見て、ふれて、比べて、科学する!『学研の図鑑LIVE 新版』シリーズのあたらしい図鑑体験
- 本・映画
- PR
今年6月、『学研の図鑑LIVE』シリーズの『昆虫』『危険生物』『恐竜』が新版として生まれ変わりました。「新版」とは、「改訂版」と異なり、図鑑の内容や体裁を刷新すること。それだけに「本気度が違う!」と、図鑑LIVEシリーズを担当した編集者の皆さんは口を揃えます。
今回の『学研の図鑑LIVE 新版』のメインテーマは「図鑑体験を、あたらしく。」。提供する“図鑑体験”とは何なのか? どのように生まれ変わったのか? 各担当者に話をきくと、子どもたちが夢中になれる工夫がいくつもちりばめられていました。
学研の図鑑LIVE 新版 各担当編集者紹介
生き物の“本物”感を、しっかりとビジュアルでみせる
牧野:わたしが担当した『昆虫 新版』はおよそ8年ぶりのリニューアルでした。今回の大きなチャレンジは、昆虫たちの「生きたまま」の姿を撮り下ろしたことです。これまで図鑑に載っていた写真は、昆虫の標本でした。標本は生きていません。昆虫の触角や脚がフニャフニャになってしまっていたり、頭部が上を向いているものと左を向いているものが混在しているレイアウトだったり、 ほかにも、色がしっかりと再現できていないという課題もありました。
本物、つまり生きている昆虫の姿を図鑑に載せるという意味で特に画期的な仕上がりになったのは、蛾のページです。普段は羽を広げた姿を見る機会がなかなかありませんし、嫌われ者のイメージが強い昆虫ですが、リアルに生きている姿を写真に収めることで、美しい羽の色や佇まいをより際立たせることができました。
さらに、ゲンゴロウといった水の中で暮らす生き物は、実際に水の中に入れて撮影しています。陸にあげてしまうと、足についているエラや毛が閉じてしまって本来の姿が見えなくなってしまうからです。薄いお皿に水を張ったり、2枚の透明のガラスを使って薄い水槽を作って立てて、その中を上から下へ泳がせたりといった工夫をすることで、子どもたちが水槽やバケツに入れたときの色や光沢などが再現できています。
西川:“本物”感の追求という意味では、『危険生物 新版』は、「本当の大きさです」のページでリアルな大きさや迫力をビジュアルで表現することに力を入れています。まず前提として、図鑑に実物大の写真を載せるためには、それに耐えられる解像度の写真が必要です。
たとえば、「ワニ」のページでは、人が近づけるギリギリの距離から、カメラマンに写真を撮ってもらいました。ぼくも現場にいたのですが、本当に緊張感のある現場でしたね。いつか襲ってくるのではないかという危険な雰囲気を身をもって体験しました。ワニの歯はすきっぱに見えますが、これは肉を引きちぎるために、上の歯と下の歯がしっかり噛み合う構造に並んでいるんです。そういった特徴も、実物大の写真で見ることでよくわかると思います。
ニシキヘビは毒を持っていませんが、相手に巻きついて窒息させるための筋肉という武器があります。そこで、ヘビの太さと質感をクリアな写真で再現するために、頭と胴と尾を別撮りするなどして工夫しました。
松原:わたしが担当している『恐竜 新版』の恐竜たちは絶滅しているので、写真ではないのですが、CGイラストで描き下ろしています。1億年前に確実に生きていたんだと感じてもらえるように、ビジュアル面のリアルな表現を追求しました。恐竜たちの特徴をわかりやすく、よりかっこいいアングルで掲載しています。
また、私たちの身の周りにいる鳥は、恐竜が先祖です。その恐竜が進化してこの時代を生きていると思うと身近に感じられませんか? そんな思いを込めて、『恐竜 新版』は進化というテーマを特に意識しました。ページをめくるごとに自然とたどっていける構成になっているんです。
たとえば「竜脚形類」は、大きな体と長い首をもつものが知られていますが、そのような体つきになるのにも長い進化の過程を経ています。首の長さと足の形が徐々に変化していくのですが、その進化の流れがページをめくるごとにわかるようになっています。
「比べる」は「科学する」の第一歩。図鑑が開く子どもの興味関心のトビラ
西川:各図鑑、「くらべてみよう」という特集ページを新設しています。さまざまな生き物の特徴や生態を比べて見ることができるページです。たとえばサメは、種類や食べるものによって骨格に違いがあります。カメの場合は、草食か肉食かによってくちばしの形に差があります。
ヘビもそう。毒牙ひとつをとっても、さまざまです。「ハブ」や「マムシ」のように毒を注入しやすいように、長く鋭い牙が上あごの前方にあるヘビもいれば、一方で、「ヤマカガシ」のように短い牙が上あごの後方にあって、噛み続けないと毒が注入されないヘビもいます。そういった違いを一目で比べられるようにしています。
