度のカタチにする必要はあると思うのですが、「研究のサイクル」そのものは実は難しくない。皆さん、普段から自然にやっていることなんですよ。

たとえば、料理をつくるとき。どんな焼き加減にするか、どんな味つけにしようか試行錯誤しませんか?

ときには失敗することもあるけれど、繰り返さないように調整していく。これも立派な研究サイクルのひとつです。

坂田CP:子どもたちもそうですよね。小学生の頃っていろいろな楽しい遊びを考えます。友だちと試しながらルールをどんどん発展させていく。自分自身もよく熱中したものです。

日常の中にある自分の好きなことや気になることを、自由研究のテーマにするのは非常にいいですね。

自由研究のプロセスで最も重要なのは、「問い」を立てること

いわたく代表:興味関心に結びつく「問い」を立てると、子どもの取り組み方そのものが変わってくるというのは、普段スクールで接する子どもたちの姿を見て実感しています。

でも、実はその「問い」の設定自体がとても難しいわけで。学校では教わらないものを、子どもたちに「さぁ、自由に興味があるテーマでやってみて」と言ったところで、うまくいかないのは当たり前のこと。

まずは親子でいっしょにテーマを探す。これが、スタートラインになるかもしれません。

 

坂田CP:一方で子ども自身が、「何に興味があるのかわからない」ってこともありますよね。でも、普段いっしょに過ごす保護者だからこそ、気づいてあげられることがあるのかな、と思っていて。

たとえば、旅行に行った先で、何かを見つけて興味を持ったり、夢中になって没頭する瞬間ってあると思うんです。親がそれを見つけてあげることも、ひとつのヒントになるのかな、と。

 

旅先の非日常体験から自由研究テーマを見つけるなら、こちらのサイトもチェック!

この日は猛暑日! 対談の途中で上着を脱ぎ、熱い議論をかわす学研キッズネット・チーフプロデューサーの坂田。

いわたく代表:あくまで選択肢を示すけれど、誘導はしない。子ども自身に決めてもらうのも大事なことだと思います。

親子という関係性のなかで実践するのはなかなか難しいと思いますが、普段より一歩ひいて見守りながら、声をかけていくことを意識できるといいかもしれません。

あとは、「失敗」も研究の過程においてはとても大事なことなので、ぜひポジティブに捉えてほしいですね。たとえば、実験道具が万全じゃなくても、あえて見守る。

そうすると、当然失敗するわけですが、その瞬間に気づきが生まれて、次につながっていく。これも、立派な「研究サイクル」ですから。それを1周でなく、2周以上まわしていけたらベスト。

いわたく代表の探究学習マインドは、「いったい何周まわしているのだろうか?」というくらい、深くて的確。

坂田CP:そう考えると、毎年同じテーマで自由研究に取り組むのもアリですね。

 

いわたく代表:毎年違うテーマにするという決まりはないので、同じテーマでも、去年得た「気づき」から「新しい問い」を設定すると、より学びが深まっていくと思います。

 

キットを使ったってOK。自分なりの「問い」を見つけて熱中しよう!

坂田CP:もうひとつ、テーマ選びでいうと、研究の結果や考察をまとめるのが難しい「問い」より、まとめやすいものを選んだ方がいいというのもあるな、と。

 

いわたく代表:いきなり難しいテーマにチャレンジすると、挫折につながる可能性が高いので、段階を踏んでステップアップしていくことは大事なことです。

エイスクールでも、まず「研究」とはどういうものなのかをつかんでもらうために、全員で同じ実験をします。

「氷が水にどう溶けるか」というとてもシンプルなテーマで実験をしたことがあるのですが、子どもたちの気づきや、気になることって個性が出ておもしろいんですよ。

たとえば、「ほかの液体で氷を作ってみたらどうなるだろう?」「溶かさずに割ってみたらどうなんだろう?」というそれぞれの問いを、今度は2回目のサイクルでやってみるわけです。

「自由研究論」に白熱し、まさに探究モードに入ってしまったふたり。このとき、すでに3周くらい「研究サイクル」がまわっている。

スタートは同じでも、2回目の実験ではそれぞれ追いかけていく「問い」が変わるので、考察はさらに広がります。

最後、お互いに発表しあう場面では、さらに新しい「問い」が生まれることも。まさにこれこそ「探究学習」なのですが。

 

坂田CP:「問い」が発展していくって、「自由研究」にも当てはまるじゃないですか。大事なことは、研究のテーマが高度かどうかではなく、過程こそにあるのだと改めて思います。

自由研究のキットを使ったっていい。何をやってみたいか、どう取り組むかに目を向けると、「自由研究」のテーマ選びも、ポジティブな捉え方ができるのではないでしょうか。

今回の対談取材はエイスクールの拠点のひとつ、2022年に開校したばかりの湯島にある「あ スタジオ」で行いました。

「自由研究」というなんだか難しい言葉も、視点を変えるとワクワクしてきませんか?

日常にある身近な「興味関心」や「研究サイクル」に目を向けると、思いもよらないおもしろいテーマが見つかることもあるかもしれません。

この夏取り組む子どもたちの「自由研究」が、ポジティブに楽しめる学びになりますように。

 

取材・文/石橋沙織

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学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっとへんしゅうぶ)

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