メニュー閉じる

唯一無二の体験とSDGsを叶える旅がトレンド!年末の家族旅行にもおすすめ、子どもの心を育む「サステナブルな旅」って?

唯一無二の体験とSDGsを叶える旅がトレンド!年末の家族旅行にもおすすめ、子どもの心を育む「サステナブルな旅」って?

これから迎える年末年始や長期休暇に家族で旅行をする人も多いと思いますが、行き先や旅先でのプランはどうやって決めていますか?  じつは最近トレンドになっているのが「サステナブルな旅」。今回は、北海道大学観光学高等研究センター客員教授の小林英俊先生に、家族旅行が子どもにもたらす効果とプランの立て方のコツ、そしてサステナブルな旅について教えてもらいました。

あわせて、小林先生が審査委員長を務める「サステナブルな旅AWARD」(観光庁主催)を受賞したツアーの中から、家族旅行にぴったりのものをピックアップしてご紹介します。これから立てる旅行プランの参考にしてくださいね。

家族旅行は子どもの「自主性」と「応用力」を育む絶好の機会

まずは、家族旅行が子どもにもたらす効果について小林先生に尋ねました。

「いちばんは、子どもの自主性を育むという点でしょう。と言っても、旅行先から旅先での過ごし方まで、すべて親が決めてしまうのではなく、子ども自身に考えさせることが大切です。

最近は、大学生でも自分で旅行の日程を作れない子が多いんですよ。自分の意思で何かを決めることって、慣れていないと難しいですよね。その訓練をする機会として、家族旅行は最適なんです。

日程と行き先の大枠だけは、親が決めてOK。そこで何をするか、どこへ行くかは、ぜひお子さんの希望を聞いて、やりたいことを優先してあげてください。

行くエリアが決まっていれば、その土地のことを調べられます。『どんな場所に行きたい?』『何に興味がある?』『食べてみたいものは?』といったように、親子でたくさん話し合いながら旅行先での過ごし方を決めることで、子どもの自主性はしっかりと育ちます」(小林先生)

もうひとつの効果は、「子ども自身の応用力がつくこと」だと小林先生。

「旅行先では、何かと予測できないことが多いものですよね。急な悪天候に見舞われることもあるでしょうし、せっかく足を運んだのに満員で入れないとか、道に迷ってなかなかたどり着かないなんてこともあるかもしれません。そんな『不安な状態』を親子で一緒に味わうことによって、臨機応変に対応する、つまり応用力が身につきます。これも、家族で旅行する大きな効果です」(小林先生)

大切な観光資源を未来に残そう!「サステナブルな旅」3選

旅先での過ごし方を子どもと一緒に話し合いながら決めることが大切だと小林先生に教えてもらいました。その際、ぜひ選択肢のひとつに入れてほしいのが、「サステナブルな旅」という視点。

「サステナブルな旅」とは、単に旅行を楽しむだけではなく、観光により旅行先の地域資源を持続的に保ちながら、そこに暮らす人々の生活も豊かになるように考えられた旅のことを言います。旅行先の文化や環境の保全を考え、現在そして将来において持続可能な社会をつくることに繋がるので、SDGsという観点でもとても重要視されているのです。

ここからは、先日インテックス大阪で授賞式が開催された「サステナブルな旅AWARD」を受賞したツアーの中から、学研キッズネットの読者にぴったりのものをピックアップしてご紹介します。気になったものがあれば、ぜひ今後の家族旅行の候補に加えてみてくださいね。

漁村集落の小さなお宿交流と漁民が守りつなぐ海山体験(岩手県釜石市)

廃園した元保育所の園舎をリノベーションし、地域みんなで見守る地域型民泊としてスタートした「御箱崎の宿」。津波によって流されてしまった民宿の女将を中心に、町内住民が協力し、地域みんなで旅行者を迎え入れます。新鮮な海の幸と地元の郷土料理で地産地消をかなえ、サステナブルかつ質の高いおもてなしと、地元の人たちとのあたたかな交流を実現。一泊二日の観光体験コンテンツには陸域の「千畳敷トレッキング」と、海域の「漁業見学体験」が用意されており、釜石の魅力がぎゅっと詰まっています。

「こちらのツアーは、家族連れがすごく多いです。というのも、少人数での貸し切りができるから。1棟まるまる貸し切りです。ほかのお客さんに気兼ねなく過ごせる点が、ファミリー層に人気ですね。子どもが大きな声で騒いでも、なんの問題もない。元々は保育園だったことも、家族連れが惹かれる理由のひとつかもしれません。

