メニュー閉じる

子どもの風邪対策に!腸活の専門家に聞く「免疫力アップ」3つのポイント

子どもの風邪対策に!腸活の専門家に聞く「免疫力アップ」3つのポイント

食事や運動などの生活習慣を見直して、腸内環境を整える「腸活」。じつは、子どもの体調にも深い関わりがあることをご存知ですか? 今回は、理化学研究所名誉研究員であり、腸内環境の第一人者である辨野義己(べんの よしみ)先生に、腸内環境が子どもに与える影響や免疫力アップのコツを教えてもらいました。

Helena Nechaeva/shutterstock.com

子どもの体調と腸内環境の深い関係

「子どもの体調管理と腸内環境には、密接な関係があります。いちばん大きなポイントは、免疫力。風邪や感染症対策にも有効です。

私たちの腸の中には、乳酸菌やビフィズス菌など、体によい働きをする善玉菌と、病気の発生源となる悪玉菌、そして、善玉菌か悪玉菌、どちらか優勢な方を味方する日和見菌(ひよりみきん)の3種類が存在します。

善玉菌は、腸内環境を整えて免疫力を高め、病原菌の増殖を防ぐ働きがあります。そのため、腸内に善玉菌が増えると、風邪を引きにくくなるのはもちろん、花粉症やその他アレルギー症状の改善にも効果的だという研究結果もあるんですよ」(辨野先生)

腸といっても、大きくわけて小腸と大腸があると辨野先生。小腸は、胃や十二指腸で消化された食べ物をさらに分解し、栄養素を吸収するのに対し、大腸は小腸で消化吸収された残りを便に変えて、溜めておく場所です。

「便秘で大腸にウンチが溜まったままの状態が続くと、病気の原因にもなる悪玉菌が排便されるまで滞在することになります。

kornnphoto/shutterstock.com

怖いのは、悪玉菌が作り出した病気の原因物質が腸壁から吸収され、血液にのって体中に蔓延するということ。免疫力が落ちて風邪を引きやすくなるだけでなく、大腸がんなど大きな病の原因にもなるので、子どもだけでなく、大人も注意が必要です」(辨野先生)

子どもの便秘は3割! あなたの子どもの腸内環境は大丈夫?

最近は、大人だけでなく子どもの便秘も増えている、と辨野先生は警鐘を鳴らします。

「実際に、東京都内の小学生を対象にとったアンケート調査では、約3割が便秘気味という結果が出ているんですよ。

便秘、もしくは便秘気味の子どもたちは、

・朝ご飯を食べない
・お肉が大好き
・野菜が嫌い
・常習的に夜更かし朝寝坊をしている
・体育の授業が嫌い
・あまり外で遊ばない

といった特徴があります。

特に、朝ご飯を食べないと、定期的なお通じが出ません。便を出すためには、食事によって腸を刺激することも重要です。

朝のお通じが来ないまま学校へ行くと、頭がぼーっとしたまま授業に集中できないですし、給食の時間は、朝から何も食べていないのでお腹が空きすぎて、食べ過ぎてしまう。

その結果、今度は満腹になると、午後の授業は睡魔に勝てず、集中できないですよね。

wavebreakmedia/shutterstock.com

これでは、意識的に勉強に取り組むことは難しいので、学校の成績にまで影響が出てしまいます。

まずは、親子でいっしょに、腸内環境がどのような状態か、次のシートをチェックしてみてください。当てはまる項目が多いほど腸内環境がよくない危険信号だと言えるので、食事や生活習慣の改善が必要です」(辨野先生)

