Case 36 プールでスマホを持たないで/わが家のSNSトラブル ~ユカの事件簿~
インスタ映え命のナイトプールだけではなかった……。今年のプールはスマホだらけです!
普通のプールもスマホだらけ
今年の夏は、ナイトプールが話題になりました。
ナイトプールとは、夜に営業する大人向けのプールです。ホテルのプールなどが会場で、ライトアップされたプールサイドでお酒や音楽も楽しめます。
夜なので日焼けしないなど人気の理由はいろいろありますが、なんといっても「インスタ映えする(写真をInstagramにアップしたときに見栄えがよい)」が一番でしょう。イルミネーション・プール・水着というキラキラの画像を撮ることが大事なので、本気で泳ぐ人がディスられて話題になったりしました。
娘のユカ(大学生)はナイトプールには興味がなく、日中に友だちと大規模プールへ行ってきました。流れるプールや波のプールを満喫したユカですが、帰宅後、あきれたようすで言いました。
「みんなスマホ片手にプールに入ってて、びっくりしたよ。波のプールでは監視員さんが『危ないからスマホを持って入らないでください』って叫んでるのに、みんなスマホ持ったまま一番前の波の大きなところまで行って撮ってた」
どうやらナイトプールにかぎらず、今年はスマホ片手にプールというスタイルがあたりまえになっているようです。防水ケースが売店にあるのにむき出しのスマホの人も多く、他人事ながら毎日どのくらいのスマホが水没しているのだろうと気になります。
「楽しむ」イコール「楽しむ自分をアップする」
SNSの流行で、「イベントに行ったから画像を投稿する」から「SNS映えする画像が撮れるからイベントに行く」という逆転が起こっているとよく言われます。
同時に「楽しむ」ことの意味も、変容しているようです。
イベントや行動自体を楽しむだけでは不十分。その楽しむ姿を公開して、イイネをもらうまでを含めてようやく「楽しむ」が完結するように思えます。
ナイトプールのおしゃれな雰囲気は、自分がそこにいるだけではめいっぱい楽しんだとは言えなくて、SNSに画像をアップしてナンボ。波の出るプールにスマホを持ちこむ人の片手は常に水の上ですから、波や水を楽しむのは二の次、波のプールにいる画像こそ一番の目的なのでしょう。
自分の楽しさに加え、イイネをもらう楽しさが増えていると反論されそうですが、「他人から見る楽しそうな自分」を意識する分、せっかくのイベントに夢中になれず、うすっぺらな経験になりかねないとわたしには思えます。
また、楽しむ自分を客観的に見ているつもりでも、意識するのはSNSで、いま目のまえにいる人に対してではありません。スマホを落として破片が散れば、まわりの人がけがするかもしれないと考えて行動しているのでしょうか? ……あやしいものです。
さいわい、保護者とプールに来ている子どもたちは、なにも持たずにプールを楽しんでいたそうです。親の目の届くうちはスマホなど持ちこまず、子どもたちにプールそのものを楽しんでほしいとわたしは心から願います。
イイネはなくても思い出はいっぱい
さて、そんなスマホだらけのプールで、ユカ自身は「盗難も水没もいやだから、スマホは最初にロッカーに入れちゃった」とのこと。ユカのスマホは、自分のお金で買った大事なスマホ。水に弱いiPhoneをプールサイドに持ちこんで壊す心配の方がまさりました。
ユカのSNSには「プールに行ったけどこれしか撮ってない」と、プール入り口の画像がアップされました。自分も友だちも写っていない、灰色のコンクリートばかりの地味な写真です。
イイネは少ないでしょうが、この日のユカはプールを文字通り全身で楽しんできただろうと、わたしは喜んでいます。
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