地域の人みんなが旅行者に積極的に接してくれる点も好評です。『今日こんな魚が獲れたよ!』と漁師さんが獲れたての魚を持って来てくれたり……地域の歴史や、大震災からの歩みなど生の話が聞ける点も、子どもたちにとって貴重な体験になるのではないでしょうか」(小林先生)

御箱崎の宿

気ままなバス旅「レールマウンテンバイク Gattan Go!!」プラン(岐阜県高山市)

2006年11月末に廃線となった旧神岡鉄道の線路の上をマウンテンバイクで走る新感覚の乗り物「レールマウンテンバイク」を体験できるツアー。奥飛騨温泉口駅から神岡鉱山前駅まで、往復約6㎞の道のりをゆったりと楽しめる「まちなかコース」と、山あい谷あいの渓谷沿い往復約7㎞を行くスリル満点な「渓谷コース」の2種類あり、レールの継ぎ目と振動を感じながら奥飛騨の景観が満喫できます。

「自転車と廃線後の鉄路を組み合わせたユニークなアクティビティは、お子さんにも大人気です。山間部の美しい景色が望めるのはもちろんですが、希望に応じてコースや時間を選べる点も家族連れにうれしいポイントではないでしょうか。

また、この地に行くには自家用車がないと足の便が悪い点が少々難点でしたが、JR高山駅の高山バスセンターから飛騨市神岡町の最寄りバス停間の路線バス、バス停からレールマウンテンバイク乗り場間のタクシー、そしてレールマウンテンバイク利用券がすべてセットになっているので、自家用車で出かけなくても利用できます。同時に、地元のバス路線維持などにも貢献しており、まさにサステナブルな旅だと言えるでしょう」(小林先生)

レールマウンテンバイクGattan Go!!

特別な許可を得て草原体験!噴煙を上げる阿蘇中岳火口と「千年の草原」E-MTBライド(熊本県阿蘇市)

阿蘇カルデラに広がる日本一の広さを誇る草原は、千年以上の年月をかけて地元の方々が守り抜いてきたことから「千年の草原」と呼ばれており、普段は立ち入ることができません。そんな特別な場所に特別に足を踏み入れ、クリーンなE-MTB(電動自転車)でサイクリングができるプライスレスなツアー。ツアー参加代金の一部は、「千年の草原」の保全に欠かせない野焼き等の活動資金として、牧野組合等に還元。つまり、参加することで草原の保全に役立ちます。旅行者、草原、地域の三方良しの循環につながる、非常にサステナブルな旅です。

「このツアーは、今回の『サステナブルな旅AWARD』の大賞を受賞しました。身長150㎝以上が参加条件のため、少し大きなお子さんがいるご家庭に限られてしまいますが、広大な阿蘇の草原を電動自転車で駆け抜ける様は、本当に爽快です。

また、電動自転車に乗る以外にも、バーベキューを楽しんだり、草原に寝転んでのんびり過ごしたり。旅行者は人数制限されているので、時間の許す限りゆっくりと阿蘇の自然を体感できます。このツアーに参加することで、草原の維持をサポートできる「草原の守り人」になれる点も、大きな魅力ではないでしょうか」(小林先生)

噴煙を上げる阿蘇中岳火口と「千年の草原」E-MTBライド

「サステナブルな旅AWARD」

大人も子どもも一緒になって、旅先での不思議を楽しもう

「子どもと一緒に旅先をまわっていると、いろいろな新しい出会いがあるでしょう。きっと、大人でも知らないことばかりです。子どもに何か質問されて、『困ったな、知らないとは言えないし……』などと戸惑ってしまうかもしれませんが、ぜひ一緒に不思議がってもらいたいですね。

その土地の成り立ちや歴史、文化を知って、体験して、親子で話し合うことで、いつまでも心に残る素敵な家族旅行になりますよ」(小林先生)

取材・文/水谷映美

小林 英俊(こばやし ひでとし)さん

小林 英俊(こばやし ひでとし)さん

小林 英俊(こばやし ひでとし)さん

北海道大学 観光学高等研究センター 客員教授。主な研究テーマは、観光による地域の活性化、観光と環境、観光と健康との関わり。世界のエコツーリズムサイト、世界遺産を数多く調査している。「エコツーリズム賞」(ANTOR:在日外国政府観光局代表協議会)、「フランス観光功労章金メダル」(フランス政府)受賞。著書に『エコツーリズム教本』(平凡社、訳著)、『自然保護とサステイナブル・ツーリズム』(平凡社、監訳書)。

PAGETOP