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夏休み明けの子どもの不登校。親ができる対策は?【不登校新聞編集長に聞く】

夏休み明けの子どもの不登校。親ができる対策は?【不登校新聞編集長に聞く】

夏休みが終わって2学期が始まると、1学期までは毎日元気に通っていた子が、突然「学校に行きたくない」と訴えてくることがあります。長い休み明けに多く見られる、いわゆる子どもの「登校しぶり」に対して、親はどのような対応をすればよいのでしょうか。今回は、不登校新聞の編集長を務める石井志昂 さんに、登校しぶりをする子どもへの接し方や声かけのアドバイスをいただきました。

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「学校に行きたくない」と言われたときの3つの対応

ANURAK PONGPATIMET/Shutterstock.com

子どもから「学校に行きたくない」と言われたとき、親としてどう返答すべきか迷ってしまいます。本気で行きたくないのか、ただなんとなく言ってみただけなのか……子どもの真意をはかるには、どうしたらいいのでしょうか。

「最初にお伝えしておきたいのは、子どもが『学校に行きたくない』と言葉に出している時点で、比較的深刻な場合があるということです。これは大人にも言えることなのですが、何か自分ができていないこと、精神的に苦しいことは、他人、特に家族に隠したがるんですよね。たとえばアルコール依存症の人は、家族に隠れてお酒を飲もうとします。認知症の人は、自分の認知力が下がってきたことを家族に隠そうとする。

登校しぶりの場合も、『学校に行きたくないと口にすることで、親が悲しい気持ちになってしまうかも』と打ち明けられず、隠そうとしているケースが多いのです。事実、文部科学省の調査(※1)によると、不登校の子どもたちに『学校を休んでいるときの気持ち』を尋ねたところ、『ホッとした、楽な気持ち』と回答した子が7割いました。親を傷つけたくないが故に学校に行きたくないと言えなくて苦しんでいた、だからこそ、行かなくなってホッとした様が見て取れます。このことをまずは大前提として覚えておいてほしいんです」(石井さん)

そのうえで、「学校に行きたくない」という言葉の裏には、いくつもの感情があると石井さん。ただ甘えている場合もあれば、本当にツライ気持ちを抱えている場合もあります。そこで、子どもの様子を見つつ、次のような対応を意識してみてください。

対応1:子どもを否定しない言葉で返す

まずは、子どもの「行きたくない」という気持ちを、絶対に否定しないこと。一番良いのは、「わかった」と受け入れることです。けれども、そう答えてしまうと、子どもの不登校をはじめから容認してしまうようで言いづらい、という親御さんもいるでしょう。その場合は、「あー」がおすすめ。つまり生返事ですが、肯定も否定もしない、ギリギリの正解が「あー」だと思うんです。

そう回答すると、子どもは自然にその後の言葉を続けるでしょう。「だってね、このあいだ……」と不満や不安を吐き出せたら、意外にスッキリして、次の日学校に行けたりすることがあります。または、自分の思いがどんどん溢れ出てきて、泣き始める子もいます。まずは「あー」と言って、子どもの反応を見るのはひとつの策です。

対応2:子どもの気持ちを推し量りながら質問する

takayuki/Shutterstock.com

もうひとつ、子どもの気持ちを引き出す対応があります。それは、おうむ返し、つまり相手の言葉をそのまま返すこと。「学校に行きたくない」「そっか、行きたくないんだね」、「嫌!」「ああ、嫌だよね」とおうむ返しで返事をすると、子どもは言葉を繋げてくるでしょう。

その後、最近の子どもの様子を振り返って、今どんな気持ちなのかを当てるように質問するのがコツです。友達とケンカして行きたくないのか、宿題が終わっていないから行きづらいのか。我が子の目線に立って、気持ちを推測しながら質問していくのが、相手を否定しないコミュニケーションす。

対応3:様子を見て、風邪と同じくらい休ませる

子どもの返事や様子を見て、本当に学校に行きたくなさそうであれば、ぜひ休ませてあげてください。目安は「風邪を引いた」ときくらいの日数。対応も、風邪のときと同様でいきましょう。たとえば、ゼリーや好きなフルーツなど、風邪をひいたときだけ食べられるものってありませんか? そういうものも採り入れてみてください。つまり、いつも以上にやさしく接することです。勉強もお休みで大丈夫。

