【小児科医が教える花粉症事情】3人にひとりが発症済み?大人との違いって?知っておきたい子どもの花粉症
鼻水や鼻づまり、目のかゆみやだるさなど、大人だけでなく子どもも悩まされる花粉症問題。近年では子どもの花粉症は増加の一途をたどり、さらに2023年はスギ花粉の飛散量が非常に多いという予測もあり、いつも以上に警戒が必要です。
子どもの花粉症が増えている背景にあるものとは? また。本格的な花粉シーズンが到来する前に親は何に注意すべきか、有明こどもクリニック豊洲院院長の村上先生にお話を伺いました。
子どもたちの花粉症が増えている理由とは?
『鼻アレルギーの全国疫学調査2019』によると、子どもの5~9歳の3人にひとり、10~19歳では2人にひとりが花粉症というデータがあり、子どもの花粉症が年々増加傾向にあります。
「花粉症増加の背景としてまず考えられるのが、診断率の高さによるもの。少子化に伴って親の注意が子どもに向くようになり、昔なら見過ごされていたような鼻水やくしゃみなどの症状でもクリニックを受診し花粉症の診断を受けた、ということも少なからずあると思います。
また、”花粉の再飛来”も原因のひとつ。花粉が地面に落ちたときに、土ならそのまま吸収されますが、現代ではアスファルト化が進み、落ちた花粉が再び舞い上がってしまいます。さらにPM2.5などの大気汚染物質が花粉にくっつき、抗原性がより強力となって花粉症発症率を高めていると考えられます」(村上先生)
環境問題以外に、生活様式の変化も影響しているのでは?と、村上先生。「コロナ禍になってからは、外出を控えてマスク着用が当たり前になったせいか、花粉症の患者さんをほとんど見なかったように記憶しています。
去年あたりから日常生活が少しずつ戻るに従い、来院する人も徐々に増えてきました。それを考えると、2023年はコロナ以前の生活に近づいていることもあり、爆発的に花粉症患者が増える可能性もあります」と村上先生は警報を鳴らします。
今年は花粉症により気をつけるべき?
『日本気象協会 2023年 春の花粉飛散予測』によると、前シーズンに比べて花粉の飛散量が多く、四国、近畿、東海、関東甲信越では非常に多く飛ぶ見込みです。
「花粉症はよくバケツに例えられますが、赤ちゃんはバケツに何も入っていない状態で生まれてきます。そのバケツに少しづつ花粉が蓄積され、許容量を超えてあふれた時に花粉症が発症するイメージです。
飛散量が多ければバケツの中に入る量も増え、あふれる人=発症者も多くなる傾向になるため、今年は例年以上に注意と対策が重要です」(村上先生)
花粉症と風邪の違いの見極め方
村上先生によると、花粉症と風邪の見極めは非常に難しいのだそう。
「花粉症も風邪も鼻水が出るという症状は同じですし、幼い子どもは自分の症状を上手に伝えられません。『外に出ると鼻水がいっぱい出るんだよ』、『お外で遊ぶと目がかゆくなるんだ』と伝えることができればよいのですが、それは至難の業。大人はメイクが崩れるからなど、さまざまな理由がはたらいて目がかゆくても我慢できます が、子どもはかゆければゴシゴシとこすります。
目を頻繁にこする、というのを花粉症の特徴的なサインとし、早めにクリニックを受診しましょう。
また、花粉症かどうかを判断する方法として、血液検査・好酸球検査・診断的治療の3つがあげられます。
血液検査は採血が必要となるためハードルが高いと思う親も多いのですが、原因がわかれば対処法も明確に。鼻水の好酸球の値を調べる検査では、鼻水が花粉と風邪、どちらが原因で出るのかを診断できます。診断的治療は抗アレルギーの薬を服用し、それで効果が見られたらアレルギーが原因だったと分かる治療法で、判断が難しい場合に用いられることもあります」(村上先生)
花粉症が子どもに与える影響に注意をしよう
子どもの花粉症には、目のかゆみ以外にどのような症状があるのでしょうか?
「個人差はありますが、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、肌のかゆみなどが主な症状。大人と子どもに大差はありません」(村上先生)
気になる症状は見逃さないように、と村上先生。
「先ほどお伝えしたように、子どもはかゆみを感じると目を躊躇なくこするため、ゴシゴシこすりすぎて目の周りが赤く腫れたり、ひどくなるとただれたりしてしまうことも。目周りが乾燥して、ガサガサになってしまう場合もあります。
また、常に鼻がつまっていると涙が循環しなくなり、結膜炎の原因になります。 ほかにも、鼻がつまると鼻呼吸ができなくなり低酸素状態になります。集中力が著しく低下し、ボーッとして授業に集中できないということも。
花粉症はこのように、日常生活はもちろん学校生活にも影響が及ぶこともあります。親がしっかり観察し、少しでも気になる症状があれば医師に相談してみましょう」(村上先生)
取材・文/末永陽子 編集/清水優香子