メニュー閉じる

自分の子育て間違ってる? 迷ったときに思い出したい“3つの当たり前”【コソダテのヒント】

自分の子育て間違ってる? 迷ったときに思い出したい“3つの当たり前”【コソダテのヒント】

元保育園園長で、現在子育てや教育関連の講演会を配信している「花まる子育てカレッジ」ディレクター井坂敦子さんによる連載です。音声配信Voicy『コソダテ・ラジオ』の「子育てが楽しくなる小さなヒント」を読みやすく記事化しております。ぜひお楽しみください。

子どもにとって大切な“3つ”のこと

「自分の子育て、間違っていないかな?」と不安になったことはありませんか? そんな方に覚えておいてほしいお話です。

「土井ホーム」という、虐待を受けたり発達にでこぼこがあったりするお子さん専門のファミリーホームを北九州で運営されている、土井高徳さんと話をする機会がありました(ファミリーホームは、里親などの養育者が家庭環境を失った子どもを複数人預かり、家庭の中で生活習慣の確立や自立を促す事業)。

土井ホームでは、複雑な事情を抱えたお子さんを預かり、我が子のように一緒に暮らしながら、自立する18歳まで育てます。

数人の中学生の男の子と女の子たち

20年以上この仕事に携わっている代表の土井さんに、そうした子どもたちと暮らすときに「何が大切か」を伺ってみました。

すると、「特別なことはありません」と言うのです。さらに、「普通の家庭と同じです。大事なことは3つ。1つ目は、毎日ご飯をつくり、お腹いっぱいにさせてあげること。2つ目は、安心して眠ることができるようにすること。そして3つ目は、元気に学校に行けるようにサポートすることです」とおっしゃいました。

ただ、これまでの家庭環境に問題があるお子さんが多いので、学校に行くことが難しかったり、小学校3、4年生であっても、まだ字がうまく書けなかったり、学習の習慣がついていなかったりすることがあるそう。

その場合には、書けない原因を見極めて、場合によっては学校側に、その子にだけ文字を書かなくても済むテストにしてもらえるよう掛け合ったりするのだと言います。

そうした話の中で繰り返し強調されていたのが、「普通が大事」ということ。毎日当たり前にご飯が出てきて、みんなで食卓を囲んで食べる。そしてお風呂に入る、というような普通の日常。その「普通」が普通にあることが大事なんだ、とお話しされていました。

「当たり前」が安定につながる

親や保護者が温かいご飯を用意して出してくれる、ということ。子どものうちは、当たり前すぎて感謝する気持ちにはならないと思いますが、その「当たり前」がその子の中で「心の安定」につながっているのだそうです。

子どもとの暮らしは、「料理」「洗濯」「お風呂の準備」のほか、名もなき家事が山ほどあって、片付けた先から散らかっていくような生活。思い通りにいかなくてイライラしたり、「ちゃんと片付けてよ!」と爆発しそうな気持ちを抱えた日々を、私も過ごしてきました。

布団の上で気持ち良さそうに寝ている小学生くらいの男の子

でも、たとえイライラしたり、小言を言ったりしていても、お母さんやお父さん、自分を守る大人がそこにいて、毎日必ずご飯が出てきて、洋服も用意してあって、寝るところがあるということ。これらが子どもの自立を支え、「自分は生きていていいんだ」「自分は大事にされているんだ」と自然と受け取って前向きになっていく、というお話でした。

実際に土井ホームでは、虐待を受けて傷ついた子がみんなで笑いながら温かいご飯を食べたり、順番にお風呂に入ったり、自分の寝床がきちんとあって、いつも清潔に保たれていたり、ということを経験すると、顔つきも変わり、勉強への意欲が出てきたり、生活自体にリズムができて、元気にはつらつとしてきたりするそうです。

子どものわがままは「安心のサイン」?

親としては、毎日の家事や子育てがしんどくなるときもありますよね。家事は、仕事と違って見返りもありませんし、家族から感謝されることも少ないもの。「なんだかな」とむなしい気持ちになってしまうこともあるかもしれません。

ですが、子どもは安心しているからこそ、わがままを言ったり甘えたりできているのではないでしょうか。子どもにとってのわがままや聞き分けのなさは、「気持ちが満たされている」ことの表れです。

ソファの上で腕組みをして、お互い別の方向を見てケンカしている様子の母と娘

逆に、「安心感が持てないお子さんは、わがままも言いにくい」と土井さんはおっしゃっていました。

わがままを言われると腹も立ちますが、「安心してくつろいでいるから、そんなことを言ってくるんだな」と流していただければ、イライラのレベルも少し下がるのではないかと思います。

私の話で恐縮ですが、子育ての真っ最中はしんどくて、爆発してストライキを起こしたこともありましたが、子どもが徐々に大きくなってくると、世話をしたくてももうやらせてもらえません。

子どもとの暮らしの中でたくさんの喜怒哀楽を経験しましたが、終わってから振り返ると、懐かしく、よい時間だったなと思います。

子どもと言い合いになったり、家事に追われていたりすると、「自分の子育ては大丈夫かな?」「こんなに家が片付かなくて、私はダメなのかな」などと自分を責めてしまいがちですが、子どもにご飯を食べさせて、体を清潔に保って、寝るところを用意する、そんな普通に思えることを「当たり前」にやれていたら、あなたはもう十分がんばっていることになります。

そんな毎日の小さな「当たり前」を、がんばれるときにはがんばりつつ、しんどいときには上手に手を抜きながらやっていただけたらと思います。

 

話し手/井坂敦子 構成/清野 直

『コソダテのヒント』シリーズ

井坂 敦子(いさか あつこ)さん

中学校高等学校教諭一種免許状(国語) /保育士/食育カウンセラー/表千家師範

慶應義塾大学卒業→ 雑誌『オレンジページ』編集部 →公式サイト『オレンジページnet』編集長 →小学校受験対応型保育園園長 →「花まる子育てカレッジ」にて年間約100本の子育てや教育に関する講演会や対談を企画運営。『入学後の学力がぐんと伸びる 0~6歳の見守り子育て』(KADOKAWA)が9月22日発売。Instagramブログ「わが家の小学校受験顛記」も好評。英国留学中の高校生とボーダーコリー3頭の母

学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっと編集部)

学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっと編集部)

学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっと編集部)

『学研キッズネット』は、1996年にオープンした小・中学生のためのWebメディアです。学研の子ども向け書籍や雑誌の編集ノウハウを活かし、子どもたちが安全に楽しめるサイトとして運営しています。
子どもたちのしあわせのために、家族のしあわせのために、有益な情報やサービスをお届けできるよう、いつも精一杯がんばっています。

PAGETOP