ウンチはカラダからのお便り!家庭でできる3つの「腸内環境」改善法

では、腸内環境を整えるためには、どうしたらいいのでしょうか。今日からできる3つの方法を辨野先生に教えてもらいました。

積極的に「ウンチの話」をする

「みなさんは、家庭でウンチの話をしていますか? 子どもがウンチの話をしたとき、『そんな汚い話、食事中にしないで!』などと叱ったことはないでしょうか。

もちろん、食事時にあえてする必要はありませんが、ウンチは食べたものによってできているんですね。

たとえば、ほうれん草を食べたら、緑色のウンチが出ますし、お肉を多く食べるとニオイがくさくなる。毎日観察すると面白いほど変化をするんですよ。

でも、ウンチは汚い、人前で話すなんて恥ずかしい、といった先入観が植えつけられてしまうと、子どもは自分から排便に興味を持ちません。

ですから、ぜひ、食べたものがどんなウンチになるのか、親子で楽しみながら観察して、話題に出してほしいと思います」(辨野先生)

子どもの排便をチェックする

「ウンチをしたらすぐに流してしまう人が多いですが、ウンチは体からのお便り。よく観察しましょう。

排便回数だけでなく、色やカタチ、ニオイの状況を知ることで、子どもの体と心の健康状態がよくわかります。黒っぽい、臭いウンチは肉の食べ過ぎ。ころころウンチは、ストレスが溜まっているかもしれません。

Shadow Inspiration/shutterstock.com

そして、ぜひ知ってほしいのは、排便量です。排便の前後に体重を測ると、簡単に確認できます。

だいたい、おしっこは300gくらいですから、500g体重が減っていれば200gの便が出たことになる。極端に量が少ない場合、腸内環境が悪くなっている可能性もあるんですよ」(辨野先生)

食事・運動・ストレスに気をつける

腸内環境を改善するためには、食事・運動・ストレスの3つのバランスが重要です。

理想的な排便は、便器に座ったらストンと出る状態。バナナのような形で黄褐色、ニオイはありません。

「そのためには、まずは食事です。野菜、海藻をはじめとする食物繊維が多いものや、ヨーグルト・乳酸菌飲料や納豆などの発酵食品を積極的に食べましょう。そして、運動。現代の子どもたちは、外遊びの機会が減っていますが、スムーズな排便を促すには、出す力、インナーマッスルを鍛えることが欠かせません。

さらに、ストレスを抱えていると、副交感神経が興奮することで腸管が常に緊張状態になり、便がうまく運ばれなくなってしまいます。結果、ウサギのフンようなコロコロした便になったり、反対に軟便や下痢になったりするので注意しましょう」(辨野先生)

腸を制する者は、健康を制する

「数日便が出ていないだけ」と思うか、「便秘気味だから、食事や生活習慣を見直そう」と思うのか、それだけでも今後の腸内環境は変わってくる、と辨野先生はいいます。

「便秘が常習化すると、免疫のバランスが崩れて体調が悪くなったり、学校生活に影響を及ぼしたりと、さまざまな弊害を引き起こしかねません。

将来的な大腸がんのリスクが増えるだけではなく、腸内細菌は、脳の機能にさえも作用するという研究もあるほど。つまり、私たちの心と体の健康は、腸内環境に宿っているのです。

milatas/shutterstock.com

子どもの食生活や生活リズムは、大人の影響を大きく受けます。ぜひ親子でよい便が出るような生活習慣を意識してほしいと思います」(辨野先生)

 

取材・文/水谷映美 編集/石橋沙織

FYTTE風邪対策バナー

キッズネット風邪対策バナー

辨野 義己(べんの よしみ)さん

辨野 義己(べんの よしみ)さん

辨野 義己(べんの よしみ)さん

一般財団法人辨野腸内フローラ研究所理事長、特定国立研究開発法人理化学研究所名誉研究員、十文字学園女子大学客員教授。農学博士。
酪農学園大学獣医学科卒、東京農工大学大学院、理化学研究所微生物材料開発室長を経て、50年近くにわたる腸内細菌の分類と生態に関する研究に取り組んでいる。腸内環境解析の第一人者として、さまざまなメディアに出演。著書多数。

PAGETOP