幼児期から「見通す力」を育てるために! “迷路”遊びのメリット3選【コソダテのヒント】
元保育園園長で、現在子育てや教育関連の講演会を配信している「花まる子育てカレッジ」ディレクター井坂敦子さんによる連載です。音声配信Voicy『コソダテ・ラジオ』の「子育てが楽しくなる小さなヒント」を読みやすく記事化しております。ぜひお楽しみください。
迷路遊びは、ただの遊びではない!
お子さん、迷路遊びは好きですか? じつは迷路遊びには、いろいろな効用があるのはご存じでしょうか?
4、5歳ぐらいになると、鉛筆やクレヨンなどの扱いがだんだん上手になってくるかと思いますが、その時期のお子さん向けに、迷路遊びのドリルのようなものがありますよね。入口から出口までをなぞるような単純なものから、行き止まりがあって行きつ戻りつしながらやるものまで、さまざまです。
迷路遊びはいっとき夢中になる子が多く、ドリルを買ってあげたり、紙に簡単な迷路を自作して描いてあげたりされている親御さんもいるかと思います。
そんな迷路遊びですが、「遊び」だけでなく「学び」の要素を含んでいて、いくつもメリットがあるのです。
「見通しを立てる力」が付く
まずひとつ目。迷路は「先を読んで、見通しを立てる力」を養います。
「少し先は行き止まりだから、こっち側の道を行こう」とルートを選びながら進んでいく迷路。「少し先の道がつながっているか」「このまま進めるかどうか」を考えながら進むという、「見通しを立てる」作業をずっと行っています。
子どもにとって、「見通しを立てる」という作業はなかなかに難しいこと。大人であれば、常にある程度見通しをもって、「こういうふうにやっていたら間違ってしまうから、こっちのやり方にしよう」や、「今のうちにこれをやっておいたらあとがラクだから、やっておこう」などと考えるのが当たり前。そうしたことができない子どもを前に、ついイライラしてしまうこともあるでしょう。
たとえば宿題。「早く終わらせたら、いっぱい遊べるよ」、「宿題は済ませておかないと、あとになってあわてるよ」というように、「今のうちにこれをやっておいたほうがいいよ」、「今これをやっていたら間に合わないよ」などとお子さんに声を掛けること、日常的にありますよね。
この「見通しを立てる」という、子どもには慣れない作業を、迷路なら遊びの中で経験することができるのです。
そしてまた、ゴールまでたどり着いたら達成感があり、気持ちも良い。迷路は、自分で考え抜いて最後までやり切ったり、達成感を味わったりすることがとても手軽にできる、貴重な遊びだと思います。これもメリットのひとつと言えるでしょう。
小学校受験にも役立つ“迷路”
そしてもうひとつは、「小学校受験にも役に立つ」ということ。
小学校受験では試験として、「迷路」が出る場合もあるのです。
それは、先ほどの「見通しを立てる力」があるかどうかを見る意味もありますが、もうひとつ学校側が大事にしていることがあります。
それは、「運筆力」。まさに、筆を運ぶ力。鉛筆を自分の思い通りに動かす力です。
幼児教室などでは、「迷路に描かれた道の真ん中をずっと通っていくように」と指導されたりもします。
はみ出さないのはもちろん、壁にぶつかったり左右にフラフラしないで、その迷路の真ん中をまっすぐ通っていく。カーブを曲がるときも、その真ん中を通ってカーブしていく、というふうに、迷路の道幅に対して常に真ん中を通っていきましょう、という指導があったりします。
こうしたことを通して、「運筆力」の獲得を目指しているのです。
小学校に上がると、平仮名やカタカナを習い始めます。文字の練習の際は、「なぞり書き」のようなことをしますよね。
そのなぞり書きですが、やはり、その文字の枠の真ん中をなるべく通るようにすると、字がきれいに書けるようになっています。
この「真ん中を書く」ということを、文字の前の段階、迷路遊びのときに、気をつけて丁寧にできているか、しっかりした筆圧で濃い線がきちんと書けているか、カーブや角をしっかりととって書けているか、ということを試験でチェックされたりします。
これは、「運筆が上手かな」「巧みにできているかな」といったところを見ているのだろうと思います。
親子で楽しみながら「力を付ける」
迷路をただの「遊び」だと思うと、「そんなにずっと迷路遊びばかりしないで、もっと勉強しなさい!」と言いたくなってしまうこともあるかもしれませんが、迷路は奥が深く、ゴールまでたどり着いたり、線をきれいにしっかり書けているとしたら、じつはものすごく力が付いているということなのです。
【迷路遊びのメリット】
(1)見通しを立てる力が付く
(2)手軽に達成感が味わえる
(3)運筆力が付き、小学校受験にも役立つ
迷路はやり方次第。楽しい時間も、親はつい勉強や学びにつなげたくなりますが、そうした気持ちをあまり強く出しすぎると、子どもはしらけてしまい「プイッ」と逃げてしまいます。その辺のさじ加減が、親御さんの腕の見せどころ。
ですので、お子さんが迷路に夢中になって楽しくやっているときには、保護者の方も一緒にやってみたり、自作の迷路を作ってみたり、あるいは迷路の線をきれいにたどって書いて、「こんなにきれいにできたよ」と見せたりしてみてはいかがでしょうか。
すると、子どもも自然と「やってみよう」と、その方向に向かっていってくれたりしますので、ぜひ工夫してみて下さい。そうした工夫を大切にして迷路を楽しんでいただけると、より良い時間になると思います。
話し手/井坂敦子 構成/清野 直
井坂 敦子(いさか あつこ)さん
中学校高等学校教諭一種免許状(国語) /保育士/食育カウンセラー/表千家師範
慶應義塾大学卒業→ 雑誌『オレンジページ』編集部 →公式サイト『オレンジページnet』編集長 →小学校受験対応型保育園園長 →「花まる子育てカレッジ」にて年間約100本の子育てや教育に関する講演会や対談を企画運営。Instagramやブログ「わが家の小学校受験顛記」も好評。英国留学中の高校生とボーダーコリー3頭の母