小学生が「奢る」!? 令和時代の子どもの金銭トラブルを防ぐシンプルな方法【専門家に聞く】
キャッシュレス化が進み、現金を使う機会が確実に減ってきています。そんな時代の流れとともに子どもたちの金銭感覚は昔と大きく変わり、お金の価値や重みを実感しにくくなっているのではないでしょうか。
そこで、令和の時代だからこそ考えたい「金銭感覚の身につけ方」や「金銭トラブルから子どもを守る術」を、ファイナンシャルプランナーの八木陽子さんに教えてもらいました。
子どもを取り巻く金銭トラブル多発!理由は「キャッシュレス化」にあり?
「友だち同士の金銭トラブルは昔からありますが、現代の子どもたちの場合は少し様子が変わってきています。
たとえば、友だちに食べ物を奢った・奢られたというケース。当事者たちに話を聞くと、そこまでお金を支払ったという感覚がないようなのです。
子どもたちからしてみたら『suicaをピッとあてるだけで買えるから、お前の分もいいよ』くらいの軽い感覚なのかもしれません。
現金を持たずに済む電子マネーは利便性がありますが、一方で、子どもたちが本物のお金を目にすることも、使う機会も少なくなっているのも事実。だからこそ、このようなトラブルが起こりやすくなっているのです」(八木さん)
また、似たような金銭トラブルで起こりがちなのが、ゲーム内課金。ここにも令和の子どもたちの危うい部分が見え隠れすると八木さんは言います。
「クリックするだけで欲しいアイテムが手に入るゲーム内課金は、先ほどの電子マネー以上に、お金が減っていく感覚がわかりにくいですよね。気づいたら10万20万円の高額請求が来ていて大騒動になった、といったエピソードも珍しくありません。
クレジットカード決済や電子マネーなど、キャッシュレスが当たり前という子どもたちの金銭感覚が、大きく変化しているのを痛感します」(八木さん)
キャッシュレスの前に現金を。正しい金銭感覚を身につけるコツ
子どもの金銭トラブルは、できるだけ回避したいというのが親心。まずは、積極的に現金を使う経験をさせることで正しい金銭感覚が身につくと八木さん。
「自分の手で現金を支払い、お釣りをもらうといった経験が、お金の重みや減っていく感覚を実感するいちばんの方法だと思います。
そのために必要なのは、お小遣い制度などを利用して、決められた金額内でやりくりする体験。一か月1,000円のお小遣い制度なら、現金で1,000円を渡して、これまで親が買っていたお菓子や、ネットで購入していたまんがを自分の手で現金を渡して購入する。
そうすると何か商品を買うごとに、1000円が減っていくので、ものの価値や金額感、お金の重みを身をもって感じることができます。
ガチャガチャをやりすぎて、その月は必要な文房具も買えなくなった、なんて失敗も大切な学びのひとつになるんですね。
電子マネーを使う前に、お金を使えば減る、欲しいものを買い過ぎたらしばらくは買いたいものを買えない、という実体験を通じて、子どもたちの金銭感覚のベースを作りましょう。
その上で、お金の使い方のルールなどを伝えていくと、子どもたちも理解しやすいと思います」(八木さん)
「金銭トラブル」は“我が家ルール”と“コミュニケーションで”防ぐ
とくに金銭トラブルに直結する「お金の使い方」は、各家庭によって方針が異なるからこそ、ルールを明確にしたうえで、親子のコミュニケーションを重ねていくことも重要です。
「我が家では、『誕生日など特別なとき以外は、誰かに奢ったり奢ってもらったりするのはダメだよ』というルールを親子で決めていましたが、それでもちょっとした事件みたいなことは起こります。
娘が小学生のとき、お友だちに『お小遣いが余ってるなら、私の分も払って』と言われ、その子の分の文房具まで支払ったということがありました。その日の夜、『ルール違反だからダメだと思って迷ったけど、今回だけは買ってあげてしまった』と懺悔するように打ち明けてきてくれて発覚したのですが(苦笑)。
しかしながら、失敗も立派な金融教育のうち。あまり親が口を出しすぎたり、ガミガミ言ってしまったりすると、子どもが自分で考えてお金を使うという経験がなくなってしまうので、任せて見守るという姿勢もときには必要です」(八木さん)
海外と比べるとわたしたち日本人は、『お金の話は隠すもの』という潜在意識があるせいか、あまりオープンに話をしない傾向があります。
子どもと普段からコミュニケーションをとっていないと、中高生くらいになったときに、何にお金を使っているのか把握できないですし、間違った使い方をしていても気づくことができません。
親に内緒で買ったものを友人宅に預けている、なんて話も聞きますから、なんでも話し合える関係性が築けるといいですね」(八木さん)
親の失敗談も“学び”に。家庭内マネー教育で子どもを金銭トラブルから守ろう
さらに、親自身が経験したお金の失敗談なども、立派な金融教育になると八木さん。
「たとえば、1回だけの購入だと思って契約したら、3回購入するまで解約できなかった、というお金にまつわる失敗談も、子どもたちにとっては立派な学びの機会になります。
子どもは同様のお金のトラブルに気をつけることができますし、自分が何かトラブルに見舞われたときも、すぐに話してヘルプを出してくれるでしょう。
ただし、すべてを打ち明ける必要はありません。子どもはうっかり外で話してしまうこともあるので、伝え方を工夫して学びになるように伝えられるといいですね。
貯蓄額や収入なども、具体的な金額を尋ねられたら、世間一般的な平均額を教えるのがいいと思います。
『何か特別なことをしなきゃ、教えなきゃ』と構えなくても、すぐに誰でもマネー教育はできるんですよ。その第一歩がお金に関してたくさん親子で話すこと。お金を使う経験ができるお小遣い制度の導入も、ぜひ検討してみてくださいね」(八木さん)
取材・文/水谷映美 編集/石橋沙織