『危険生物』は、生き物が「生き抜く上でもつ特徴」という観点で並べて、違いやしくみを深堀りできるようにしました。これこそ『科学する』ということだと考えています。
松原:自然科学や生物学を研究するための基本的な手法って、まずは調べる対象を集めて、次に分類する。その後に比べるってことなんです。今回の『図鑑LIVE 新版』の制作にあたって、この「比べる」ところまでしっかりやろうということで、力を入れて特集しました。
『恐竜』だと、「くらべてみよう」のページのほかに、恐竜のCGイラストと骨格のイラストをページ上に並べ、ここのくぼみが目で、鼻で…と「イラスト」と「骨格」を比べて見られるページを随所に入れています。
たとえば博物館に行ったときに、図鑑と骨格標本を重ね合わせながら眺めると、断然見え方が変わってきます。そんなふうに親しんでもらえたら嬉しいですね。
西川:『危険生物』では、先ほどご紹介した実物大ページを使って、人間の体のパーツと比べてみるのもおもしろいかもしれません。ダチョウの足を実物大で掲載しているページもあるので、「自分の足とどっちが大きいか?」と見てみるとか。
牧野:リアルな姿を撮り下ろしている『昆虫』では、実際に採集してきた虫を図鑑の上にのせて比べてみるといった楽しみ方もできます。どちらが本物かわからなくなる…そんなあたらしい体験もできちゃいます。掲載された昆虫は本物と近いので、採集した種を調べやすいというのはもちろん、知らない昆虫をリアルに感じていただき、その結果「探してみたい!」という子どもの意欲をかきたてる図鑑になっています。
私たちの身近にはたくさん昆虫がいますので、この夏の自由研究として昆虫を探して観察してみるのもいいですね。コツとしては、まずは身近な植物を定期的に観察する。コナラやクヌギのほか、ヤツデの葉をめくってみたり、ケヤキの木の幹を観察してみたりしても、意外と1センチくらいの昆虫を見つけることができるんです。
そして、どんな虫が集まってくるのか、どんな時間に活動しているのかをよく見てみると、虫の多様性や不思議を実感することができるはずです。観察においても「比べてみる」という視点はとても大切ですから、たとえば、どんな時間に集まってくるのかといったテーマを見つけて、時間帯や季節による違いなどに注目するのもおもしろいと思います。
付録の動画が、図鑑体験をさらに深いものにしていく
梅崎:図鑑(本)がじっくり読むものだとしたら、映像は子どもたちの五感に訴えるようなもの。わたしが担当した動画(DVD付録)は、未就学児が観ることを前提に内容はやさしく、進行役のキャラクターが子どもの視点で解説しています。
たとえば、実在しない恐竜の場合はCGを使って「学校に恐竜がやってきたらどうなる?」とか、トリケラトプスとサッカーゴールの大きさを比べてみたり、子どもたちの身近な環境と対比させることで、より親しみやすさを感じてもらえるようにしました。ほかにも、恐竜の名前と特徴を覚えやすいように、韻を踏んだ歌詞をつくって歌にしてみたり、チャレンジングなことも試しました。この歌はぜひシリーズ化していきたいですね(笑)。
決定的な瞬間をおさえた貴重な映像はもちろん、『危険生物』では、衝撃シーンを「スリー・ツー・ワン」でカウントダウンするといったわかりやすいシーンを入れたり、ロールプレイングゲーム的な演出をしてみたり、また『昆虫』ではYouTubeのような見せ方をしてみたりと、編集する側も楽しみながらいろいろなしかけを入れてみました。ぜひ楽しみながらご覧いただけたらと思っています。
貴重な瞬間をとらえた映像や実験などが満載。各誌ともに、それぞれの特徴を生かした動画コンテンツになっている。
松原:DVDは、紙の図鑑ではカバーできない部分をうまく補ってくれていると思います。たとえば『恐竜』のDVDには、国立科学博物館や福井県立恐竜博物館のバックヤードの様子や、「恐竜」を仕事にしている研究者のインタビューまで収録されています。図鑑で恐竜を眺めるだけではなく、そういった現実の体験にもつながるといいなという想いもあったので、図鑑と動画はセットで見てほしいです。
牧野:もともと図鑑というのは、動物園に行ったり博物館に行ったり、さらには実際に採集したりするという「体験 」に直結しています。野外での採集や観察はもちろんですが、テレビ番組などで見聞きした生き物の名前でさえ、図鑑体験の入り口になると思います。
今回の『図鑑LIVE 新版シリーズ』では、図鑑とお子さんのタッチポイントをいかに増やせるか、という点に対して果敢にチャレンジしています。ここで伝えきれないくらいのたくさんのしかけを忍ばせているので、図鑑LIVEを手にしていただくことで、みなさんの新しい図鑑体験を応援したいと思っています。
取材・文/石橋沙織