Case 31 「書くおしゃべり」と文章力/わが家のSNSトラブル ~ユカの事件簿~
LINEは会話のように相手とやりとりすることが大切。文として整っていたり、伝えたい情報がすべて入っていることは二の次のコミュニケーションです。ではLINEで長い内容を伝えるときにはどうしているのでしょうか?
LINEの長い文章は、追記、追記で
前回は、娘のユカのLINEの連絡が「帰るね」だけで、わたしが聞かないとどこなのかわからないエピソードでした。
LINEは会話のように相手とやりとりすることが大切。文として整っていたり、伝えたい情報がすべて入っていることは二の次のコミュニケーションです。
そこでは長い文章はあまり使われません。LINEの字数制限はなんと1万字なのに。Twitterのような字数制限がなくても、ひとりでずっとしゃべるような長文はLINEでは避けられているのでしょう。
ではLINEで長い内容を伝えるときにはどうしているのでしょうか?
ユカはそういう場合、時間をかけて内容をまとめて送るのではなく、思いついたことから断片を書いて送る、をくりかえします。いったん要点をまとめてからというより、メモに書き出す作業に近いようにわたしには思えます。
しかし、文章のコミュニケーションはLINEだけではありません。むしろ主語述語や5W1Hがそろった文章が主流です。
仕事のメールにしても、1回の送信で必要なことを伝えきらないといけません。伝え忘れを追加で何回も送って、どこで終わるのかわからない連絡では役に立ちませんから、LINE風の文章作成技術では、社会に出たらあっという間に行き詰まってしまいます。
子どもたちは、一度に送る文章の中に内容をきっちりまとめる力を、意識して身につけていく必要があるでしょう。
むかし先生に聞かれた「これ、がなんですか?」の意味
話は変わりますが、小中学生のころに、学校で提出するプリントなどを持って行って「先生、これ」と出して、先生に
「これ、がなんですか? ちゃんとした言葉で説明してください」
と言い返されたことが、だれにでもあるのではないでしょうか。
家族や友だちとの間ならお互いをわかっているので、言葉が足りなくても通じますし、わからないことは質問してくれます。しかしもっと大きな集団に入ったとき、「これ」という単語から相手に事情を察してもらおうという態度は、単なる甘えになってしまいます。また相手が、わからない点をわざわざ質問してくれるほど親切でない場合、用件は伝わらない(まちがわれた)ままで、結局は自分の不利益になるのです。
親密で甘えのきく、いわば身内のような人間関係から社会に出ていく途中で、子どもは第三者を意識して行動することを学んでいかなければなりません。相手にわからせるように伝えるというのは、相手を思いやると同時に、自分を守ることなのです。
先生はときどき不親切な他者になってみせることで、子どもたちの世界を広げようとしていたのでしょう。
察しの悪い親になってみよう
しゃべるように書いて育ったSNS世代の子どもたちは、仲間うちの文章と第三者に伝える文章の使いわけや、一度で内容を完結させることが、親世代より苦手になるかもしれません。外に向かった文章の書きかたを子どもに伝えることも、家庭の役割として大切になってくるように思います。
子どもに対して、SNSの文章では伝わらないと教える不親切な他者になってあげるのは、子ども自身がそれに気づくために家庭でできるかんたんな一歩です。
とりあえずはわたしも、ユカの「帰るね」だけのLINEに、
「それだけで伝わりません。どこからなにで帰るかきちんと書いてください」
と返すことから始めてみます。
わたしも毎回はやっていられないので、すぐに「どこ?」だけに戻りそうな気はしますが、ママはときどきうるさい人になる、と思われて、ユカがLINEの内容をまとめることを意識したら、大成功としましょう。
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