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学校歯科検診「斜線・CO」の記号の意味は?子どものむし歯の原因と仕組み【専門医が解説】

学校歯科検診「斜線・CO」の記号の意味は?子どものむし歯の原因と仕組み【専門医が解説】

むし歯や歯周病といったお口のトラブルから子どもの歯を守るためには、保護者のサポートが必要不可欠です。そもそもなぜ、むし歯はできるのでしょうか? 

今回は予防歯科の第一人者である、大阪大学 名誉教授・予防歯科学講座 特任教授の天野敦雄先生に、むし歯ができる仕組みや、学校歯科検診でよく聞く暗号の意味、むし歯を放置しておくと起こるリスクなどについてお話を伺いました。

むし歯の原因は、むし歯菌による“酸性のおしっこ”

むし歯はなぜできるの?と聞かれると、「むし歯菌が、槍を使って歯に穴を開けている」。このようなイメージが浮かぶ人も多いのではないでしょうか? ですが、実際にはそうではありません。正しくは、むし歯菌が作る酸が歯を溶かすから、むし歯ができるのです。

長らくむし歯は、口の中に存在する「ミュータンスレンサ球菌」によるものとされてきましたが、最近では「ラクトバチルス(乳酸菌:乳酸を出す菌)」や「ビフィドバクテリウム(ビフィズス菌)」なども原因ということがわかってきました。

これらの菌は、食べ物に含まれる発酵性糖質(ショ糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、調理したデンプンなど)を食べて酸性のおしっこをします。この酸性のおしっこが、むし歯の大きな原因になっているんですね。

むし歯のイメージ

しかし、それだけでむし歯になるわけではありません。むし歯は歯を溶かす酸性の液と、溶けた歯を元通りにする唾液のバランスで決まります。

歯はリン酸カルシウムでできています。「歯が溶ける=歯のカルシウムが減っていく」わけですが、唾液中にもカルシウムがあるので、歯のカルシウムが減ってもまた元に戻してくれているんですね。口の中が弱い酸性(pH5.5より上)、だと唾液がむし歯を防いでくれます。

ところが、口の中が強い酸性(pH5.5以下)になると、むし歯菌が作った酸性の液の力が、唾液の修復力を上回り、歯が溶けて穴が開いてしまうのです。

この流れを整理すると……

 

発酵性糖質を含むご飯を食べる

唾液に溶けた発酵性糖質がむし歯菌のエサになる

むし歯菌が酸を作り出し、口の中が酸性に傾く

歯垢に酸が溜まり、強い酸性となって歯のリン酸カルシウムがたくさん溶ける

穴が空いて虫が食べたような状態(むし歯)になる

 

これがむし歯の仕組みです。

意外とみなさんが知らないのが、ビフィズス菌は腸の中では善玉菌だけれど、口内では酸を出す悪玉菌だということ。ですから、からだによいとされるヨーグルトもむし歯の原因になります。

ただし、ヨーグルトなどの善玉菌はお口には住み着かないので、普通に歯磨きをしていればむし歯になる心配はありません。

また、ご飯や麺類もむし歯の原因に。むし歯を作らないのは、タンパク質と野菜(食物繊維)のみと覚えておいてくださいね。

昔に比べて減っている!?現代の子どものむし歯の現状

厚生労働省が発表している令和4年の「歯科疾患実態調査結果の概要」によると、1人あたりの乳歯のむし歯の本数は、平成5年度では2歳の子どもが3本以上、4歳では4本以上のむし歯がありましたが、令和4年では1歳から4歳までは1本未満で、ほぼむし歯がない、という結果に。

ひとりあたりのむし歯の本数だけでなく、むし歯のある子どもの割合も年々減少傾向にあります。

むし歯を持つ者の割合の年次推移

永久歯でむし歯がある子どもの調査結果を見ると、1975年に平均5.61本だったのが2020年では平均0.68本。

子どものむし歯の本数が減っている理由は、フッ化物入りの歯磨き粉を使う人が増えたことと、予防的に歯医者へ通う子どもが増えたことが影響していると思われます。

学校の歯科検診でよく聞く「暗号」その意味は?

日本では「学校保健法」に基づき、小学校から高校まで、6月30日までに学校で歯科検診を受けることが義務付けられています。

学校で検査するのは、歯、歯肉、歯列・咬合の状態ですが、検査中に「左からCO、C1、C2……」と、アルファベットを読み上げられ、「どういう意味なんだろう」と疑問に思った人も多いのでは?

歯のしくみ

歯科検診の記号の意味は以下の通りです。

 

1~8:永久歯が前から何番目の歯かを表す(8は親知らず)
A~E:乳歯が前から何番目の歯かを表す
/(斜線):異常なし
○:処置歯(詰め物をした治療済みの歯)
△:喪失歯(なんらかの理由でなくなってしまった永久歯)
×:要注意乳歯
CO:要観察歯(初期のむし歯が疑われる歯)
むし歯を表す記号はC0が要観察、C1は軽度のむし歯、C2、C3と数字が上がるほどに、むし歯が進行している状態を表します。
C:むし歯
歯科検診記号の解説_学研キッズネット

小児歯科での定期検診も受けよう

学校での歯科検診はライトも暗くレントゲンも行えないため、精度の高い検査を行うことができません。そのため、学校検診で問題がなくても、歯医者での定期検診を受けることをおすすめしています。

じつは、痛いだけがむし歯ではありません。初期のむし歯は痛みが出ませんし、そのままにしておくと悪化するのはもちろん、やがて歯並びなどの口の中や、さらには顔全体にまで影響がでることも。

昭和9年に作成された埼玉県歯科医師会によるむし歯予防デーのポスターでは、「歯が悪いと全身に故障を起こします」というキャッチコピーが書かれていました。

むし歯菌によって、心臓病や肺病、腎臓病など、全身の病気のリスクが高まることが戦前には分かっていたんですね。

トラブルを未然に防ぐためにも、毎日の正しいケアはもちろん、定期的に歯医者さんに行きましょう。

 

取材・文/末永陽子 編集/石橋沙織

天野 敦雄(あまの あつお)さん

天野 敦雄(あまの あつお)さん

天野 敦雄(あまの あつお)さん

大阪大学歯学部卒業。ニューヨーク州立大学バッファロー校歯学部博士研究員、大阪大学歯学部附属病院障害者歯科治療部講師などを経て、現在は大阪大学 名誉教授・予防歯科学講座 特任教授。2021年日本口腔衛生学会理事長。代表的著作は『長生きしたい人は歯周病を治しなさい』(文春新書)など。

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