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子どもが憎たらしいのは、「親離れ子離れ」のサイン? 子育てをラクにする“心の余裕”のつくり方【コソダテのヒント】

子どもが憎たらしいのは、「親離れ子離れ」のサイン? 子育てをラクにする“心の余裕”のつくり方【コソダテのヒント】

元保育園園長で、現在子育てや教育関連の講演会を配信している「花まる子育てカレッジ」ディレクター井坂敦子さんによる連載です。音声配信Voicy『コソダテ・ラジオ』の「子育てが楽しくなる小さなヒント」を読みやすく記事化しております。ぜひお楽しみください。

「心の余裕が大事」とは言うけれど……

「親は心の余裕が大事」とはよく聞きますが、もっともなことだと思います。

ただ、子育てをしていると、急いでいるときにぐずぐずされたり、悪態をついてきたり、言うことを聞かなかったりと、日々イライラすることがありますよね。

かんしゃくを起こしている女の子

こちらに余裕があるときは、「どうしてそういうことをするのかな?」「今、この子の気持ちはどういう状態なのかな?」と考えることもできますが、やることが詰まっていたり、焦っていたり、といった状況だと、どうしても感情的になってしまうことがあるかと思います。

大人も人間ですから、「感情的になってはいけない」というのは、「人間でいてはいけない」くらい無理なこと。

いろいろな方のお話を聞くと、感情のコントロールが上手な方は、余裕を持った状態でいられるように、意識的に工夫しているようです。

たとえば働いているお母さんなら、子どものお迎えに行く前に5分でもいいから時間をつくって、お茶やコーヒーを飲むなど、ひと呼吸おく。

専業主婦の方なら、子どもをおじいちゃん、おばあちゃんに預かってもらうなど、何かしらひとりの時間を持てるよう心がけている方は、余裕をつくるのが上手だなと思います。

余裕をつくる、「ひとり遊び」のすすめ

私の場合、実家とは距離があったり、コーヒーを飲む時間があったら仕事をしたい、というタイプだったので、なかなか上のようにはできませんでしたが、そのような中でも工夫して行っていた方法がありますので、お話ししたいと思います。

それは、幼児期のことですが、なるべく「ひとり遊び」ができるようにする、というもの。

たとえば、お子さんの多くが好きな「シール」。うちの子もシール貼りが好きだったので、シールを多めに買っておいて、それを一つひとつハサミですべて切る。それを箱にドサッと入れ、それから、シールを貼る紙も用意して、貼る場所がわかるように丸印などをつけておく。

机に向かって、ひとり遊びをしている女の子

そのシールの箱とシールを貼る紙をトレイに載せておいて、「シールのお仕事」セットみたいなものをつくったり、「迷路」をたくさんコピーして、小さいカードのようなものをつくり、それを束にして置いておいたりしていました。

子どもが、「あ、面白そう!やりたい!」とひとりで夢中になれるようなことを用意しておくと、子どもはしばらくそれで遊んでくれます。

その間、子どもは頭も手も動かしていますから、こちらも罪悪感がありません。一応、近くで見守っていますが、そこまで気をつけて見ている必要もないので、その時間を自分の休憩時間にあてたりして息抜きをしていました。

こうした遊びのヒントは、本やインターネットにたくさんありますので、ぜひ調べてみてください。

感情的になってしまったときにまずやること

心の余裕が持てるように工夫したり、気をつけていても、感情的になってしまったときはどうすればよいのでしょうか?

それは、シンプルですが子どもに謝ることだと思います。「怒りすぎちゃったな」「言いすぎちゃったな」、あるいは「暴言を吐いてしまったな」ということは、日々の暮らしの中では、起こり得ること。

そのままにしていれば、子どもは「暴言を吐いてもいいんだ」と学んでしまいます。私はそんなとき、「ごめん、さっきのちょっと言いすぎた」と謝るようにしていました。

両手を合わせて謝っている女性

それが正解だったかどうかはわかりませんが、自分の気持ちがすっきりしますし、そのすっきりした状態で子どもに向かうことができました。子どものほうも、「そうか、さっきお母さんは言いすぎちゃったんだな」とわかりますし、親が謝る姿を見せることは、とても大事なことだと思います。

それから、難しいのが思春期ですよね。すぐ悪態をついてきますし、こちらも感情を逆なでされて、わが子でも憎たらしく感じてしまうことが多々ありました。

渦中にいるときは、「どうして?」と思っていましたが、思春期も抜けて一歩引いて見てみると、あれは「親離れ子離れ」の大事なイニシエーション(通過儀礼)。いわゆる自立や成長の一過程なんですよね。

それがあることで、親側も「これはひどい」と子離れが一歩進む。子ども側からすると、「もう自分でできるんだから放っておいて、自分で考えさせて」というようなサインなのです。

難しいかもしれませんが、子どもが悪態をつき出したら、「成長の証」「あ、そういう時期がきたんだな」と思えれば、ラクになる気がします。

余裕がある親の子どもは、勉強ができる?

「人生楽しいな」「仕事もおもしろいな」など、楽しい気持ちでいる親御さんのお子さんは、やはり明るい顔をしていたり、意欲に満ちていたり、落ち着いたりしているもの。

落ち着いていれば、人の話も落ち着いて聞くことができ、聞いたことも理解できる。理解できなければ、「わからない」と素直に言えたり、好循環が起こり、自然と勉強などの力も伸びていきます。

並木道の途中で、笑顔で抱き合っている母娘

これが逆の状況だと、すべてが逆になってしまいます。お父さんやお母さんがイライラ・ガミガミ、ダメ出しばかりしていたら、伸びるわけがありませんよね。

つい、「伸ばすために、悪いところを指摘してあげなきゃ」と言ってしまいがちなのですが、それは子どもにはなかなか伝わらないものです。

いつも叱られていると、その内容よりも状況に気がいって、聞く耳を閉ざしてしまいます。聞く耳を閉ざせば、人の話は理解できません。先ほどとは逆の、悪循環になってしまいます。

多くの教育の専門家がおっしゃるのは、「まずは親が幸せになってください」ということ。子どものために必死にがんばっているからこそイライラもするのですが、「いやいや、自分がまずよい状態になることが大事なんだ」と思い出してください。

子育て中で忙しいと、自分を大事にすることを忘れがちですが、ぜひ思い出して「自分に優しくしてあげよう」「気持ちよくなることを何かしよう」と工夫してみていただけたらうれしいです。

 

話し手/井坂敦子 構成/清野 直

『コソダテのヒント』シリーズ

井坂 敦子(いさか あつこ)さん

中学校高等学校教諭一種免許状(国語) /保育士/食育カウンセラー/表千家師範

慶應義塾大学卒業→ 雑誌『オレンジページ』編集部 →公式サイト『オレンジページnet』編集長 →小学校受験対応型保育園園長 →「花まる子育てカレッジ」にて年間約100本の子育てや教育に関する講演会や対談を企画運営。『入学後の学力がぐんと伸びる 0~6歳の見守り子育て』(KADOKAWA)が9月22日発売。Instagramブログ「わが家の小学校受験顛記」も好評。英国留学中の高校生とボーダーコリー3頭の母

学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっと編集部)

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