難関中学の入試対策はキッチンでできる? 勉強を机の上だけで終わらせないのがデキるママ【コソダテのヒント】
元保育園園長で、現在子育てや教育関連の講演会を配信している「花まる子育てカレッジ」ディレクター井坂敦子さんによる連載です。音声配信Voicy『コソダテ・ラジオ』の「子育てが楽しくなる小さなヒント」を読みやすく記事化しております。ぜひお楽しみください。
男の子こそ、厨房に入ろう!
「男子厨房に入らず」ということわざがありますが、今回は「男子こそ厨房に」というお話をしたいと思います。
「男子厨房に入らず」というのは、「立派な人は憐れみ深いので、生きものがさばかれたりする厨房には入らないないもの」という「君子は庖厨(ほうちゅう=厨房)を遠ざく」という故事に由来しています。
それが日本では、「男の人は台所に入ったりしないで、もっと勉強したり、武士のたしなみを覚えたほうがいいよ」というような意味で使われました。
昨今は、「イクメン」や「料理男子」など、料理する男性も多くいますが、なぜ「男子こそ厨房に」なのかと言うと、キッチンで行われるいろいろなことが、理科的・社会科的な観点から見ても、じつはたくさんの学びがある、ということをお伝えしたいからです。
たとえば、中学受験で非常に人気の高い、ある男子校の入学試験の理科で、以前このような問題が出たことがありました。
「野菜の豆苗をバラバラにして乾燥させ、乾燥させたあとに、水に浸けてもう一度復活させる」というような実験例が示され、「豆苗の水分がどれくらい減ると、もう復活しないのか」「何パーセントまでだったら復活するのか」といった問題を、グラフなどを見ながら読み解いていく、というものです。
中学受験ですから、解くのは小学生。11、12歳の男の子が、そもそも豆苗を知っているのか、食べたことはあるのか、野菜がクタッとなってもお水に入れてあげるとシャキっとすることを知っているのか、ということが次々に思い浮かびました。
こうしたこともあり、普段、女の子よりもキッチンへ入る機会がいまだに少ないであろう男の子に、ぜひキッチンへ入ってほしいと思ったのです。
野菜を入り口に、いろいろなことに興味が……
たとえば、ほうれん草などの葉野菜は、冷蔵庫にしばらく入れておくとしなびてしまいますが、お水に入れておくと、驚くほどみずみずしくシャキッとします。
炒めものなどの料理では、「1回お水に入れてシャキッとさせてから炒めるとおいしくなる」などと、料理本に書いてあったりしますよね。
料理が上手くなる、ならないというのは二の次。そうした野菜についてや、それぞれの野菜がどこから来ているか、といったことに興味を持ってほしいのです。
たとえばゆで玉子は、ゆで時間によって状態が変わります。半熟になったり、固ゆでになったり、あるいは温泉卵のように、黄身だけ先に固まった状態になったり、火の通し方でさまざまに変化します。
子どもにしてみたら、「なんで生卵があんなふうに固まるんだろう」と疑問に思ったり、ゆで時間によって状態が変わることを面白がったり、ということができるのではないでしょうか。
そこには、いろいろな“学び”が隠されています。お休みの日の朝ごはんなどに一緒につくってみるだけで、「タンパク質は熱を加えると固まる」ということや、「タンパク質の固まる温度」、「タンパク質の種類によって固まる時間が違う」といったことが、難しいことは抜きに体験できます。
親子で楽しみながら、疑問を持ったり、びっくりしたり、そして最後は美味しく食べたりすることができるので、おすすめです。
さまざまな驚きや発見のあるキッチンで、思考力を鍛えて
最近の中学受験の問題は、思考力を試される問題が多く、「考えて書く」問題が増えています。ドリルを解いてやり方を教わって、それをそのまま覚えていれば解ける、というようなスタイルではなくなってきています。
家庭の中で、驚きや発見がいちばん生まれやすいキッチンは、そうした思考力を鍛えるにはぴったりの場所です。野菜の産地やくだものの産地、魚の体の仕組みなど、いろいろなことを学べるので、ぜひお子さんを厨房に入らせてあげてください。もちろん女の子にも入ってほしいと思います。
お菓子作りなどでは、グラムを量ったり、換算したりといった算数的なことも学べます。楽しみながら自然とたくさんのことを知ったり身につけたりできる料理。買い物も含め、ぜひ楽しんでいただけたらうれしいです。
話し手/井坂敦子 構成/清野 直
井坂 敦子(いさか あつこ)さん
中学校高等学校教諭一種免許状(国語) /保育士/食育カウンセラー/表千家師範
慶應義塾大学卒業→ 雑誌『オレンジページ』編集部 →公式サイト『オレンジページnet』編集長 →小学校受験対応型保育園園長 →「花まる子育てカレッジ」にて年間約100本の子育てや教育に関する講演会や対談を企画運営。Instagramやブログ「わが家の小学校受験顛記」も好評。英国留学中の高校生とボーダーコリー3頭の母