デジタルとアナログどちらが正解? 筆記具の違いとそれぞれのメリット【コソダテのヒント】
元保育園園長で、現在子育てや教育関連の講演会を配信している「花まる子育てカレッジ」ディレクター井坂敦子さんによる連載です。音声配信Voicy『コソダテ・ラジオ』の「子育てが楽しくなる小さなヒント」を読みやすく記事化しております。ぜひお楽しみください。
※今回の元になった配信は、9月22日発売の「入学後の学力がぐんと伸びる 0~6歳の見守り子育て」(井坂敦子・著)の内容を抜粋してお届けしています。
タブレットと並行してアナログの筆記具にも触れて
「GIGAスクール構想」により、小中学校では1人1台タブレット(学習用端末)が配られ、授業や宿題で使うようになってきています。
タブレットで漢字や計算の練習をするソフトやサービスも増えてきているので、小学校に入る前から使っているお子さんもたくさんいますよね。
お父さんやお母さん、お兄ちゃんやお姉ちゃんが使っていたりすると、興味を持ってやりたくなるお子さんもいるでしょう。
そこで、お伝えしたいポイントがあります。
それは、同じくらい鉛筆や色鉛筆、クレヨン、絵の具、フェルトペン、筆ペンなどの昔からあるアナログの筆記具にも触れさせてあげてほしい、ということです。
タブレットと筆記具、それぞれのメリットとは?
なぜかと言うと、そうした筆記具はそれぞれに書き心地が違います。紙への染み込み方やにじみ方、あとは匂いなども違うでしょう。私も幼いときにクレヨンで描いたあとの手についた匂いや、教室で使った絵の具や墨汁の炭の匂いを強く覚えています。
そうした体験が五感に記憶されるのは、とても大切なことだと思うのです。
タブレットでも、お絵描きソフトなどを使えば水彩絵の具で描いたようなにじみや、クレヨンのようなタッチが表現できます。多彩な表現をタブレットで学ぶことができますし、筆記具や画材がなくてもいろいろな表現ができるところは、タブレットの優れたところ。
一方で、「感触」の部分はアナログで培ってほしいと思います。お子さんにとって、「書く・描く」行為はとても大事なもの。たとえば筆で文字を書く際、力を入れたら太い線になる、炭が足りなくなったらかすれてしまう、といったことを実際の道具で経験してみてほしいのです。
クレヨンなど、優しい力加減で塗ったら薄くつくけれど、強く押したら濃くなる、というように、自分の行動と結果を確かめながら子どもは学んでいきます。
タブレットでも同じようなことができるかもしれませんが、そこはぜひ、お子さん自身の手で感じていただけたらと思います。
物理や化学にもつながる「学びの土台」を育てよう!
ほかにも、色を混ぜるとどんな色になるか、あるいは色を薄くするにはどうしたらいいか、字や絵がかすれた感じが楽しいから紙もザラザラしたものを使ってみよう、などなど、実際の道具を使うことで得られる発想や楽しさがたくさんあります。
こうしたことは、のちのち物理の摩擦の話や、化学の液体を混ぜる話などにもつながっていきますよね。たとえば、クレヨンは油性ですから、水性の絵の具を上から塗ってもはじく、といった水と油の関係なども、幼稚園・保育園のお子さんでも遊びとして知ることができます。
幼いお子さんは、そうした「びっくりした!」「楽しい!」「面白い!」というような感覚や感触、その記憶を集めていろいろな学びの土台をつくっている時期です。ぜひ、いろいろなものに触れ、たくさんの経験をして、土台を大きくしていただけたら嬉しいです。
そうした経験をしながら、片方ではタブレットにも触れていけると、両方の良いところもわかりますし、表現や学びも深まるように思います。
話し手/井坂敦子 構成/清野 直
井坂 敦子(いさか あつこ)さん
中学校高等学校教諭一種免許状(国語) /保育士/食育カウンセラー/表千家師範
慶應義塾大学卒業→ 雑誌『オレンジページ』編集部 →公式サイト『オレンジページnet』編集長 →小学校受験対応型保育園園長 →「花まる子育てカレッジ」にて年間約100本の子育てや教育に関する講演会や対談を企画運営。『入学後の学力がぐんと伸びる 0~6歳の見守り子育て』(KADOKAWA)が9月22日発売。Instagramやブログ「わが家の小学校受験顛記」も好評。英国留学中の高校生とボーダーコリー3頭の母