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歴史が苦手な子も、夏休みは親子で学ぶ絶好の機会! “映像の力”で戦争や感染症を自分事に【コソダテのヒント】

歴史が苦手な子も、夏休みは親子で学ぶ絶好の機会! “映像の力”で戦争や感染症を自分事に【コソダテのヒント】

元保育園園長で、現在子育てや教育関連の講演会を配信している「花まる子育てカレッジ」ディレクター井坂敦子さんによる連載です。音声配信Voicy『コソダテ・ラジオ』の「子育てが楽しくなる小さなヒント」を読みやすく記事化しております。ぜひお楽しみください。

テレビ番組が“興味の入り口”に

苦手な子も多い「歴史」。遠い昔のことに実感が持てず、なかなか頭に入ってこないことも理由のひとつかと思います。

そこで、私が最近、歴史に深く興味を持つきっかけとなったテレビ番組がありますので、それについて話したいと思います。

たくさんの映像が映し出されているモニターとリモコンを持つ手

それは、NHKの『映像の世紀バタフライエフェクト』。ひとつのテーマを、膨大な映像からひも解いて見せてくれる番組です。

なかでも印象的だったのが、スペイン風邪の回と、、「ヴェルヴェットの奇跡 革命家とロックシンガー」という、チェコスロバキアがソ連の侵攻から逃れ、自由を勝ち取るまでの歴史についての回です。

「自分事」になったスペイン風邪

スペイン風邪は、第一次世界大戦から第二次世界大戦の間、ヨーロッパをはじめ世界中で流行った感染症です。戦争中ということもあり、軍隊など人が密集する状況の中で、たくさんの方が亡くなりました。

私も、中学や高校の世界史の教科書で、「スペイン風邪が流行り、たくさんの死者が出ました」という1行ほどの記述は読んだことがありますが、今回コロナが流行して、スペイン風邪と似ているという記事を読んでも、あまり実感が持てませんでした。

スペイン風邪流行中のウォルター・リード病院。ぎっしり並ぶベッドとマスクをした看護師。

けれど、『映像の世紀』で当時の映像を見て、その感覚が一変します。世界中の人がマスクをしていたり、病院が人であふれていたりする映像を見て、昨今ニュースで流れているコロナ関連の映像と、ピッタリと重なったのです。白黒の映像ではありますが、百年前とは思えない、現在と同じような状況でした。

当時のニュース映像や記録映像を見ると、今と変わらない、怖さや悲惨さ、大変さが伝わってきます。インタビューなどの映像もあり、子どもを亡くした親や、逆に親を亡くした子どもの悲痛な言葉を聞いたり、表情を見たりすると、たった今それが起こっているかのように、心がぎゅっと痛くなりました。

映像を通して、歴史的な出来事が自分事のように感じられたのです。

現在の状況とオーバーラップする歴史

「ヴェルヴェットの奇跡」の回でも、同じような感覚になりました。

実際の映像で流れる、「プラハの春」(ソ連に軍事侵攻されたチェコスロバキアで起きた民主化運動)や、プラハの春を推進した劇作家やロックシンガーたちが政府に反抗したことで仕事を奪われたり、逮捕されたりする様子。

ヴェルヴェット革命のシンボルとして灯された多くのロウソク(2021年11月17日プラハにて)

一般の市民が傷つけられたり、殺されたり……それに反発する市民の叫び、抵抗する姿。子どもからお年寄りまで、ソ連に抵抗している様子が、今現在のロシアによるウクライナ侵攻の状況と重なったのです。

「歴史を学ぶ」というと、テスト対策のように「覚えなくてはいけないこと」と思ってしまいがちですが、今はこうした映像やYouTubeなどもあります。

「○○ということがありました」と、事実だけを知るのではなく、当時を生きる人たちの様子や表情を見ることで、もっと多くのことを感じたり、深く学ぶことのできる時代になったのだと思います。

親は、子どもの心に種を蒔いてあげて

歴史を深く知ることは、教養や生きる支えになります。多くの親は、子どもに歴史や社会について興味を持ってほしい、知ることでその子の糧になってほしい、と願うものではないでしょうか?

そのときに、無理やり「やりなさい」「知りなさい」と言っても、子どものほうは嫌ですよね。

椅子に座って本を読む女性

そこで、こんな方法はいかがでしょうか? 親がそうしたテレビを見たり、本を読んだりする姿を見せること。興味がない子どもでも、親が見ているテレビをなんとなく一緒に見たり、本のタイトルを横目に見たりする中で、少しずつ知っていきます。

「お父さん、お母さんが見てたな」、「何かそのことについて話してたな」ということが、子どもの中に種のように蒔かれて、それがいつか芽吹くこともあるのではないでしょうか。

子ども自身の興味は、子ども自身のもの。本人が好きだと思ったことを、自分で決めて学んでいくことが基本だと思いますが、種がないことには芽吹かない、ということもあり得ます。大人は、そうしたテレビを見る、というところからでも、少しずつ種を蒔くことができるのです。

昔の人の想いを知って、歴史が身近に

『映像の世紀』はシリーズでずっと放送されていて、見るたびに人間の欲望や愚かさ、怖さを感じます。

どの回も、歴史的シーンの劇的な映像を見せてくれますが、必ずと言っていいほど、子どもを想う母親の涙や、子どもを守るために必死になっている親の映像が出てくるのです。

手を取り合う親子

そうした映像を見ると、親の子どもに対する想いというのは、どんなに過酷な状況にあっても美しいのだなと感じます。

子どもを想う親の気持ちは、時代を超えても同じ。映像を見ると、昔の人々も、今の私たちと変わらない人間だということが実感できますし、遠くに感じていた歴史が身近なものに感じられます。

夏は終戦記念日もあり、歴史を振り返る機会も多くなります。お子さんの年齢や性格などに考慮して、刺激の強い映像には気をつけつつ、「映像で歴史体験」をして思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

 

話し手/井坂敦子 構成/清野 直

『コソダテのヒント』シリーズ

井坂 敦子(いさか あつこ)さん

中学校高等学校教諭一種免許状(国語) /保育士/食育カウンセラー/表千家師範

慶應義塾大学卒業→ 雑誌『オレンジページ』編集部 →公式サイト『オレンジページnet』編集長 →小学校受験対応型保育園園長 →「花まる子育てカレッジ」にて年間約100本の子育てや教育に関する講演会や対談を企画運営。Instagramブログ「わが家の小学校受験顛記」も好評。英国留学中の高校生とボーダーコリー3頭の母

学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっと編集部)

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