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親が陥りがちな「おとなしい子=いい子」の落とし穴! 絶対やってほしい声かけとは?【コソダテのヒント】

親が陥りがちな「おとなしい子=いい子」の落とし穴! 絶対やってほしい声かけとは?【コソダテのヒント】

元保育園園長で、現在子育てや教育関連の講演会を配信している「花まる子育てカレッジ」ディレクター井坂敦子さんによる連載です。音声配信Voicy『コソダテ・ラジオ』の「子育てが楽しくなる小さなヒント」を読みやすく記事化しております。ぜひお楽しみください。

「おとなしい子だから」と安心していませんか?

「おとなしい子」は、手がかからず問題も起こさないので「いい子」と思われがちですが、思わぬ落とし穴があること、ご存じでしょうか。

幼稚園や保育園、小学校低学年ぐらいの頃は、やんちゃで動き回る子どもよりも、静かに座っていられるようなおとなしい子のほうが「いい子」と褒められることが多いもの。

椅子に座ってお行儀よく食事をしている女の子

食事の場面では、落ち着いて静かに食べている子はそれだけで褒められることもあります。集団で授業を受けるような場面でも、おとなしい子はほかの子に迷惑もかけませんし、真面目に聞いているように見えますから、目立つことも怒られることもありません。

こうしたお子さんの場合、ただ恥ずかしがり屋なだけでその子の中にしっかりした考えがある、という場合は何の問題もありませんが、そうでない場合には注意が必要なことがあるのです。

それは、今目の前で起きている出来事に関心がなく、「座っていればいいや」とただやり過ごすことを覚えてしまっている場合です。

まわりからは「いい子」と言われ問題がないように見えるのですが、本人の中で思いや考えを育むこともなく、意思を伝える訓練もできないまま大人になってしまうのです。

人との会話の中で自分を“発見”する

自分の意見を言う、考えていることを表現するというのは、勇気のいること。発表やプレゼンなど、自分の考えをまとめ、言葉にして相手に伝える、ということは大人でも緊張します。

でも、たとえ緊張して失敗しても、また次がありますし、失敗を繰り返すうちに少しずつ上手になっていくというのが、誰もが通る道だと思います。

会議の席で笑顔で話す男性

けれど、こうした経験をすることのないまま年を経ると、大人になっても話すのが苦手、「プレゼンなんてできません」というふうになってしまいます。

これまでは、先生や大人の言うことを静かに聞いて従っていれば生活していけたかもしれませんが、これからはそうはいきません。

昨今よく言われているように、自分から表現したり創造したりしない仕事というのは、AIやコンピューターが代わりにできることも多く、仕事も見つけにくくなるでしょう。

いろいろな窓口から人がいなくなり、お店も無人化が進んでいる今、人と何気なく話す機会も、どんどん減っています。

学校でもおとなしくやり過ごしていると、「果たして自分はどんな考えをしているのか」と考える機会や、誰かと話をして深い関係をつくったりする機会はますます減っていくことでしょう。

「自分はどんな人間なのか」、「どんなことが好きなのか」、「どんなことがしたいのか」ということを、友だちや周囲の人と伝え合い、その中でまた自分の思いや考えを見つけていくのが人間として大切なことなのではないでしょうか。

質問で子どもの「思い」を引き出して

おとなしい子の場合、小さいうちから親御さんや周りの大人が意識して、その子が話す機会を増やしていってほしいなと思います。

それには質問がおすすめ。たとえば「今日のお昼ごはんのこれとこれ、どっちが好きだった?」や「どういうとこが好きだった?」、「今度の日曜日、どこに遊びに行きたい?」など簡単な質問で大丈夫です。

質問の機会は日常の中にたくさんあるので、子どもの思いややりたいこと、好きなこと、嫌なことを積極的に聞いてみてください。子どもは自分が思っていることを言葉にすることで、初めて気づいたり、考えを巡らせたりするものです。

テーブルに肘をついて、娘の話に耳を傾けている母親

何も聞かなくても、時はそのまま過ぎていってしまいます。子どもが何を考えているのかわからないままに、なんとなく過ごすこともできてしまいます。

夫婦間もそうですが、相手の考えていることは近しい関係でも案外わからないもの。「言葉にしなくても察してほしい」、「口に出すのは水くさい」という人もいると思いますが、察して間違っていることもあるので、そこはあえて聞いたり、口に出してほしいと思います。

我が家も、夫があまり話すほうではなく察してほしいタイプなのですが、「それはこういうこと?」と、確認するようにしています。夫からすると面倒くさかったと思いますが、「私はこう思う」や「これについて、私はこういう考えだけどあなたどう思う?」などと、なるべく言葉にしてきました。

言葉にすると多少責任も生まれますし、「あのとき、私がこう言ったから」「あなたがこう言ったから」と確認もできます。「こう思ったから、こういう行動をしてこうなった」ということが理解できます。

子どもも、そうした夫婦の会話を聞くことで親の物事の対処の仕方がわかります。言葉にしてお互い納得しながら決めていくプロセスを見ることで、子ども自身も相手に対して言葉で説明したり理解し合ったりしながら、ほかの人と繋がっていくんだ、ということが学べるのです。

親子で「話す」時間が「力」を育てる

家庭内の会話はなるべくたくさんあったほうがいいと思います。テレビのニュース番組やドキュメンタリー番組、映画などを家族で観たときに、子どもに「どう思う?」と問いかけるのもいいですね。

社会を学ぶきっかけにもなっていきますし、歴史的な話や時事問題などは、学校の授業で学ぶこともあるでしょう。

ソファに座って並んでテレビを見ている母と娘

「自分ならどうする?」「私はこう考える」「僕ならこういうふうに思う」というように、教科書的な「いい意見」ではなく、間違っていても、考えを表現すること。

物事というのは、反対の面から見るとまた違って見えたり、ルール的に正しくても道徳的にはどうなのかな、ということもたくさんあり、立場が変われば意見も変わります。

そうしたものを含めて、先生に褒められる意見や大人に好まれる意見というのではなく、誰に対しても忖度しないで、自分の思ったことをそのまま口に出せる、ということは、とても大事なことだと思います。

その積み重ねで、「自分はどういうふうに考える人間なのか」ということがはっきりとしていき、「他者も同じように自分の考えを持っている」ということを理解し、お互いの違いを認めたり、共通するときは喜んだりということができるのではないでしょうか。

意識しないと、「話す」機会がないまま、子どもと一緒に過ごす時間が終わってしまいます。「喉が渇いた」「お腹が空いた」といった欲求だけではなく、きちんと「話す」時間を少し意識していただくと、お子さんの考える力や話す力、人と繋がる力にもなっていくと思います。

まずは親御さん自身が、「自分は何が好きで、どう感じて、どう考えているのか」を意識して、言葉にしてみるところから始めてみるのはいかがでしょうか。

 

話し手/井坂敦子 構成/清野 直

『コソダテのヒント』シリーズ

井坂 敦子(いさか あつこ)さん

中学校高等学校教諭一種免許状(国語) /保育士/食育カウンセラー/表千家師範

慶應義塾大学卒業→ 雑誌『オレンジページ』編集部 →公式サイト『オレンジページnet』編集長 →小学校受験対応型保育園園長 →「花まる子育てカレッジ」にて年間約100本の子育てや教育に関する講演会や対談を企画運営。『入学後の学力がぐんと伸びる 0~6歳の見守り子育て』(KADOKAWA)が9月22日発売。Instagramブログ「わが家の小学校受験顛記」も好評。英国留学中の高校生とボーダーコリー3頭の母

学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっと編集部)

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