ひとつ違うのは、風邪をうつすことを気にしなくて良いので、本人が希望すれば、放課後友だちと遊んでも問題ありません。こうして数日過ごしていると、多くの場合は学校に行きたがるようになります。そのタイミングで登校すればOKです。

もしも、1週間経っても2週間経っても学校に行きたがらない場合は、やっぱり何かある。そのときは、担任の先生と話し合う時間を設けるのはもちろん、私が運営している不登校新聞しかり、他の不登校に関する専門家に相談するなどして、現状を把握しなおすことが良いと思います。

雑談を増やすことが、子どもの心を軽くする

Tom Wang/Shutterstock.com

「学校に行きたくない」と訴えてこなかった場合でも、夏休みの終わり頃から休み明けに、親として子どもの様子で気にかけておくべきことはありますか?

主な不登校の前兆としては、体調不良、不眠、情緒不安、食欲不振の4つが挙げられます。言葉で発しなくても、体から異変を発することが多いのです。夏休みに入ったばかりの頃と、夏休みの終わり、もしくは夏休み明けの子どもの様子を比べて、大きな違いがないかをチェックすると良いですね。

また、休み明けに学校に通いやすくなるように、無理やり生活リズムを整えようと頑張る親御さんもいらっしゃいますが、かえって学校に行く前から子どもにとって負担になってしまうことも。そこで、ぜひ意識してほしいのが、雑談です。

親が子どもに声をかけるとき、どうしても『宿題やった?』『手洗いうがいはしたの?』などの注意喚起になってしまいがちですよね。ですが、親=叱ってくる人になってしまうと、自分が苦しいときに本音を吐き出せなくなってしまう場合があります。休み明けは特に、他愛のないことを話す時間を作ってほしいのです。

たとえば、寝る前の10分間、子どもの話に耳を傾ける。そのとき、話の内容を一切否定しないのがポイントです。子どもの心理的な落ち着きに繋がります。子どもが何か自慢をしてきたときも、雑談のチャンス。そして、自慢気に見せてきたもの・事をチェックするのはもちろんですが、ぜひそのときのお子さんの表情を見てあげてください。きっと充足感に溢れた、素敵な顔をしているはず。その様子を見れば、自然と注意喚起以外の言葉が出てくるのではないでしょうか。

 

「親がおかしいな?と思うときは、実際になにかある場合が多いもの。そんなときは、ぜひお子さんの心の安全地帯になってあげてくださいね」と石井さん。長い休み明けは特に、まずは子どもの言葉を否定しない、寄添うことを意識して、子どもと他愛のない話をする時間を作ってみてはいかがでしょうか?

なお、文部科学省の公式サイトでも「子供のSOSの相談窓口」や、「保護者が相談できる窓口」の紹介をしています。困ったとき、不安なとき、ぜひ利用してみてください。

※1:令和2年度不登校児童生徒の実態調査

 

(取材・文 水谷映美)

お知らせ -石井編集長が不登校のお悩みに答えます!-

Voicy「コソダテ・ラジオ」では9月2日から毎週金曜日、石井編集長をゲストにお招きして、お悩み相談トークを5週連続で配信します。不登校問題に悩む親御さんからに寄せられたおたよりに、石井編集長がお答えします。夏休み明けでセンシティブなお子さんが増えている時期、ぜひご聴取ください。

「コソダテ・ラジオ」はこちらからお聞きになれます

お話を聞いた人: 石井 志昂(いしい しこう) さん

お話を聞いた人: 石井 志昂(いしい しこう) さん

お話を聞いた人: 石井 志昂(いしい しこう) さん

1982年東京都生まれ。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校。同年、フリースクールへ入会。19歳からは創刊号から関わってきた『不登校新聞』のスタッフ。2006年から『不登校新聞』編集長。これまで、不登校の子どもや若者、親など400名以上に取材を行なってきた。また、女優・樹木希林氏や社会学者・小熊英二氏など幅広いジャンルの識者に不登校をテーマに取材を重ねてきた。編著書に『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』、『学校に行かない君へ』(ポプラ社)など。

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